第5話 約束
今日は実家に帰る日だ。
休暇も終わり、明日からいつもの毎日に戻る。
母と祖母と朝食をとっている時、祖母に
「この辺に12歳のハルキ君って男の子が住んでる?」
「え?ハルキ君、、、」
母と祖母が驚いたような顔をした。
「近くにハル君って子がいたけど。子供の頃、ナツと
仲良く遊んでいたよ。」と母が言った。
「子供の頃?今、12歳で釣りが好きな男の子だよ。」
と言うと祖母が奥の部屋に行き一枚の写真を持ってきた。
「この子がハル君だよ。」
「そう、この男の子。」
その写真には間違いなくハル君が映っている。
そして隣には子供の私がいる。どういうこと?
頭と心がついてこない。震える私に祖母が語った。
12年前の夏、ハル君は川で溺れて亡くなり仲良かった私が
ショックを受けると思い母も祖母も黙っていたらしい。
ちょうど今日は命日らしい。
「私、ハル君の家に行きたい。」
祖母にお願いし、ハル君の家を教えてもらった。
近所の花屋でお供え用の花束を作ってもらい、ハル君の
家に向かった。
家の前につき、ドアフォンを鳴らすと40代後半くらいの
女性が出てきた。ハル君の母親のようだ。
近所の祖母の名前を言い、孫のナツだと説明した。
「まぁ、ナッちゃんね。よく来てくれたわね。」
と温かく迎えてくれた。
中へ入っていくと仏壇にハル君の写真が飾られていた。
昨日まで会っていた少年だ。
夏休み、一緒に遊んでいたのに忘れていた自分が信じられない。
ハル君とは同学年で、亡くなった時は小学6年だった。
その頃、中学受験をひかえていた私は夏休みは祖母の家に訪れなかった。
「ナッちゃん。ありがとう。来てくれて。ハルキも喜ぶわ。」
「そんな、、、ずっと来れなくてゴメンなさい。」
「いいのよ。ハルキね、ナッちゃんと来年は蛍を見に行くって楽しみに
してたのよ。あんな事になってしまって。」
寂しそうにハル君のお母さんが話した。
「ハルキ、良かったね。ナッちゃんが来てくれたよ。」
涙が溢れて止まらまい。ハル君はずっと約束を覚えていたのに。
ゴメンね、ハル君。忘れていてゴメンね。遅くなってゴメンね。
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