第4話 異質な存在
眠りから目覚めた瞬間、私は母親の腕の中にいた。目の前に広がるのは昨日見た男たち――粗野で威圧的な雰囲気を漂わせる彼らが、まだ家の周囲をうろついている。
「どうしてまだいるの……?」
母親は不安そうな表情を浮かべながらも、私を優しく揺らし、泣かないように気遣ってくれる。彼女の温もりに安心しつつも、私の心はざわついていた。
男たちは父親と何かを話しているようだった。その声は荒々しく、明らかに脅迫的だ。父親は苦い表情を浮かべながら、ゆっくりと頭を下げている。
「これって……取引?それとも、何かを要求されてる?」
彼らの態度から、明らかに父親が何らかの不利な立場に置かれているのはわかった。母親が時折父親を気遣う視線を送るたびに、その緊張感が伝わってくる。
そのとき、男の一人がこちらに目を向けた。
「えっ……?」
彼の視線は鋭く、私――赤ん坊である私に興味を持ったように見えた。彼は何かを言いながらこちらに歩み寄る。母親は慌てて私を抱きしめ、体を隠すようにして後ろに下がった。
男は怪訝な表情を浮かべつつも、興味を失ったのか、それ以上は追及せず、再び父親と話を続けた。
「私が……原因なのかな?」
昨日のあの光が、何か問題を引き起こしたのではないかという不安がよぎる。あの男たちは私の存在を知っている?それとも偶然?
疑問が次々と湧き上がる中、状況を知る手段が何もないことに苛立ちを感じた。
その日の夕方、男たちはようやく立ち去った。父親は肩を落としながら家に戻り、母親はその後ろで静かに戸を閉めた。家の中には張り詰めた空気が漂っていた。
父親と母親は何かを話し始めるが、言葉が理解できない私はただその様子を見つめるしかない。それでも、二人の表情や声のトーンから察するに、男たちの来訪は良いことではなかったようだ。
母親がふと私に目を向ける。優しい瞳ではあるが、その奥に何か隠された不安が見える気がした。
その夜、母親は私を胸に抱き、ベッドに横たわった。彼女の心臓の音が耳元で聞こえ、どこか落ち着く。それでも、私はこの家の中に漂う見えない不安から目を背けることができなかった。
「この光……私が持つこの力は、一体なんなの?」
自分の中から湧き上がる温かい感覚。それが自分を守るための力なのか、それとも周囲に不幸をもたらすものなのか。この体に宿った「異質な何か」をどう扱えばいいのか、答えは見えなかった。
翌日、父親は朝早くから外に出て作業をしていた。母親は家の中で忙しそうに動き回りながらも、時々私を見て微笑んでくれる。その日常の様子は、昨日の出来事を忘れようとしているかのようだった。
私はただ布に包まれたまま、静かにその様子を見守っていた。
「……この生活に、慣れるしかないのかな」
そう考えた瞬間、家の外から何かの足音が聞こえた。昨日の男たちではない、新たな何か――
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