第2話 初めて見る世界
どれくらい眠っていたのだろう。目が覚めると、私は薄暗い天井を見上げていた。天井は木材でできているようで、ところどころ隙間が見える。外からの光が入り込んでいて、まるでランプのように揺れていた。
「……ここは家の中?」
ぼんやりと頭の中で呟いた。先ほどまで外にいたような気がするが、いつの間にか場所が変わっている。相変わらず体は重く、思うようには動かない。ただ、視界が少しずつクリアになってきているのが救いだった。
耳に入るのは、何かが煮える音や、食器のようなものがカチャカチャとぶつかる音。それに、低く柔らかい声が混じっている。誰かが話しているようだが、私には言葉が理解できなかった。
「どこの国の言葉……いや、そもそもここが地球かどうかも怪しいんだけど」
赤ちゃん特有の高い泣き声を出してしまったせいか、足音が近づいてくる。そして、視界の端に女性の顔が現れた。昼間に私を抱いていたあの人だ。
彼女は私に微笑みかけると、優しく私の体を持ち上げた。布に包まれた体がふわりと浮く。抱かれる感触は心地よく、今だけは何も考えなくてもいい気がしてしまう。
しかし、彼女が私を連れ出した先を見た瞬間、私は完全に言葉を失った。
そこには、原始的だが生活感のある空間が広がっていた。丸太を組んだ壁に、何かの毛皮が掛けられている。中央には大きなかまどのようなものがあり、火が燃えている。かまどの上には鍋があり、そこから立ち上る湯気と香りが広がっていた。
「すごい……なんだこれ、時代劇のセットみたい」
外の光が差し込む窓からは、広い森が見える。見たことのない鳥が飛び、地面には小さな動物が駆け回っていた。
「本当にここ、地球なの?」
その時、私の体に不思議な感覚が走った。体の奥底から湧き上がる温かいエネルギー。それはさっき眠る前に感じたものと同じで、まるで私の中から溢れているようだった。
「これって……やっぱり魔力?」
そう考えた瞬間、私の手がふわりと光った。小さな赤ん坊の指先から、淡い青い光が漏れ出ているのが見えた。
「……えぇ!?」
心の中で叫ぶしかなかった。魔法なんて空想の産物だと思っていた。それが今、自分の体から出ている?どうして?これって普通なの?
その光景に気づいたのか、女性は驚いたように目を見開き、何かを叫んだ。すぐにもう一人、年配の男性が現れた。その男性は私を見つめ、女性と何かを話し合い始める。言葉はやはりわからないが、明らかに私が原因で何かが起きていることはわかる。
「私のせい……?」
その後、女性が男性に頷き、私を再び布に包みながら抱きしめた。その抱擁は温かく、優しいものだったが、何かを隠しているようにも感じられた。
その日の夜、私は寝かしつけられながら、ぼんやりと天井を見上げて考えていた。この世界には明らかに「普通ではない」何かがある。私が持つこの光や、抱かれる女性の反応、そして周りの風景。
「これからどうなるんだろう……」
不安と興奮が入り混じる中で、私は再び眠りについた。
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