第3話 悪魔の契約内容
そうこうしているうちに保健室に着く。
意外と教室から近かったようだ。
「ついたわよ 保健室の先生いるか確認するね」
水野先生と保健室で二人きりになれたら最高なのにな——そんなことを考えていると————
ガラッ
「あら、おはようございます水野先生」
「あ、あ、おはようございます....!」
保健室の中から見慣れない先生が出てくる。
「どうされました?」
「あ、えっと....生徒が入学早々手を怪我してしまいまして、手当していただけますか?」
「怪我?ああ、ほんとだ わかりましたよ」
「水野先生はオリエンの続きですよね?あとは私がやっておきますので、先に戻ってていいですよ」
「え、ほんとですか?すみません....!そしたら田中くんは手当が終わり次第戻ってきてね 配布物はまとめておくから安心してね」
「あ、はい....」
水野先生とは二人きりになれず。まあ仕方ない。早いところ手当してもらって、クラスに馴染む機会を逃さないようにしなければ....って俺いつの間にこんな前向きなんだ?
「田中くん、手当するから奥の席座って?」
「あ、はい!お願いします!」
バタンッ
保健室の扉が閉まり、保健室の先生が近づいてくる。こんな先生いたっけな?俺はぼっちだったが、保健室に通うような生徒ではなかったため、保健室の先生がどんなだったがあまり記憶がない。
黒髪ロングで眼鏡をかけた姿で、でも決して地味ではなく、色白で怪しげな雰囲気のある整った顔をしている女の先生。こんな先生だったら割と目立っていたようにも思えるけど。記憶とは当てにならないものだ。
「先生すみません、机に手をぶつけて、さっきまでかなり出血しちゃってました」
「ふっww その怪我はぶつけた傷じゃないよ〜」
「——え?」
突然何かを知ってるようなことを口にした先生にビックリしてしまった。
「あの、今何て....?」
怪我している手の方に向けていた視線を先生の方をやると、それは先生の姿ではなく————
————そこには見覚えのある あいつの姿があった。
そう————ホームレスだった俺を15年前の世界に飛ばした張本人。
「あ、自称悪魔の......!えっとなんだっけ......」
「おい、自称とはなんだ、君は失礼なヤツだな」
「す、すいません......」
「いやあ、すっかり若返ったな!悪魔の私もビックリだよwww ていうかホームレスだった君は少々老けすぎだったけどねww」
「ちなみに私の名前は
「————おっとごめん、話の途中だったね あんまりここに長くいると怪しまれるから、手当しながらよく聞いてよ?」
「な、なんでしょう?」
俺は警戒しながら訊ねる。
「結論から言うと、君のこの怪我は私がさっき遠くからこっそり切りつけたもので、というのも君が保健室に行く理由を作らなきゃいけなかったからなんだ〜ごめんねww? 怒んないで?w」
「なっ....マジか まあいいけど」
「大丈夫〜大した傷じゃないからすぐ治るって〜」
「それよりここに来させたのは、君に話さなければいけないことがあるからなんだけど————もう分かったかな?」
心当たりは当然ある。
「もしかして————小さな願い事の条件の話か?」
「せいかーい! 流石だね!対人間能力のレベルが上がってるから察しが良くなったのかな?早速効果を発揮してるじゃん!」
「そういうのいいから、条件って結局なんなの?」
「そうだね、結論から言うと 私の出すとある課題をクリアしてもらうことかな!」
「とある課題?」
俺は少し身構える。自称とはいえ悪魔の類なら、とんでもないことをさせられてもおかしくない。
「そう!さらに結論を言うとこの課題はこなしてもらわないと————」
この自称悪魔。『結論から〜』とか言う割に全然結論を話さずに引き延ばしてくる。
「————君に死んでもらわなければいけなくなる」
「は————?」
ほら言わんこっちゃない。悪魔と契約なんてするんじゃなかった。過去に戻れて意気揚々としてた俺を、初めから再び絶望のどん底に落とすつもりだったのだろう。悪魔め。ふざけるな。
「やっぱりそういうことかよ そんな都合よく人生をやり直させないってか?」
俺は再び絶望と怒りを感じた。しかしあのとき欲張って小さな願いを望んだ俺も悪いのだ。
