三姉妹の決意
「まったく、ここまで時代錯誤だとは……」
鷹が額を抑える。
「アップデートされていないね~」
茄子は失笑する。
「……父上、ここまで育ててくださったことには感謝しております」
「む……」
「ですが、各々の結婚相手については自分たちがこの人だという方を選びたいと考えております……」
「し、しかし……」
「しかしもかかしもありません……!」
「う、うむ……」
富士の圧に押され、父が頷く。鷹と茄子が苦笑する。
「やれやれ……」
「びっくりしたよ~」
「ちょっと待て……!」
「?」
「お前たち三姉妹はこの疾風家だけでなく、慈英賀の里の皆の期待も一身に背負っているのだ。皆をがっかりさせるようなことはやめてくれ……」
「……どういうこと?」
「結婚云々は別として、立派な男性を里に連れてきてくれ。一度だけでも良い。そうすれば、口うるさい長老連中なども安心する……」
鷹の問いに父が答える。茄子が鼻の頭をこする。
「立派な男性か~」
「私たちのいわゆる……”好み”でよろしいのですか?」
富士が尋ねる。
「それは任せる。ただ……」
「ただ?」
「なまっちょろい男はダメだぞ! それだけは認められん!」
「……分かりました。行きましょう、二人とも」
富士に続いて、鷹と茄子が部屋を出ていく。三人は屋敷の庭に向かう。
「富士姉、分かりましたとか言っちゃってたけれど、良いの?」
「三人揃って、里から出てしまっても良いんじゃない?」
「なーちゃん、滅多なことを言うものではないわ」
富士が茄子をたしなめる。
「だって~」
「私はこの里になんだかんだで愛着を感じているわ……都会で暮らそうという欲もない……二人はどう?」
「まあ、わたしたちのこの脚だったなら、名古屋も京都も大阪もまさに一足飛びだからね~買い物とかには不自由しないし」
鷹が自らの両脚をポンポンと叩く。
「仕事とかも最近は働き方改革だから、こんな山奥でもリモートで参加することとかが出来るか……」
茄子が自らの顎をさすりながら頷く。富士が笑う。
「……考えはまとまったわね。この里に移住してもらう男性を探すのよ」
「どうやって探すのさ? 『慈英賀の里に疾風三姉妹あり』なんてローカルなニュースバリューはこのご時世すぐに埋もれちゃうよ?」
茄子が両手を広げる。鷹が呟く。
「お父さんとちょっとだけ気が合ったわ。”なまっちょろい男はダメ”って……それについてはわたしもそう思う……」
「大変そうだね……やっぱり里を抜けた方が……」
「……これがあるわ」
富士が転がっていた茶色いバスケットボールを拾って、地面に二、三度弾ませる。
「!」
「!!」
鷹と茄子の顔が変わる。富士が笑みを浮かべながら続ける。
「普通とはちょっと違う、私たちを負かすことの出来るような男性チームならばお相手にはふさわしい可能性があるのでは……二人ともいかが?」
「……悪くはないわね」
「鷹姉ちゃん、マジで……はあ、まあいいや、とりあえずワタシもついていくとするよ……」
意外に前のめりな鷹に驚きながら、茄子も同意する。富士は笑みを浮かべながら静かに呟く。
「疾風三姉妹……ストリートの3on3バスケに殴り込みをかけるわよ……!」
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