第3話 職場戦争勃発!

『お疲れ様です。先ほど、ムーミンから休みすぎなので子供が体調を崩さないよう予防できないかと言われました。私も気を付けてはいるつもりなのですが、春日さんや京さんは、何かお子さんが体調を崩さないよう気を付けてることってありますでしょうか? 参考にさせていただければ助かります。』


 送信。


 送った相手は、春日局。


 ちなみに京さんとは、私たちが仕事を請け負っている会社の社員さんで、私と同じく1歳と2歳になる女の子二人を育てながら働いているワーキングマザーだ。

 私は連絡先を知らないのだが、春日局さんは京さんとも仲が良さそうなので一緒に聞いてみたわけである。


 その後、私は本社にて面談を受けた。

 相手は、常務兼部長。いつもニコニコと笑顔が優しい好々爺だ。


※「好」=好々爺

※「風」=風雅(私)


好「職場で何か困ってることや悩んでいることとかあれば、相談に乗るのでいつでも連絡ください」

風「あの……仕事に全く不満はないのですが、子供の病気で休みがちでして、有休も残り少なくなってきており、どうしたものかと……」

好「まぁ、今は仕方ないよねぇ。有休なくなったら、給料が削られるだけだしねえ」


 あははー、と笑う好々爺。

 いやまぁ、全くそのとおりではあるのだが。


好「うちも孫が男二人、女二人っていてねー本当大変だよねー。やっぱり男の子の方が女の子よりもよく病気するし、この前なんか……」


 ……と、好々爺の孫話が始まってしまった。

 結局、具体的な解決策はないまま、面談は終了した。


 まぁ、仕方ないよなぁ、どこのワーキングマザーもこうやって大変な中でがんばっているのだろうし。給料削られても、できることをやるしかないよなぁ……と思っていた矢先、面談を受ける前に私が送ったメッセージの返信が届いた。


※「春」=春日局


春『日曜日は、遊びすぎず、体力温存させる。風邪ひかせないように努力する。ですかね。』


 いや、その〝努力〟ってのを具体的に聞きたかったのだが。


 ……ってか、どっかで聞いた内容だな。ムーミンの発案者は、やはりお前か。


春『思い出しましたが、私の会社の人は、ベビーシッター二人雇ってました。私もシルバー人材とファミサポさんに子供預けて残業してました。お金で解決できるところは、全部お金かけてました。』


 そんなお金があったら働いてないよ。

 というか、病気の予防についてアドバイスを求めたハズなのだが、方向性が変わっている。


春『確かに、京さんに比べ同じ状況で二倍くらい風雅さんお休みしている感じなので、共稼ぎ無理では?と心配していました。私も京さんも、親が近くにいないので風雅さんより大変でしたね。』


 おいおいおい。

 これ完全に攻撃(非難)されていますよね。アドバイスじゃないし。


 共稼ぎ無理とか、私よりも自分らの方が大変だとか、そんなこと思ってても言っちゃダメでしょ(笑)。


 そもそも、あなたは私の家庭の何を知っているの??


春『私は、休んで人に迷惑かけると気にするタイプなんで、やすんだときはもっと回りに気を使ってました。余計なことかもしれませんが、風雅さんが本当に共稼ぎしたいのであれば、謙虚な気持ちで、お子さんの健康管理に配慮した方がいいと思います。私は、そうしていました。うちの子も、丈夫でそんなにしょっちゅう熱出しませんでしたね。』


 本当に余計だよ。私は働きたくないけど働いていて、それでも子供の体調管理には充分これでも気を遣っているつもりだ。


 ってか、あなたもちょくちょく私用で休まれておりますが、その翌日、作業を代わっていた私に対して、特に何の言葉もありませんでしたけどねっ。


春『風雅さん自身も早めに病院へいくことおすすめします。』


 行ってるよ!

 私が会社でゴホゴホ咳をしていて治らないから言ってくれてるんだろうけど。

 病院行ってますから!


 ママ業+仕事+家事で毎日休みがなく、年子産んでから体力落ちてるのもあって、なかなか回復しないのだ。


 かなりショックを受けたが、そのように思わせている私の態度にも問題があるのかとも思い、とりあえず、誤解を解くためにも自分の実情を話してみることにした。


風『つまり、私には謙虚さが欠けていると思われていたわけですね。そういう態度をとってしまっていたのなら申し訳ありません。休んでいる分皆さんにご迷惑をお掛けしていること、毎回心苦しく思っており、その分、出社した時には真摯に仕事に向き合っているつもりでおりましたが、春日さんの仰るように、周囲の人への声かけや配慮が足りていなかったように思えます。考えが浅く申し訳ないです。』


