第3話  私だけじゃなかった

明美は「私も母親を亡くして途方に暮れて居た頃、代わりの母親が家にやって来たんです」と女性に素直に話を始めた。

女性が「そう。それで?その母親とはどうなって居るの?」と思わず聞き返した。

明美は「それは…、私の事を煙たがってあまり笑顔を見せないし、私が困って居ても良く話を聞いてくれないんです」と女性に素直に話し始めた。

女性が「そう。それはちょっと寂しいわね?」と明美を見て頭を撫でた。

明美が「何でか分からないけど、あなたの様な知らない人に悩んでいた事を話せたのは初めてです。私、普通だったら今の状況でも話して居ないはずなのに」と驚きを隠せなかった。

女性が「それは、決まって居るわ。あなたが前を向いて今を歩き出すために誰かに困って居た事を相談する時だったのよ」と明美に打ち明けた。

明美が「ありがとうございます」とお礼を言った。

女性が「いえいえ、また何かあったら話に来てね」と明美に満面の笑みを見せた。

明美は昔亡くなった郷美の笑顔に何と無くそっくりで「お母さん」と思わず呼んでしまいそうになった。

その後、明美の携帯がプルプルと鳴っていた。

父親のまさとからだった。

女性が「あのさ?電話出ないの?」と心配で明美に声を掛けた。

明美が「いえ、大丈夫です。私のお父さんが勝手に電話を掛けてきただけですから」と女性に話をした。

女性が「そう。でも、心配してくれる人が居るって良いものよ。私何て両親が2人共亡くなっちゃったから、何かあっても心配してくれる人が居ないの」と明美に苦笑いをした。

明美は「じゃ、また」と手を振って女性の家を後にした。

女性も明美が見えなくなるまで手を振って居た。

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