番外編:揺れる花心 ~実桜の秘密~

梁山泊神ノ学園は今日も静寂に包まれていた――そう思われていたが、生徒たちをざわつかせる事件が起きた。学園の「神宝」と呼ばれる特別な宝物の一部が何者かに盗まれたのだ。その中心にいたのは、植物を操る能力を持つ、穏やかで控えめな女子生徒、**稲荷実桜(いなり みお)**だった。


疑惑の矛先


「実桜が神宝を……?そんなこと、信じられない!」

放課後、襷たちが集まる教室でもその話題でもちきりだった。襷は窓際で沈思する。


「でも、風花と天斗も見たんでしょ?、現場には実桜しか居なかったって…本当?。」

風の神の子供(風花の従姉妹)で情報通の**風間流璃(かざま るり)**がため息混じりに言う。


「いや、実桜はそんなことをする子じゃない。何か裏があるはずだ。」

襷は断固として反論するが、周囲の空気は重いままだった。


「とにかく本人と話してみよう。」

襷は立ち上がり、実桜を探しに行く決意をする。


実桜の涙


学園の庭園、実桜がいつも世話をしている花壇の前で彼女は静かに座っていた。その表情は悲しみに染まっている。


「実桜!」

襷が声をかけると、彼女は驚いたように顔を上げたが、すぐに視線を逸らした。


「襷くん……どうしてここに?」


「君がどうして神宝を盗んだのか理由を聞いたよね?でもどうしても実桜が盗むとは到底思えないんだ!、だから話を聞きたくて来たんだ。」


実桜は震える声で答える。

「私……そんなつもりはなかったの。ただ……誰かの声が聞こえて……。」


彼女の言葉は途切れ、代わりに涙がこぼれ落ちた。


妖怪の影


その夜、襷たちは教師陣に許可を得て、事件の真相を探るため神宝の保管庫を調査することにした。そこで遭遇したのは、まるで人の姿をした影のような存在だった。


「やっぱり、誰かが実桜を操っていたんだな!」

襷が叫ぶと、影は嘲笑を浮かべた。


「正確には、心の隙を突いただけだ。お前たち神の子供たちは立派な存在のように見えて、案外脆いものだな。」


「お前は何者だ!」


影はゆっくりと姿を変え、恐ろしい妖怪の姿を現した。その姿はまさに「変化の妖怪」、古くから日本の物語に登場する恐ろしい存在だった。


襷と仲間たちの反撃


妖怪は襷たちに襲いかかるが、襷とその仲間たちは協力して立ち向かう。

妖怪が暗闇の中に隠れようとしたが

「逃がさないよ!」皓月の月の光が妖怪を照らし出す。

「風花、援護を頼む!」

「まかせて!」風花が風の刃を放ち、妖怪の動きを封じる。

「よっしゃ!全員でやっちまうぜ!」

さらに、 天斗が雷を放ち、妖怪を追い詰めた。

「これ以上、学園を荒らさせない!」


最後に、襷が叫ぶ。

「ここはみんなの大切な場所だ!お前なんかに渡してたまるか!」

襷の体から眩い光がみんなを優しく、そして力強く包み込み

「俺たちの仲間に手ぇ出すんじゃねぇーーー!!!」


襷の言葉に仲間たちの力がひとつになり、妖怪はついに力尽きて姿を消した。


実桜の決意


事件が解決した後、実桜は庭園で襷と向き合っていた。

「襷くん、本当にありがとう。私、あの時、心の中で迷っていたんだ。神として人間とどう向き合えばいいのかって。」


襷は静かに微笑んだ。

「迷うのは誰だって同じさ。でも、君は強い。だから、これからも自分らしくいればいい。」


実桜の顔が赤く染まる。彼女は小さな声で答えた。

「ありがとう……襷くん。私、ずっと君のことを――」


彼女は一瞬言葉を詰まらせたが、微笑みながら続けた。

「……応援しているから。」


仲間との絆


翌日、実桜の仲良しグループの3人が彼女を迎えた。

風の能力を持つ橘陽葵(たちばな ひまり)、水を操る清流蒼(せいりゅう あお)、そして炎の力を持つ**焔守凜(ほむら りん)**だ。


「実桜、もう元気になった?」

陽葵が心配そうに声をかける。


「うん、大丈夫。これからはもっと強くなるよ。」

実桜が力強く答えると、蒼が優しく微笑んだ。

「私たちもずっと一緒だよ。」


「そうだね。次は何か楽しいことをしよう!」

凜が明るく提案し、みんなで笑い合った。


実桜の胸に宿る想い


その夜、実桜は星空を見上げながらひとりつぶやいた。

「神と人間は結ばれない。でも、私は襷くんを守りたい。この気持ちは消えないから。」


彼女の心に新たな決意が宿り、花壇の花々が一斉に咲き誇った。

その美しい光景を見つめながら、実桜はそっと微笑む。

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