 お互い様だとは思うが、文句を言われないよう、今後は休んだ翌日に出社したら、まずは謝ろう。


風『丈夫なお子さんとのこと、羨ましい限りです。

 私自身子供の頃はしょっちゅう熱を出していて小児喘息も高熱による引きつけなんかも起こしたりして、あまり身体が丈夫な方ではありません。子供もその体質を受け継いだのでしょうか。


 大体金曜日に保育園から帰ってくると熱を出し、土日は病院へ行くくらいで家で養生し、買い物は夫に行ってもらったりしています。

 月曜まで熱が長引くような時は、休ませてもらっていますが、大体一度熱を出すと4~5日は熱が下がりません。

 最近は病院へ連れて行っても自然治癒する方針で抗生物質も処方してもらえず、熱が高い時だけ解熱剤、これもあまり使いすぎるとただ風邪を長引かせるだけですので、鼻喉のシロップをもらうくらいです。


 もちろん私も病院へ通っております。少しずつですが回復はしておりますが、治りかけて、また子供の風邪がうつって、の繰り返しですね。


 寝冷えしないよう着替えも気をつけていますし、水分も取らせるように気をつけて、お風呂上りも必ず髪をドライヤーで乾かしています。

 上の子は好き嫌いが激しいので食べないのも原因の一つかもしれませんが、下の子はよく食べていても熱を出します。食生活ももう少し気をつけないといけないですよね。』


春『言葉が足りず、すみません。一般論です。』


 え、すみません。

 どの部分が?? >「一般論」


風『春日さんと京さんは、近くに助けてくださる方がいらっしゃらないのに、こんなことを言うと気分を害されるかもしれませんが、自分の親ではないので、そんなに気軽に頼ることはできませんし、病気をしている時くらいはせめて一緒にいてやりたいと思う気持ちもあります。

 私は、あまり人に自分から話しかけて関わることが得意ではありません。

 だから、ママ友もほとんどいませんし、自分で自分が甘いのかどうか判断できず、春日さんのように経験者の方にはっきりと言っていただけると自分のことを振り返ることができてありがたいです。』


春『風雅さんが、とても頑張っていらっしゃるということが、よくわかりました。私も気がついたら20年も前のことになってしまい、記憶が曖昧です。丈夫と言っても、熱も出しましたし、色々ありましたよ。』


 おい、どっちだよ。

 そう言えば以前、夏はプール熱やとびひやらと大変なのよ~と話していた。


春『お役にたてばと思いお返事させていただきましたが、余計なことを書いていたら申し訳ありませんでした。』


 思わず胸に溜め込んでいた不満が吐き出された感ありありです。


風『私ももう少し自分から自分の話をするよう心がけますので、そのように、考えがあまりとか、叱咤していただけたら、厚かましいですが、頑張り方がわかると思いますので、よろしくお願いします。』


 最後に『お仕事中に失礼致しました。』と締めくくった。

 これで終わっていればお互い禍根が残らなかった……かもしれない。


春『風雅さん。ゆっくりメッセージを読みましたが、よかれと思って書いたアドバイス、風雅さんには納得できないようですみませんでした。

 仕事中真摯にとありますが、お手透きの時間もあるはずなので、そういうときは、台帳見直すとかして欲しかったかな。

 時間に余裕があるときは、私だったら、なにかお手伝いできることはありますか?と気配りします。

 上記にあるように、風雅さん、立派に子育てしていらっしゃいますし、お仕事もお出来になるので、私のようなものができるアドバイスはありません。お役に立てずごめんなさいね。』


風『それについては誤解があるようです。ムーミンさんから仕事をもらいつつ、春日チームの仕事もしておりますので、あまり手漉きになることはほとんどありません。

 もちろん、手が空いた時は、声をかけさせていただきます。

 私の作業状況が公開されていないせいで変な誤解を与えてしまっていたのでしたら、今後ムーミンさんとのやりとりのメールなどに春日さんをCCに入れさせて頂きます。

 それから、先日は言いませんでしたが、台帳記帳ミスの件、以前私がわからなかったので春日さんに伺ったところ、こうだと教えて頂いて記帳したものです。

 もちろん、私も他に詳しく調べもせずに鵜呑みにしてしまったのも悪いので、特に言いませんでしたが、もしそのことが原因で私へのご不満があるようでしたら失礼致しました。台帳の見直しも日々の作業スケジュールに入れておきます。』


春『ごめんなさい、これから飲み会なので、勘弁してください。』


 え、何か私が悪者になってる??

 文句を言ってきたのはそっちなのに、と少しイラっとしたので、つい私も余計なことを言ってしまう。


風『それから、今後何かご不満がある場合は、言いにくいかもしれませんが、人づてではなく、はっきり私に言ってください。あまり人の悪いことばかり言うのも職場の雰囲気を悪くするだけだと思いますよ。失礼致しました。飲み会楽しんできてください。』

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