第3話 メンヘラ聖剣との馴れ初め
自分の番が回ってきた時はなぜか不思議と抜ける予感がしたんだよな、そういや。
「ピピンときましたもの! 赤い色で結ばれた将来の旦那様がこの人だって、あの時からですね。相思相愛なのは♡」
「おい……勝手に人様の回想にナレーションを入れてんじゃねぇよ」
「もう恥ずかしがっちゃって、そんなところも大好きですよ♡」
「いやいやいや、つうか出会って間もない頃はおまえ相当不愛想で冷たかったぞ。僕が何か訊いても『はい』か『いいえ』しか、言わなかっただろ? 仲間になってくれたアイツらには愛想を振りまくどころか、最後まで仲良くなろうともしなかったしな」
「アレは乙女の照れ隠しです。察してください。あのゴミムシ三匹は私たちのハネムーンを邪魔したのだからごく自然のことでは? どうしてもと旦那様が言うから同行を許可してだけですし、私としては武力行使しなかっただけ感謝して欲しいぐらいです」
「おまえなぁ~、アイツらがいたから魔王を倒せたんだぞ!」
聖剣を引き抜き名実共に勇者となったところで、この時のツヴァルは剣の振り方すらもロクに知らないド素人だった。
伝説のように聖剣を手にしたからといって、残念なことにいきなり強くなるわけではない。
そんなザコ勇者が一人旅に出たところで、道中の魔物に敗北し棺桶になるのがオチだ。
なら、この聖剣の何がスゴイのかという話になるのだが、それは所持者に不老不死の加護を授けるというものだった。つまり、どんだけザコだろうと言葉の通り死に物狂いで戦い続ければ、そのうち強くなるでしょを地で行くスタンス。
聖剣エタニティ――その名の通り未来永劫、死んで覚えるソウルライフな体験を強要される。
そのせいで、そのおかげで魔王を倒すことができたのだが、今現在はその加護に悩まされ続けている。クリーン・オフ制度なんてものもあるわけなく、どうあがいてもこの加護から逃げられない。
タチの悪いことにこの加護は不老不死と言っておきながら、正確にはエタニティが指定した保存地点まで戻るというものだ。簡単に言うと死んだらセーブポイントからやり直せるよ。もちろん能力を引き継いだ状態で……というやつだ。周りの時間は戻らないため
これが今朝方、鳥になったはずのツヴァルが、だだっ広い謁見の間の玉座に座していた理由である。
また蛇足ではあるが、ツヴァルよりも列の後ろに並んでいた勇者候補生は、無くなった聖剣の代わりに石台に触れて祈願していた。
とはいえ、独りぼっちの旅はさすがに前途多難すぎたので、王国にあるギルドで旅の仲間を募った。
そこでツヴァルはパーティの要となる盾役として重戦士を、仲間を癒す後衛支援として治癒師、敵を殲滅する後衛火力として魔術師を仲間にした。
勇者適性検査に落ちた人たちは冒険者という職業を選ぶことが多かった。憧れの勇者になって魔王を倒すという夢が潰えたとして、冒険するという夢を捨て去ることができなかったからだ。
そんな夢に生きる命知らずな冒険者が集う場所がギルド。
仲間との旅は本当に楽しかった。これが魔王を討伐するため一時的に結成したパーティとは思えないほど、有意義で今でもいい思い出……が?
魔王城に向かうつれて仲間がドンドン離脱したような気があるのだが……なぜそうなったのか思い出せない。靄がかかったかのように、その記憶だけがぼやけて何も思い出せない。
この違和感のある感じは、魔王四天王と名乗っていたヤツがやってきた呪縛に似ている。
思考を停止させることで、行動不能にさせる非常に厄介な攻撃だった。あの時は、元から何も考えずに戦っていた
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