「あ、待って待って!最後まで聞いて!」
「私がこの世界に来たってことは、君の課題をクリアするために全力サポートをするってことだからひとまず安心してほしい!」
「安心とかサポートとかって——そんなものあってないようなものだろ?俺は今までそんなものに恩恵を受けれずにホームレスになったんだが?」
サポートと言ったって、結局人ごとだ。俺は全く安心できない。
「最後まで聞いてくれ、とにかくこの課題を君がこなせないと君だけじゃなくて私の立場もヤバいんだよ——だから何がなんでも協力するんだ!利害の一致ってやつ!」
「な、なんだよ!そういうのを早く言えよ それでその課題とやらは何なんだ?さすがに教えてくれよ」
「課題は簡単だよ————」
「これから私が指定する女子たちをセフレにしていくことだ!」
沈黙が流れる。
「————は?」
「どうだ簡単d....」
「どこがだよ!!!!」
「30年間友達も彼女も作れなかったホームレスの俺が段階すっ飛ばしてセフレなんか作れるわけないだろが!!!」
「ちょっと声が大きいってww 聞こえちゃうぞ?」
「お前が変なこと言うからだろ!」
「お前じゃない璃孤って呼んで♡」
ぶりっ子がちょっと可愛いのもムカつく。悪魔のくせに。
「いいか?君は人生をやり直すんだ やり直すからには最高の人生を送りたいと思わない?」
「そりゃそうしたいけど......」
「なら悪いことは言わない 従った方が君は幸せになれるよ?ていうか従わないと死んじゃうんだけどw」
璃孤はおちょくるような口調で言う。
「まあセフレっていうと聞こえが悪いし、嫌悪感を抱くものが多いけど——実は人間関係を構築する上でセフレを作ることで、友人関係や恋人、集団行動や仕事、全てに良い影響を与えることができるんだよ? 特に男はね!」
「は、ほんとかよ....」
「ああ、ほんとだよ セフレって友達関係にも近いし恋人関係にも近い——一番難しいポジションにある関係性なんだけど」
「まあ確かにそうだな....」
無意識に璃孤の説明に肯定的なリアクションをとってしまう。
「前提ある程度親しくないとこの関係は作れないし、かと言って踏み込みすぎると崩れやすい——難しい言葉で言うと、セルフマーケティングやらセルフブランディングが上手くないと多くのセフレをゲットするのは至難の業になるわけだ」
「いやだから、それなら俺にハードルが高すぎるって....」
「最初はね!もちろんいきなりセフレになりましょうなんてのは君みたいな元ホームレスには無理難題だけど——」
コイツはいちいち鼻につく言い方をしてくるなと思ったが黙って聞いてやることにする。
「その過程でその相手や、相手の周りの人間との関係性を構築していくんだ」
「で、何が言いたいんだ?」
「つまり君が多くのセフレをゲットする頃には、友人関係や恋人関係も上手く行ってるはずなんだ!」
「は、はぁ....そんな単純か?」
「もちろんセフレを作るのが君の人生のゴールではないよ!世の中にはもっとたくさん向き合わなきゃいけないことがあるからね!」
ペテン師のような喋り方が腹立つが、言ってることが正しい感じを出しているところが余計に腹立つ。
「だからこの課題をクリアする過程で、更にこなすべき小さな課題をクリアしていくんだ その先に君の人生が素晴らしいものになる未来が待ってるってわけ!」
「さあ、もう時間がない!連絡先を交換しておくから、私からの課題を見ておくように!」
「ちょっ....おい!」
「それじゃ、また後ほど〜!」
バタンッ
璃孤は嵐のように喋るだけ喋っていなくなった。
「なんだよ....クソっ」
言いたいことは山ほどあったが、流石に戻らないと怪しまれるので教室へ戻る。幸いここに来てから10分程度しか経っていないようだった。
「クソっ....セフレ作れだなんて、できるわけないだろ」
教室へ入ろうとしたその時、一通のメッセージが届く。
————そこには、さっそく1人目のセフレを作るための課題が書かれていた。
「!?」
「あ、おい....この相手って......」
田中くん 悪魔の契約で学校の美女たちとセフレ攻略 ちゃんおく @chanok0201
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