第7話 新しい自分
⸺⸺セルフィーユ街道⸺⸺
「あはは、最後あの王子ダッサかったね~!」
レイは街道を歩きながらお腹を抱えて笑っている。
「ちょーっとビビらせ過ぎたかもな。これでもうトラウマんなって勃たなくなっちまえばいいのに」
と、ジーク。セドリックは隣で「はぁ……」と深くため息を吐いていた。
「あの、あの、本当にありがとうございました! 溜めていたものが全部飛んでいって、本当になんとお礼を言ったらいいのか……うぅっ、ごめんなさい……」
私はあまりにも心がスッキリし過ぎて、解放された喜びからか再び涙が溢れ出した。
「あーあ、まーた泣かせちまった……。どういたしまして。俺もスッキリしたし、あの国のことも良く分かったし、まぁ気にすんなってこった」
ジークはフードを取り、ニッと笑った。黒髪短髪のイケメンが、そこにいた。
レイとセドリックもそれぞれフードを取り、銀髪パーマのアイドル顔の青年とメガネをかけた青髪の真面目そうな青年がそれぞれ顔を出した。
「はい、ありがとうございます……」
私も涙を拭き、今できる一番の笑みを返した。
ジークはなぜか一瞬たじろいだが、すぐに仕切り直す。
「えっと、じゃぁ改めて……俺はジークハルト。ジークって呼んでくれ。んでこっちのちんちくりんがレイで、真面目メガネがセドリックだ」
「ちんちくりんって言うな~!」
「真面目メガネも気に食わん……!」
非難轟々である。
「あはは……私は、エレノアです……」
「早速だけどエレノア、今日限りでエレノアを辞める事を俺はオススメする」
ジークははっきりとそう言った。
「えっ!?」
「エレノアって名前を聞き付けてあの国の国王がお前を取り返しに来ると面倒だからな」
「あぁ、確かに……」
「名前、思い入れあったか?」
ジークにそう問われ、私はすぐに首を横に振った。
「全然ないです。それなら私……“ユア”と名乗ります」
この前世の名前には思い入れがある。大好きなパパとママが付けてくれた大切な名前。
「ユア、か。良い名前だな。じゃぁ、お前は今日からユアだ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
とは言ったものの……。
「あの、皆さんは一体どこから……そしてどこに向かっているのでしょう……?」
「敬語、いらねぇぞ。名前も呼び捨てて良いからな」
「あ、はい……じゃなかった、うん……」
「ははは、上出来。俺らはここからずっと遠くの『グランシア王国』ってところから来たんだ。一旦国に帰ろうと思ってる。ユアさえ良ければ俺らのギルドの手伝いをしてもらえたらと思うんだが……」
「ギルドの手伝い……? うん、私、何でもするよ!」
そっか、この人たち、遠くの国出身のギルドの人たちだったんだ。
「おぉ、ありがとな。まぁ、ただ……一つだけ問題があってな……」
ジークはそう言うとバツが悪そうに頭をかいた。
「ん? 問題……?」
首を傾げる私に「なんだ、このまま言わないつもりかと思った」とクスクスと笑うレイ。
「メンバーが暴れん坊が多い、とか……?」
「いやいや、俺の結成してるギルドのメンバーはこの3人で全部でユアが4人目。問題は俺自身と言うか……」
「?」
更に首を傾げる私。ジークはなぜか言いづらそうにして「まぁ国に行けば分かるか!」と笑って誤魔化した。
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