第五章:神々の学校に溶け込む襷

初めての課題を無事に終えた襷は、神々の子供たちと少しずつ打ち解け始めていた。それでもまだ、全員が襷に対して心を開いたわけではなかった。襷は新たな目標を胸に抱いていた。


「この学園で、全員とちゃんと向き合いたい。」

その言葉には、課題を通じて得た自信と、神々への敬意が込められていた。


新たな日常


ある朝、襷が食堂で朝食をとっていると、周囲の生徒たちがひそひそと話しているのが聞こえた。


「この前の橋作り、襷がすごいことしたんだって?」

「ああ、人間なのに、あそこまでやるなんて。」


一部の生徒たちは好意的に話していたが、冷たい視線を投げる者もいた。


「人間のくせに、調子に乗りすぎじゃない?」

「あいつ、本当に俺たちと肩を並べる資格あるのか?」


襷はそれを聞きながら、まだ自分が完全に受け入れられていない現実を感じた。


「もっとみんなと分かり合わなきゃ……。」

彼は心の中で決意を新たにした。


特別授業:人間界を知る


その日の午後、校長の猿田彦から特別授業の案内があった。


「今日は『人間界を知る』授業だ。」

猿田彦が講堂に立ち、神々の子供たちに語りかけた。


「神々が人間に愛され、信仰されるには、人間の心を理解しなければならない。」


授業の一環として、生徒たちは人間界での「生活の一日」を仮想的に体験することになった。襷は講師役として、彼らにアドバイスをすることになった。


神々の子供たちの挑戦


人間界の生活を仮想体験する授業は、各グループに分かれて行われた。襷は風花や天斗、実桜たちと同じグループになり、彼らが戸惑う姿を見て微笑ましく感じていた。


「え、人間って毎朝こんなに早く起きるの?」

天斗が不満げな顔で言うと、風花が笑った。

「そうよ。学校や仕事があるから、早起きは当たり前なの。」


「それにしても、この計算問題って何? 神力で解決できないの?」

実桜が苦戦しているのを見て、襷は笑いながら教えてあげた。


「人間界では、頭を使うことも大切なんだよ。神力に頼れないからね。」


トラブル発生:天斗の暴走


しかし、授業の途中で天斗が再び不満を爆発させた。

「こんな面倒くさいこと、やってられない! 俺たちは神になるためにここにいるんだぞ!」


彼は授業の設定を無視して雷を使い、仮想世界を壊そうとした。その瞬間、周囲の空間が歪み始め、他の生徒たちも巻き込まれそうになった。


「天斗、やめろ!」

襷が必死に叫んで駆け寄る。


「お前が止めたって、何になるんだよ!」

天斗は襷を睨みつけたが、襷は怯まず、彼の目を真っ直ぐに見つめた。


「僕たちは、ここで学ぶために集まったんだろ? 神様になるっていうのは、力を誇示することじゃなくて、みんなを守ることなんじゃないのか?」


その言葉に天斗は動きを止めた。しばらくの沈黙の後、天斗は肩を落とし、小さく呟いた。

「……悪かったよ。」


クラスメートたちとの和解


授業が終わった後、襷のもとに他の生徒たちが集まり始めた。


「襷、さっきはすごかったな。」

「お前、本当にただの人間なのか?」


襷は苦笑いしながら答えた。

「僕だって、まだまだ未熟だよ。でも、みんなと一緒に成長したいんだ。」


その言葉に、生徒たちの心が少しずつ動かされていった。


新たな仲間の輪


その夜、襷は風花たちとともに校庭に集まり、満天の星空を眺めていた。


「襷、今日の授業でまた一歩進めたんじゃない?」

風花が微笑みながら言うと、襷は頷いた。


「うん。まだまだこれからだけど、少しずつみんなと分かり合える気がするよ。」


天斗も隣で照れくさそうに言った。

「まあ、俺も少しはお前を認めてやるよ。」


「ありがとう、天斗。」

襷は笑顔で答えた。その笑顔は、彼がこの学園で確実に成長していることを物語っていた。

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