星月夜のセレナーデ

雪月すず猫

第1話

凛:大人になる前に女の子が一度、夢を見る、星月夜ほしづきよの王子様。

凛:

凛:お父さんも、お母さんも、すっかり眠っていて、

凛:なんとなく、星の明かりが、素敵な星月夜ほしづきよに誘われるように、外に出る。

凛:

凛:すると、星の流星群に私はいた。流れ星は、ダイヤモンドや、綺麗な水晶になって、

凛:きらめきながら、ばらばらと落ちていく。

凛:(王子)「一つだけ、君にとってとびきりの、星屑をどうぞ」

凛:見たこともない、綺麗な青年が私に語りかけてきた。私の顔は真っ赤な薔薇色になってしまう。

凛:青年はくすりと笑って、星屑を一つ、拾い上げて私に差し出す。

凛:それは綺麗なキラキラに、光る一粒のダイヤモンド…。

凛:私はさし出されたダイヤモンドをそっと手に取る。

凛:すると、キラキラと私を、綺麗な星たちが、光って包みこみ、軽やかな羽毛の白いドレスに変わり、

凛:綺麗な星が、ふんだんに、あしらわれたティアラと、キラキラの星屑の靴になった。

凛:(王子)「はくちょう座のドレスと、天の川のティアラと、星屑の靴だね、素敵だよ、君にぴったりだ」

凛:シャラシャラとどこかで、繊細で素敵な鈴のような音と、澄んだオルゴールの音色が鳴る。

凛:―――これは、星月夜ほしづきよのセレナーデ…。

凛:(王子)「さぁ、お姫様、今宵、一緒に、踊りましょう」

凛:青年はゆっくり、私の手をとって、優しく、星の川の中をリードして踊る。

凛:高揚こうように笑みがこぼれる。

凛:どこを、見ても星明かりの中、美しい心洗われる光景に、生涯、この夢を忘れないだろうと思った。

凛:

凛:―――流れ星のように、一瞬で、恋に落ちた。

凛:

凛:

凛:70年後、私は結婚もして、子供も産んで、もうすぐ、逝く。

凛:「じい様がくれた、あの指輪を、ちょうだい」

凛:死出しでの旅のおともに、夫のくれた、結婚指輪を持ってきてと子供に頼む。

凛:「…!あ、この音は…」

凛:子供が、持ってきた指輪を、まじまじと見ようとして、シャラシャラと鈴とオルゴールの、

凛:あの、星月ほしづきよのセレナーデが、耳に届く。

凛:―――きっと、私にしか聴こえてないけれど…。

凛:

凛:「じっさまが、あの、王子様でしたか」

凛:涙を流しながら私は生に幕を降ろした。

凛:

凛:星月夜ほしづきよのセレナーデ

凛:…あなただけのとびっきりの運命の相手に出会える、不思議な星月夜の、奇跡。

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