第3話

騎士。

その称号を得れれば全てが叶う。

そうとも言われているかの有名な騎士様が何故ここにいるのだろうか。

疑問は尽きる筈もないが今は興奮と言うのが感情だ。

その騎士は中年の白髪、髭を生やしている。

騎士は片刃の大剣で俺の上でトロールの手を必死に押さえている。

「小僧、下がれ。」

 苦しそうな声で俺へ言い放った。

 アドレナリンがえげつない。

 反射的に俺は部屋の端へ下がった。

 トロールは怒り、また手を振り上げた。

「みくびおって、」

 そういうと騎士は消えた。

が、それは違くて、なんといえばいいのだろうか、速すぎて見えない。

瞼を開いた瞬間にはもうトロールは斜めに切られている。

きゅうりの斜め切りのようだ

トロールは魔石になった。

青色でそこまで大きくもない。こんなサイズのやつに母が殺されたのだと思うと腹が立つ。

「一度、引き上げるか、おい小僧!立てるか?」

騎士は俺へ尋ねた。

情報量が多すぎて、何が何だかわからな。

何故騎士はここへ?何をしに?トロールはまだいるのではないか?父やファルマは無事なのか?母がいない今どう生きればいいのか?

そんなことを考えていたら、どこか寒くて、凍えてしまいうまく返答ができなかった。

「まぁいい、とにかく乗れ。」

そういうと腰を下ろしてきた。

おんぶだろうか?

そうか、逃げるのか、とてもいい案だ。

父の行方はわからない。まだ戦っているのだろう。

ファルマはどうだ、まぁあいつなら大丈夫だろう。

生き延びるなら騎士に身を委ねるほかない。

ならば委ねようぞ。

俺は騎士の上へ乗った。

「ゆっくりしてろ。」

そう言われたらそうする。

今の俺は声が出そうにない。

騎士は俺を背負い、トロールが壊したところから家を出た。

あたりを見た。

 殺戮の地とはこのことか、沢山の知人が血だらけになって死んでいる。

原型を留めていない誰かわからない人もいる。

あんなに豊かだった村はこんなにも荒れた地に変わるのか、

そんな言葉も溢れそうだ。

だが、今は死ということからは逃れられた。

この現実に殆どない安堵をしよう。

「小僧、喋れそうか?」

「はい、」

 少し落ち着いた。

 多少は話せそうだ。

「この村はもうこの有様だ、だから俺らのいる街に来ないか?」

「はい、ここにいても死ぬだけなので、お願いします。」 

 トロールの軍団は騎士の方々が滅してくれたのか

 人も死んで村も跡形もないが、俺が生き残れたのはこの人のおかげだ、感謝しよう。

村から出る門へと向かう途中。

"ファルマと父の死体"があった。

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2024年12月12日 19:00

復讐の驍名 北林 林 @hayashi_rin

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