第三章:初めての課題 - チームワークの試練

襷が梁山泊神ノ学園での生活に少し慣れてきたころ、校長の猿田彦大樹から最初の課題が発表された。


「さて、これから君たちには初めての共同課題に挑戦してもらう。」

校長の声が講堂全体に響き渡り、生徒たちは緊張した面持ちで耳を傾ける。


「課題の内容は『人間界と神界をつなぐ橋を作ること』だ。」


生徒たちは一斉にざわつき始めた。神界の橋は単なる物理的な構造物ではない。それは、人間と神々の関係を象徴する存在であり、魂や信仰の流れを表すものだ。


「この課題は、神としての力だけでなく、人間への理解と協力がなければ成功しない。」

猿田彦は襷をちらりと見た。

「特に君だ、神野襷。君が人間としての視点をチームに提供することが、この課題の鍵になるだろう。」


襷は突然の重圧に目を丸くしたが、周囲の生徒たちの真剣な眼差しに、逃げることはできないと覚悟を決めた。


チームのメンバー


襷は風花や皓月と同じチームに配属された。そこに天斗も加わると聞いて、彼は不安を隠せなかった。


「なんでアイツと一緒なんだ……」

襷がぼやくと、風花が笑いながら肩を叩いた。

「大丈夫、天斗は確かに口は悪いけど、力はすごいからね。頼りになるわよ。」


さらにチームには、植物を操る能力を持つおっとりした女子生徒、**稲荷実桜(いなり みお)**と、水を自在に操る涼しげな男子生徒、**瀧川涼介(たきがわ りょうすけ)**も加わった。


初めての作戦会議


課題の説明を受けた後、チームは学園の中庭に集まって作戦会議を始めた。


「橋を作るって、具体的にどうすればいいんだ?」

襷が戸惑いながら質問すると、皓月が冷静に答える。

「単に形を作るだけでは不十分だ。橋に込める『思い』が必要だ。」


「思い?」

襷が首をかしげると、風花が続けた。

「そう、橋は神と人間の『つながり』を象徴しているの。だから、人間の気持ちをよく理解しないと、壊れやすいものになってしまう。」


天斗が腕を組んでため息をついた。

「要するに、時間がかかるってことだろ。さっさと俺の雷でガツンとやれば済むんじゃないのか?」


「それじゃダメだ。」

皓月が鋭く天斗を睨みつけた。

「力任せでは意味がない。この橋は、神々が人間に対してどれだけ真剣に向き合えるかを試されている。」


険悪な空気を感じた襷は、勇気を出して口を開いた。

「じゃあ、僕が人間の立場から提案してみるよ。」


襷の提案


襷はしばらく考え込んだ後、言葉を紡ぎ始めた。

「人間って、何かを信じることで強くなれるんだと思う。でも、それは目に見えないものを信じる力だから、簡単には育たない。」


「だから、この橋には『信頼』を込めるべきだと思う。神様が人間を信じてくれているって、形に表せる橋にするんだ。」


襷の言葉に、チームのメンバーは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにそれぞれが納得したように頷いた。


「それなら、私の風で人々の祈りを集められるかもしれない。」

風花が提案すると、実桜も微笑みながら言った。

「私は植物を育てる力で、橋に生命を吹き込めると思うわ。」


「よし、それなら俺の雷でその生命を守る力を与えてやる。」

天斗が得意げに腕を組むと、皓月も静かに付け加えた。

「僕は月の光を橋に満たし、穏やかな気持ちを込めるとしよう。」


「じゃあ僕は……」

襷は一瞬言葉に詰まったが、すぐに笑顔を見せた。

「僕の思いを言葉にして、橋に込めるよ。人間の代表としてね。」


挑戦の始まり


各自が役割を確認し、いよいよ橋作りが始まった。風花の風が祈りを運び、実桜の植物がその場に緑を生み出す。天斗の雷がその緑を守り、皓月の月光が全体を優しく照らした。


襷はその光景を見つめながら、言葉を紡いだ。

「人間と神様が、これからもつながっていられますように……。」


その瞬間、橋は眩い光を放ち、ゆっくりと完成に近づいていった。

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