魔王再誕 二回目の世界統一を目指して

カノン

第0話 再誕から入試

「お前らは?」

「ワタシは残りますよ」

「俺も同じく、この国存続させねぇとだからな」

軽く言葉が交わされている

「俺居なくていいか?」

「あのレベルの災い複数来るってんなら厳しいけど大丈夫だろ、過去の記録見るにな」

「そうだな、いけるか。ああ、遺品についてはもうしまったから気にしないでいい」

「そういえばどこにやったんで?」

「あの二人のとこ、今はまだ戦ってるんだっけ?」

「ええまあ、決着着くんですかねあれ、あと10年以内にはさすがに両方死ぬらしいですけど」

「まあ、先に床に入るってだけだ。どちらにせよ、もう死体になるまで顔合わせることもないだろうしな」


「じゃ、またな、1000年後に会えたら合おう。遺体は適当に処理してくれ」

そう男は言いながら大きく手を振った


───


国歴1024年 中央都市第十五区十二町にて

「産まれた…」

いたって普通の家族が子を産んだ


「…ふむ、感覚としてはそれほど長くはないな」


しかし、産後数分、ゆりかごの中からそう声を発した赤子は、普通では無かった

「え…?」

という困惑が、院室内に広がる、助産師も、母親も、父親も、産まれたばかりの赤子が声を発したことと、発し始めた圧に恐怖するしかなくなっている

「あなたが母か」

「は…はい」

母親は自分が今産んだ子に対して丁寧語になってしまっている

「産んでくれてありがとう。そして赤子を育てるという機会を潰してしまってすまない。しかし私はあなたの子だ、それに違いはないしそれ以外でもない」

そう言った赤子は、急成長を始め、人間で言う11~13歳程度の大きさにまで成長をする

「よろしく、ママ、パパ」

その日、病院の仕事は大荒れになったという

幸い、赤子の急成長の事例は過去にも複数記録されており…最初から流暢に喋るなどは前例がないが、その場合はそれを記録した上で、登録年齢を妥当な分まで引き上げて扱うとされていたため事はそれほど遅れなく進み

