第10話 普通の女の子
「お邪魔します……」
アジトの中へと入ると、3匹のバレーボール程の大きさの小さなドラゴンが私たちを出迎える。
『早かったな』
3匹のうちの1匹がそう語りかけてきた。
「あれ、もしかして……ラグーン!?」
「おっ、やるなぁユア。大正解だ」
ジークはそう返事をしながら室内へと入っていったので、私もレイたちと共に建物の奥へと進む。
広いリビングには大きくてふかふかそうなソファが置いてあり、レイが腰掛けたので私もその隣に腰を下ろした。
「わぁ、ふかふかだ! うっ……!」
腰が沈むと同時にドレスに思いっ切り胸を締め付けられ、胸元を押さえる。
「え、ユアどうしたの!?」
レイが驚いて私を見る。
「あ、ごめん大丈夫……」
「服、買いに行くか」
ジークがそう言って私へ手を差し伸べる。
「えっ……」
「んな綺麗な格好じゃ過ごしにくいだろ。町の娘が着てるような服着たらいいさ。まぁ、そのドレスが気に入ってるんなら話は別だが……」
「服、買いに行きたいです」
私は迷う事なく彼の手を取った。
「ああいう貴族の女性の服は胸の辺りの締め付けがすごいらしいぞ」
セドリックがレイへ話しかけている。
「あぁ、そういう事かぁ。貴族は暮らしだけじゃなくて着るものも窮屈なんだなぁ……」
本当に。レイの言う通り。
ジークと2人で町に戻り一緒に服を選んだけど、お店の人には「ジークハルト殿下の恋人ですか?」とかさんざん問い詰められて服を選ぶよりも店員さんをなだめるほうが大変だった。
お店で選んだ服をそのまま着せてもらい再び町の通りに出ると、開放感からか風景が全く違って見えた。
「あぁ、こんなにも空気って美味しかったんだ……!」
私は両手を広げて胸いっぱいに空気を吸い込み、くるくると回る。
「ははは、心も締め付けから解放されたみてぇだな」
「うん、ジーク、本当にありがとう!」
回るのをやめて自然と満面の笑みでお礼を言う。こんなふうに自然に笑ってしまうのはいつぶりだろうか。
ジークはまたしても顔を真っ赤にして「こういうのは我慢しないでちゃんと言えよ」とそっぽを向いてしまった。
ジークは照れ屋さんなんだろうか。
「うん、ありがとう」
この地方の特産である“アケルの実”という甘い果物のジュースを買ってもらい、それを飲みながらご機嫌でアジトへと戻った。
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