第5話 暗闇

清水くんの家には前よりも余裕をもって戻ることができた。前回の反省を活かし、シャツも乾いたものに着替えた。冷蔵庫で急速冷却し汗も引いた。ただ、相変わらず桃鉄は借金地獄だった。

完璧だ。前回の反省も踏まえ、ここまで自分の立てた計画に抜けは一切見当たらなかった。



「ただいま。」

鍵っ子として慣れた手つきで自宅の鍵を開け、中に入った。カーテンの締め切られた部屋は十七時過ぎでも薄暗く、蒸し暑く、電気はついていなかった。母親は買い物にでも出ているのかと思ったが、死角となっていた食卓の椅子に座っていた。

「どうしたの。暑いよ。クーラーつけてよ。」


しばらく沈黙があり、今まで聞いたことのない低い声で母がポツリと言う。

「どこ、行ってたの?」

「んっ?なんて?」

「今までどこに行ってたの?」

「清水くん家だよ。」

「嘘はいい。どこ?」

「だから清水くん家だって。」

僕の計画は完璧だ。完璧なはずだ。

あれっ、なんかミスったか?


「携帯、キッズ携帯、」

そのとき、樹は自分の計画の根本的で致命的なミスに気づいた。GPSだ。キッズ携帯の親子見守り機能には子どものいる位置をGPSで確認できる機能があるのだ。もう、言い訳してもボロが出るだけだと悟った。


「大ちゃんと会ってた。」


「大ちゃんってのは、のこと?」


んっ?今、って言ったよな。勘ではなく、確信を持って。まるで、大ちゃんのことをよく知っているような。


「お母さん、大ちゃんのこと知ってるの?」


母はゆっくりと静かに、ただ、はっきりとした口調で話す。


「だいきはね、だいきは、




 あなたのお父さんよ。」

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