複数の検査の上で出生3日、登録年齢12歳の男が誕生した

そして、名も

レギアーク·アーキソル

それが、新しい俺の名だ



家だ、ここに住むことになるわけだ

周囲の街並みも…ああ、面影は殆どないな

「そうだ、学校とかどうしましょうか…」

母がそう呟いたので

「色々と…調べてからにしたいんだけど、いい?」

子供らしく言う

「んー、急成長児への教育は複雑だから国の規定に従う必要は無いし国から補填が出るらしいし…そうね。いいわよ、選んで入ろうね、年齢的に中学校になるかな?」

目線を合わせてそう言ってくれる

優しい母だ

しかし父はやはりというか、なにも間違いではないが、状況を未だ受け入れきれていない、母と俺とは既にこう会話できているが、父と話すのはまだ先になりそうだ

まあ仕方がない、そりゃあそうだと言う他無いだろう

ともかく、俺達家族は家に帰り、生活が始まった


入る中学は結構すぐに決まった、そこでの勉強は、2、3割は復習、残りは今の世界を知ることに大変役にたった

およそ200年前に起きた世界的戦争で多くが衰退し、今があるらしい

この中央都市も被害を受け、その前後では大きく形が変わったとのことだ、そりゃあ面影も無いわけだ

しかし、町の命名法式だとか、俺が居た頃にあった…もとい、俺がつけたりもした地区名なんかはそのまま残っているようだった

そんな風に今の世界情勢を知るや、学校生活が進む中で第一大学の候補も色々と知れ、とりあえずの目標ができた

名門、中央騎士大学

いわゆるエリート街道と言われる学校があったので、そこに行こうと考えた、生まれたのが中央都市でよかった

そのために俺の居た頃と違う、あるいは無かった勉強を多くしないとだったが問題は無い、やればできることならやるだけだからだ


そして、それらと同時に、一つ遺品の回収をした、転生後に回収できるようにしていたものを取りに行った



脚を踏み出せばそれに重なり、パラ…パラ…と土埃や風化しつつある天井の欠片が落ちてくる

紋無き水面のように静かなその空間は遺跡とされるようなもので、現行人類は未発見な場所だ

そこへ魔術的なパスワードと鍵を使い開け、入っていき、歩き進む

暗い石道に光明を与えながら進み、並ぶ墓に声をかける

「起きろ、時間が来た」

そう言うに合わせて壁の一部が崩れ、金属の球のようなものが転がり落ちる

それをレギアークは拾い

体内に格納した

「…ふう、起きれるな?計算機」

空に青白い文字盤のようなものが現れ、そこへ軽く触れ少しの入力を行った後、消す

「まだ別人にできるほど俺の力は戻ってない、か」

そう言いながらレギアークは遺跡を発った



そして、第一大学の受験、ペーパーテストは終わり、自己採点的には十分合格できる範囲と感じている

そして、今日は実技を受けに行く日だ

そのために中央都市第二区にある学校へ向かう

学校は大きい、最も高い所で50m以上はあり、面積的にも学校私有地を除いた本校敷地だけで約600000㎡(東京ドーム12個分くらい)もある

そこへ入り試験会場となっている建物へ向かう…が、早めに来て敷地内を見て回ることが許されてるためそうする

室内、室外共に良い設備が揃っている。新入生への媚び売りかもしれないが綺麗だし、地脈関係的にも良い土地にできておりかつそれを活用できるようにしっかりと計算されていることがわかる

うん、良い場所だ

そんなこんなでもうそろそろ試験時間だ…と思いながら、それでも遠回りをしつつ向かっている

しかし、予想以上に離れてしまっており、なんなら来る時に来たことがない土地で手間取ったからというのもあるが急いで歩いて、ああ歩きながら試験のことばかり考え上の空だったから

ぶつかってしまった

「うおっ」

「きゃっ」

…二人とも転んだ

ため息をつきながら立ち上がり、ぶつかってしまった少女に手を差し出す

「ああ、すまない」

「いえ、私もごめんなさい。…その、あなたも迷って?」

そう聞かれる

「…いや、試験会場の場所はわかっている」

そう言うと少し固まり

「その…失礼なんですが」

「気にするな、これもなにかの縁だろ、試験会場まで向かおうか」

「ありがとうございます!」

ああ…ぶつかったりしたことに対してはもうよさそうだな

ということで、二人で走る

「すみません…普段なら絶対こんなことないんですけど…なんか忘れちゃって…」

「普段か、住まいは第二区に?」

「ああ、はい…家を出てこっちで、開校日は毎回のように来てたんですけどね…」

そうか、じゃあちょうどいいかもな

「ここに受かったら俺は寮生を取ろうと思っていてな、もしよければ…」

「いいですよ、こう助けて貰いましたから。第二区を案内します」

「感謝する」

二区は少なくとも十五区より建物が軽く学校まで歩いただけでも多いからな…それに、学校内の知人をこれほど早く得れるとも思ってはいなかった

「ちなみに生まれは?俺は十五区でな」

あ、黙ってしまったな…家には触れてほしくない感じだったか…申し訳ないな

「…北です、北方都市」

「そうか、なにも考えず聞いたが嫌だったなら謝罪する、すまない」

「いえ、問題ないです」

そんな話をしながら走り、なんとか時間には間に合う

「よし、間に合った…」

と思った、が、同時に

「あ、魔術科に来てしまった、君は」

北方は剣士近接職などが主流で魔術師は少ない…こちらじゃなく剣士科の方だったら場所が違ってしまう

「…いや、私も魔士科です、言ってなくてすみません」

少し、間があった気がするが

「お、そうだったか、よかったよかった」

「…思いました?北方なのに魔術科で意外だと」

ああ、なるほど、まあ偏見というのは厳しいものだ

「まあ少しはな、剣士科に案内しなければならなかったか?とは。だが別にそうだったとしてなんら問題はあるまい、やりたいことや向いてることは人それぞれなんだから」

それに…今世の北の魔術を見れるならそれは興味がある、とはいっても彼女は中央住みらしいからそれほど見れないかもしれないが…

まあそこは黙っておこう

「…」

気分を害してしまったかもしれない

「ありがとう、ございます」

「じゃあ…お互い頑張ろうか」

「ああ、はい、お互い頑張りましょう。ありがとうございます。言葉、励みになりました」

お?そうか

「ならよかったよ、じゃ、今度案内頼む」

「連絡先だけ交換しましょうか」

「そうだな」

そうして軽く連絡先を交換した後、試験の控え室へ向かう

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