第8話 空の旅
ジークにはぐらかされたまま、私たちは街道をひたすら歩いていた。このまま徒歩でその遠くのグランシア王国に行くのだろうか?
そう思っているとジークは歩みを止め、来た道を振り返った。
「まぁ、そろそろいいか。誰も追ってくる気配もねぇし」
「そだねー」
ジークはおもむろにローブの中から小さな笛を取り出して、強く吹き鳴らした。
少しだけキーンという超音波のようなものを感じたかと思うと、すぐに遠くの空から恐竜の雄叫びのようなものが聞こえてくる。
思わず空を見上げると、3羽の鳥の影がこちらに近付いてくるのが分かった。
が……。
「え、待って。鳥じゃない!?」
「ははは。見るの、初めてだよな」
その影は近付くにつれてどんどんと大きくなり、私たちの目の前に降り立つ頃には人間の何倍もの大きさのあるドラゴンであることが分かった。鮮やかな緑色の鱗の一枚一枚が太陽に照らされて輝き、神々しささえ感じられる。
「ドラゴン!?」
「そ、幻獣ドラゴン。この3体とも俺の友達だ。ユアが乗るコイツの名前は“ラグーン”。挨拶してやってくれ」
ジークがドラゴンの鱗をポンポンと撫でると、そのドラゴンが1歩前へ出て私の顔の目の前まで自身の顔を下げた。
「わわわっ、挨拶って!? え、えっと……初めましてラグーン。私はユアです。あの、今日からジークのギルドにお世話になります……」
おどおどとそこまで言うとドラゴンはゆっくり頷き、私の脳内に『承知した』と言葉が伝わってきた。
「え、しゃべれるの?」
「正確にはテレパシーだけどな。さ、乗るぞ」
ジークは私をヒョイっと抱えるとドラゴンの背中に飛び乗り、私を前に座らせた。
「うわぁ、鱗硬いね……」
ポンポンと撫でると、少し温かかった。
「良かったなラグーン、美女はお前に興味津々だ。つーわけで嫌われないようにゆっくり頼むぜ」
『承知』
ラグーンの翼がゆっくりはためくと、まるでジェットコースターの上っている時の様にゆっくりと高度が上がっていった。
「わぁぁぁ、すごい!」
「しっかり捕まってろよ。ま、俺が落とさないけどな」
「あ、うん……」
ラグーンの背中に付けられている手すりのようなものに捕まるが、それよりもジークの腕が私のお腹をしっかりと抱きしめているのが気になってしまった。
今まで異性とこんな密着したことはないからか、ラグーンに乗って空を飛んでいるからか、それともジークがイケメンだからか……私の胸は今までにないほどドキドキと高鳴っていた。
そう言えば黒猫ちゃんは!? と思ったら、私の捕まっている手すりに一緒になってしがみついていてちょっと可愛かった。
左右を見るとレイとセドリックのドラゴンも一列に並ぶように飛んでおり、私はその絶景を満喫しながら北西の国までひとっ飛びした。
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