第2話 筆記試験
「ふう、やっと着いたな」
休憩を挟みながら走り続けること7日、俺は遂にリリエンタール国の王都トーリアへ到着した。
人口が十万を超える大都市。
以前来たときもそうだったが、相変わらずとてつもない数の人間が行き交っている。
人混みをすり抜け、俺は目的地に到着した。
王立トーリア剣術魔法高等学園。
周囲が高さ十メートルを超える外壁と高度な魔法障壁に守られ、中央には巨大な城の如き校舎が
その校舎の中に、受験生が次々と吸い込まれていく。どうやらあそこが受験会場らしい。
受験生には、胸に紋章が刻まれたバッジをつけた者が多い。
じいちゃんから、そういうやつは貴族だから注意しろと言われた。
俺たち平民を見下している者が多く、昔じいちゃんも色々と揉めたことがあるらしい。
会場に入ると、試験官がもうすぐ始まる試験の説明をしていた。
試験は筆記、魔法、剣術の順に実施するらしい。
こういった試験も、じいちゃんから聞いたテンプレの一つだ。
試験テンプレの進め方として、実力を見せて無双するパターンと、目立たないように実力を隠し、あえて低い点数を取るパターンの2つがあるらしい。
俺の場合、そもそも実力を隠すほど強いわけではないから、一生懸命試験を受けて無双パターンを目指すしかないだろう。
とにかく、今俺ができる全力を尽くして頑張ってみよう。
筆記試験が始まった。
内容は魔法や剣術の知識に加え、算術や歴史などの問題に分かれている。
特に割合が多いのは歴史で、過去の偉人の業績を問うものが中心だ。
……というか、じいちゃんに関する問題ばかりだな。
本人から『ワシは結構有名人なのじゃ!』と聞かされてはいたが、結構どころではない気がする。
俺は暇さえあれば、じいちゃんに頼んで昔ばなしを聞かせてもらっていた。だから、全ての問題に対して事細かに解答を書ける。
どうも解答欄が狭い気がするが、全力を尽くし、書けることは目一杯書くことにしよう。
歴史以外の問題は、正直言って簡単だった。なんなら五年前に学習が終わっている範囲だ。
意外ではあったが、これも親代わりの二人がしっかり教育してくれたおかげだな。
さて、もうすぐ試験時間終了だ。
「はぁ!?」
突然素っ頓狂な声が教室に響く。
声の方へ視線を移すと、右隣の席の女が俺の答案用紙に目を丸くしている。
答案用紙は裏返しにしているのだが、この反応を見る限り、どうやら俺の解答が見て驚いているらしい。
透視系のスキルでも使っているのだろうか?
しばらくして、彼女は周囲の視線に気づくと、「あ……」と小さく呟き、慌てて下を向いた。
そう言えば今この女、堂々とカンニングしてたよな。もしやこの試験、バレなければなんでもありの試験だったのか?
まあ全ての問題を普通に解けた俺にとってはどうでもいいことだ。
解答用紙の提出後、隣の女が俺の顔をジッと見ていることに気づいた。
茶色の髪に白ヘアバンドをつけ、美しくも抜け目のない顔つきをしている。
着ている服はかなり高価そうだが、胸にバッジを着けていないのを見る限り、俺と同じ平民のようだ。
「ちょっとあんた! さっきの解答は一体何よ?」
「さっきの解答?」
「とぼけないでちょうだい! カオル・タチバナについての解答のことよ!」
「何か気になることでもあったか?」
「だから! とぼけないでって言ってるでしょう!? 解答用紙にびっしり書き込んでたけど、なんであんな馬鹿な真似したの?」
この女、堂々とカンニングを白状するとはおかしな奴だ。
ただ、少し心配そうな表情をしているようだ。同じ平民だから気になったのだろうか。
それにしても、馬鹿な真似とは一体?
「俺は正しいと思った解答をきっちり書いただけだ。自信があるぞ」
「はぁ? 単語一つ書くだけでいい解答欄に余白がなくなるまで長文を書いて、それでも足りないから裏面にまで書き込んでおいて、よくそんなことが言えるわね。答えが分からないからやけになったのかと思ったわ」
「な……、なんだと……?」
ば、ばかな!? そんな問題、あったか……?
単語一つで書き表せるならば、当然そうする。
だが、じいちゃんから聞いた話が正しければ、到底単語で書き表すことなどできない問題だったのだ。
「どうやらふざけて書いたわけじゃないみたいね」
「もちろん、俺は本気だ!」
「……ふーん。あんたの解答は、この天才ディアナ・ヴェーバーが見たことも聞いたこともない情報が盛りだくさんだった。あれが事実だとすれば大事ね。も、もしかして、あんた、カオル・タチバナの知り合いなんじゃ──」
何か言おうとするディアナの言葉を遮るように、答案用紙を集めていた教師が、声を張り上げる。
「次は魔法試験だ! すぐに会場へ向かうように!」
もう次の試験か。なかなかテンポが早いな。
ディアナの言葉が真実だとするならば、筆記試験は失敗してしまったかもしれない……。
そうなると次の魔法試験は確実に高得点を取らなければ、試験の合格が危うくなる。
「悪いな、俺は先に行くぞ」
「えっ!? ちょっ! 待って! 話が──」
ディアナが何か言っているようだが、今は試験に集中する必要があるし、遅れては元も子もない。
合格すればまた会う機会もあるだろう。
俺は次の試験会場に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます