第2話 捻出された資源の有効活用

 経費削減と制度改革への第一歩は、単なるコストカットにはとどまらない。それは、浮かせた財源を、より有益な分野へ振り向ける起点に他ならない。紗和は、紙や印刷費、不要なポジションへの報酬などから生み出された余力を、教育や医療、子育て、そしていじめ問題への対策といった内政の充実に投じるべきだと考えている。


 日本社会は、少子高齢化によって若い世代の負担が増大し、教育環境は決して十分な状態とは言えない。そこで、浮いた予算を教育に回し、学びの場を充実させることが、国の未来を支える礎となる。最新のデジタル教材を導入し、子どもたちが世界中の情報に容易にアクセスできる環境を整える。教師の指導体制を強化し、一人ひとりに合わせた学びを提供する。教育こそが長い目で見れば、経済や文化を底上げし、世界で活躍できる人材を育む源泉だ。


 次に、医療や子育て分野への予算投入は、国民が健やかに暮らせる基盤を固める。高齢者が増え続ける中で、医療費は削減しにくい分野だが、効率的な行政運営により生まれた余裕は、国民皆が享受できる形で還元されるべきである。より手厚い医療補助、遠隔診療などの新技術導入、不妊治療や保育への支援拡充——こうした取り組みによって、人々の不安が和らぎ、社会全体の安心感が増す。


 さらに、不登校やいじめ問題への積極的な取り組みは、単なる予算措置ではなく、社会の凝集力を維持するための不可欠な投資だ。不登校児童には多様な学習機会を用意し、メンタルケアの専門家を増員する。いじめ問題に取り組む専門部署やカウンセラーを充実させ、問題が深刻化する前に対策を打てる仕組みを整える。こうした、目に見えないが確実に社会を侵食している課題への対応がこそが、国民生活を底支えする重要な仕事となる。


 これらは、増税で国民から新たな負担を求めずとも、既存の仕組みを見直すことで実現できる可能性がある。電子化と組織のスリム化によって浮かせた財源は、単なる「余剰資金」ではない。それは、社会が抱える歪みや課題を正し、次世代への橋渡しを可能にする「希望の源泉」なのだ。


 紗和が提案した改革は、無駄を減らすことがゴールではなく、その先にある「持続可能な社会づくり」を目指している。そのためには、正しく浮いた資源を使うことが重要だ。教育で未来を耕し、医療や子育て支援で安心を拡充し、不登校やいじめへの対策で社会的弱者の声を拾う——こうした内政強化こそが、健全な国力の源であり、次の世代へ希望を受け渡す有効な手段となる。

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