動物農場

ジュリスはふぅとため息を漏らした。彼はまるで自分が大仕事をやってのけたかのような表情を見せた。黒革の椅子に深く座り直し、腰の力を抜いた。彼の秘書が近づき彼に言った。

「本当に解体してよかったのですか?」

「あぁ、あいつらを潰しておかなければ、いずれ赤の女王がやられる。そうなれば武器の密輸先が減ってしまうだろう?」

「ですが、独断でこんな事をしてはまずいのでは?」

「金というのは全てを変えることができる。生活も人も国も全てだ。それを私は簡単に手に入れることができる。それもタダでた!」

ジュリスは興奮のあまり立ち上がった。

「軍の武器を革命と謳って活動している奴らに売る。それで奴らは喜びながら高い金を払う。それが私の懐に入る。軍の上層部に金を渡せばアイツらは何も言わない。完璧な商売だ。革命勢力は私にとっては高い金を払ってくれる客だ。いいもんだ。成功もしない革命を謳って馬鹿な奴らだ」

「ですが記憶改竄部門を解体する必要はなかったんじゃ」

「つべこべ言うな。口止め料ならいくらでも払ってやる。記憶改竄部門の連中は何をしでかすかわからない。目の前の脅威を取り除いただけだ。大統領が追求をしてきても金を渡せばいいだけだ。それで事足りる。もうとっくにこの国は、この時代は、とうに腐ってるんだよ。正義がなければ悪もない。その区別は誰にもつかない。こんな時代に何が世の中を支配すると思う? ある者は権力というだろう。またある者は才能というだろう。そしてまたある者、いやある部門はこう言っただろう。記憶と。だがどれも違う。絶対的な力を持っているのは金だ。権力者は金に頭を垂れてひれ伏し、才能を持ったものは金で押さえつけ、記憶改竄部門は金で解体させた。金こそが全てだ」

「そうですか」

秘書は自らのボスに恐怖を覚えた。秘書はその一言を残し、部屋を後にした。彼は足早に人気が少ない部屋に向かった。スマホを取り出し、番号を打ち込んだ。

「もしもし、私です。実行しますか? はい。ですがこれ以上国防長官を野放しにすれば危険です。ですが……。今すぐ改竄を行うべきだと私は思います。えぇ、そうです。わかりました。まだ潜伏しておきます。それでは」

彼は電話を切りため息をついた。

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