第3話 スキル

少し説明回が続きます

序盤なのでお付き合い下さい


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 『スキル鑑定』という言葉を聞いた瞬間、一部の男子生徒が率先して向かった。

 一個しかない訳だから必然と順番になるのだが、自然と早い者順になったらしい。

 今のところみんなも特に文句がないらしく、最初に黒石という少し影の薄い生徒から鑑定は始まる。



 水晶が赤く輝く。

 と同時、おぉ、とクラスメイトの声が上がった。


「スキル【影法師】。ランクはA。素晴らしい才能です」


 黒石は実感が湧かないのか、クエスチョンマークを浮かべた顔を顔をしている。

 その顔を見た女神が微笑み、告げた。


「目を閉じて頭の中でスキルを唱えて下さい。そうすれば、使い方は自然と理解できる筈です」


 黒石は言われた通りに目を閉じる。

 そして数秒。

 何も起きないと思ったその時、黒石の影が動き始めた。

 人の形からグニョグニョと形を変貌させ、浮き上がった影が壁の一部を切り刻む。


 その超常現象に、俺を含めクラス一同は唖然とした。


「はは、凄え。これが僕の力なのかよ」


「ええ、そうです。それが黒石様の本当の力ですよ」


 黒石は完全に興奮状態になっていて、人が変わった方に昂っていた。

 そんな黒石の力を見て、他のクラスメイトも我先にと勇足になる。


 こうして、スキル鑑定はどんどん進んで行く。

 

 赤、青、緑と水晶は三色の輝きを順に放っている。

 観察していて分かった事は、赤はAランク、青はBランク、緑がCランクということ。

 赤が未だに黒石しか出ていないという事からも、Aランクは上位の力みたいだ。


 と、そんな事を考えていると水晶が赤色の輝きを放った。

 手を置いていた人物は……金髪黒ギャル、小峰瑞希。


「Aランクスキル【隷属】です。魔族を強制的に従える素晴らしい力ですね」


 小峰が目を閉じると、彼女の右手に黒い鞭が現れた。


「なんかあーし、女王様みたいじゃね?」


 小峰は冗談混じりに言っているが、女神の言う通りの力なら本当に王になれる力だ。


 そして赤色の輝きは、またしても現れた。


「大川真美様。Aランクスキル【水操すいそう】。水を自在に操る力ですね。これも非常に素晴らしいです」


 大川の足元から水が蛇の様に立ち昇る。

 どうやら、早速スキルを使いこなしている様子だ。


「ふーん。ま、こんなもんか」


 その後もBランクやCランクが多数、偶にAランクが紛れているという状況が続く。

 皆がAが最高位なのだろうと思い始めたその時、水晶が今までに見たことのない金色の輝きを放った。


 「おお!これは……」


 女神も思わず声を上げる。

 それほどまでに珍しい、レアケースなのだろうか。


 「スキル【空間操作】。最高位……Sランクのスキルです」


 突如現れた最高位のSランクスキル。

 その存在にクラス一同のみならず、俺たちを囲む兵士たちも驚嘆の声を上げる。

 そしてそのSランクを獲得した人物。

 それは、三山彼方だった。


「はっ!まあ妥当だな」


 言葉とは裏腹に、自慢げな表情が見え隠れしている。

 が、それもすぐに治った。

 何故なら、二人目のSランクが出たから。


「おめでとうございます、横溝雅也様。Sランクスキル【破壊】です」


 横溝の右腕が赤黒く変化し、空に拳を放っただけで城壁が弾け飛ぶ。

 拳一振りが砲弾の様な破壊力。

 皆の視線が、横溝に集まる。


「どうやら、俺と彼方は特別みてえだな」


 ニヤリと横山が口角を上げる。


 小峰や大川など、一部の生徒は彼らを称賛するが、大半の生徒は恐怖を浮かべていた。

 あの二人が最高位の力を得たという事は、力での支配からは逃れられない。

 それを危惧してのことだ。


 しかし、そう彼らの思い通りに事は進まない。


 一段と強い金色の輝きが、部屋を埋め尽くした。

 

「鏑木光希様。Sランクスキル【奇跡】。Sランクの中でも上位のスキルですね。おめでとうございます」


「ありがとうございます。女神様」


 礼儀正しく女神に頭を下げる鏑木。

 三山や横山の様な横柄な態度は取らない。

 いつも通り、誠実なその姿に恐怖統括を恐れていた生徒たちはホッと肩を下ろした。


 そして、Sランクは更に続く。


「白浜萌香様。Sランクスキル【聖女】です。優しき心をお持ちの様ですね」


「そんなぁ。ご期待に添えるように頑張ります!」


 そして一通りのSランクラッシュを終えて、遂に最後、俺の番がやって来た。

 俺はクラスメイトたちと同じ様に水晶に手を置く……が、一向に反応がない。

 皆が何かの不具合かと動揺し、そしてそのまま時間が過ぎ、女神がため息混じりに口を開いた。


「はぁ……高橋修斗、スキルなし。貴方に勇者の才はありません」


 女神は冷たく吐き捨てると、もう要はないと言わんばかりにスタスタと去ってしまった。

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