レベルを下げるグールには行列
あるダンジョンの地下5階、行列ができる一室がある。冒険者たちはドアの前で整然と待機している。噂を聞きつけた一国の王が、列に並んで8時間。ようやく自分の番が来たと、ドアを開けて中に入れば、そこには腐ったグールが一匹。グチョグチョの皮膚にボロ布をまとい「ようこそいらっしゃい」と話しかける。
「噂を聞いてやってきた、これは何の行列だ」と王が聞けば、グールは「私はレベルドレインが出来まして、触ると人のレベルを下げられます」と答える。「いや待て意味がわからない、せっかく上げたレベルなのに、なぜ皆、奪われに来るのだろう」グールは頭をかきながら「みんな責任を負いたくないらしく」と困っている。どうやらグールが話すには、冒険者はパーティ内の最高レベル者に、失敗の全責任を押し付けるのだとか。
王の体は怒りに震え、目には失望の色が浮かんだ。「それなら私はこの国の王、責任は一心に背負っている。まったく愚民共は嘆かわしい」そう叫ぶ王の背後で、大臣が「命だけは勘弁を」と嘆いて跪く。まさかと思って問い詰めると「内政スキルについてもレベルがありまして」と涙する。「王のレベルはいくつですか」大臣が聞くので「8だ!」と自信を持って答えれば「グール様、私を20回叩いてください!」と懇願している。殴られた大臣は「やった、7だ!」と喜んでいる。王はマズいと踵を返し、グールに2回殴るようゴマをすり続けた。
「いやはや麗しきグール様。あなたのレベルは合計でいくつなんですか?」と王が聞いてみた所、グールは「もはや数えられない」と言う。王は王冠をグールに被らせ、グールの肩をもむようになった。
ある日、勇者が旅立った際、勇者はグールの足元に絨毯を敷いたらしい。グールが魔王の元に相談しにいくと、魔王はグールの靴を磨いたらしい。やがてグールが世界を収めると、人も魔物もグールを崇め奉ったらしい。グールは流石に嫌気がさし、レベルを固めて神に捧げた。神はレベルを拒絶して、地上を海で覆いつくしてしまった。レベルは海を漂いに漂い、やがて一匹のヤドカリがさりげなく食べたという。
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