第七章:失われた絆の危機
試練を終え、襷は神々の子供たちとの絆を深めつつあった。しかし、その平穏も長くは続かなかった。ある夜、学園の鐘が突如として不気味に鳴り響き、生徒たちが校庭に集められた。
校長・猿田彦の表情はいつになく険しい。
「学園の神宝の一部が盗まれた。」
生徒たちがざわめく中、猿田彦は続けた。
「盗まれた神宝は、この学園の守護を司る重要なものだ。このままでは学園の結界が崩壊し、神々と人間界の均衡が乱れる可能性がある。」
その言葉に、襷は冷たい汗が背中を伝うのを感じた。
疑念と対立
「神宝を盗むなんて、誰がそんなことを……。」
風花が眉をひそめる。
天斗が腕を組みながら言った。
「間違いなく内部犯だろう。外部の者がここに侵入するのは不可能だ。」
その言葉に、周囲の生徒たちの視線が自然と襷に向けられた。
「人間であるお前が怪しいんじゃないのか?」
「そうだ、神宝を人間界に持ち帰ろうとしたんじゃないのか?」
襷はその場で固まり、言葉を失った。彼を信じる風花や天斗が抗議するものの、疑念は簡単には消えない。
「僕じゃない!」
襷は声を絞り出したが、その不安定な声色がかえって生徒たちの疑念を深めてしまった。
孤立する襷
翌日から、襷は孤立するようになった。教室では誰も話しかけてこない。食堂で席を探しても、視線を避けられるばかりだった。
「……ここを出たほうがいいのかもしれない。」
襷は、学園の片隅で膝を抱えて呟いた。その声は、月明かりに溶けるように静かだった。
しかし、風花と天斗は襷を見捨てなかった。
「襷、信じてるからな。」
天斗が肩を叩く。
「絶対に真犯人を見つけて、あなたの無実を証明するわ。」
風花の力強い言葉に、襷は少しだけ救われた気持ちになった。
神宝を追う手がかり
その日の深夜、襷たちは真犯人を探すために学園内を調査することにした。風花が風の力で周囲の気配を探り、天斗が雷で微かな痕跡を照らし出す。
「ここだ……何かおかしい。」
天斗が指さしたのは、学園の地下に通じる秘密の通路だった。
通路の奥には、怪しい光を放つ部屋があった。その中には、盗まれた神宝と、それを見つめる一人の生徒の姿があった。
真犯人の正体
「君が、盗んだのか……?」
襷が震える声で問いかけると、振り返ったのは実桜だった。
「ごめんなさい……でも、どうしても必要だったの。」
実桜の目には涙が浮かんでいた。
「理由を話してくれ。」
襷の問いに、実桜はしばらくの沈黙の後、語り始めた。
「私は、この学園でみんなに認められたかった。でも、何をやっても中途半端で……だから神宝の力を借りて、自分を変えようとしたの。」
「そんなの、間違ってる!」
天斗が声を荒げるが、襷はそれを制した。
「僕たちは、ここで一緒に学ぶ仲間だ。力に頼るんじゃなくて、みんなと一緒に成長すればいい。」
襷の言葉に、実桜は泣き崩れた。そして、盗んだ神宝を返すと約束した。
再び結ばれる絆
翌朝、猿田彦校長に神宝を返した実桜は、自分の罪を全校生徒の前で告白した。
「すべて私の責任です。襷くんには、何の関係もありません。」
その言葉に、生徒たちは驚きとともに襷に対して誤解していたことを反省した。
「襷、疑って悪かった!」
「お前、すごいよ。実桜を救ったんだな。」
次々と声をかけられる襷は、ようやく孤独から解放された気がした。
襷の決意
事件が解決した後、襷は風花や天斗とともに学園の屋上で夕焼けを眺めていた。
「襷、お前、本当にすごい奴だな。」
天斗が笑いながら言うと、襷は照れくさそうに微笑んだ。
「僕もまだまだだよ。でも、みんなと一緒なら、きっともっと成長できる気がする。」
襷の胸には、新たな決意が芽生えていた。神々の学園での日々は、まだ続く。そして、彼の成長と仲間たちとの絆は、これからもさらに深まっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます