第四章:揺れる絆と成長の兆し
完成間近だった橋作り。しかし、順調に進んでいたはずの作業に、あるきっかけで不穏な空気が漂い始めた。
天斗の苛立ち
「おい、こんなんで本当に完成するのか?」
天斗が声を荒げた。雷の力で橋を守る役割を担っていたが、その効果がうまく発揮されず、次第に苛立ちを募らせていた。
「みんなの力を合わせるって言うけど、結局お前ら、俺に頼りすぎなんじゃねえのか?」
天斗の視線は襷に向けられていた。
「俺たちは神になるためにここに来てんだぞ! 人間一人の言葉なんかで、この橋が本当に完成すると思ってんのか?」
その言葉に、襷は何も言い返せず、唇を噛んだ。
「やめてよ、天斗!」
風花が割って入るが、天斗はさらに声を荒げた。
「お前が甘やかすから、こいつが余計に自分を過信するんだ!」
「僕は……!」
襷は必死に言葉を探したが、何も出てこない。
「もういい!」
天斗はそう言い捨てると、雷を轟かせ、橋の一部に力を注ぎ込んだ。しかし、その瞬間、力のバランスが崩れ、橋全体がぐらつき始めた。
襷の覚悟
「止めなきゃ!」
風花が慌てて風を操ろうとするが、すでに天斗の雷が暴走していた。
「このままじゃ橋が壊れちゃう!」
実桜も植物を操るが、雷の力が強すぎてうまくいかない。
「どうする……どうすればいいんだ……!」
襷は焦りの中、橋を見つめながら心の中で叫んだ。
そのとき、ふと浮かんだのは、家族や友達、人間界で出会った人々の姿だった。
「みんなのことを思い出して……ここで諦めたら、僕は何も変われない……!」
襷は自分の中に湧き上がる勇気を感じ、前に一歩踏み出した。
襷の行動
「天斗!」
襷は雷の暴走に向かって走り出した。
「おい、何してんだ、バカ!」
天斗が驚いて叫ぶが、襷は止まらない。
雷が激しく閃光を放つ中、襷は両手を広げて橋の中央に立った。
「僕だって、ここで力を見せなきゃいけないんだ!」
襷は心の中で祈りを込めながら、目を閉じて叫んだ。
「僕を信じてくれ! そして、みんなでこの橋を完成させよう!」
その瞬間、襷の体から暖かな光が溢れ出し、雷の暴走を包み込んだ。その光は、天斗の雷だけでなく、風花の風や実桜の植物、皓月の月光をも引き寄せ、全てを調和させる力となった。
完成した橋
光が収まると、そこには眩く輝く橋が現れていた。優雅な曲線を描き、どこまでも続いていくような美しさに、生徒たちは息を呑んだ。
「これが……」
風花が呟くと、実桜も感動の面持ちで続けた。
「こんな素敵な橋、見たことない……。」
「まさか、こいつが……」
天斗は悔しそうな顔をしていたが、その目にはどこか襷への尊敬が宿っていた。
仲間としての一歩
「襷、すごいじゃない!」
風花が笑顔で襷に駆け寄ると、実桜や涼介も拍手を送り始めた。
「……すまなかった。」
天斗がポツリと呟く。襷は驚いて彼を見つめた。
「俺はお前を見くびってた。でも、さっきの光……あれが本当の『信頼』ってやつなんだな。」
「天斗……」
襷は一瞬言葉を失ったが、次の瞬間、笑顔で手を差し出した。
「ありがとう、天斗。」
天斗は一瞬戸惑ったが、しっかりとその手を握り返した。
新たな絆
橋の完成を見届けた校長・猿田彦大樹が現れ、満足そうに頷いた。
「素晴らしい。これぞ、神と人間が共に築くべき絆の象徴だ。」
襷たちは互いに笑顔を交わし、これからも力を合わせていくことを誓った。
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