ヒュウゥゥゥ…

「それで、さっきのは何なの!白石君ッ!!」


おおう…今はそのフレンドリーさが俺を傷つけるんだぜベイベー。

いつの間にか名字を知られてるよぅ…


退屈な、けど俺に取っては冷や汗モノの授業時間が終わった昼休み。

早速俺はクラス一、いや下手したら日本一ぐらいに元気なクラスメイトの手で廊下に召喚された。


カツアゲ?NO!NO!尋問シツモンだ。


「ネェネェ!!白石君のシャーペン!!独りでに動いてなかった!?何アレ何アレ〜!!」


大きな声出さないで。余計目立つから…

少し空いた窓から、ひゅ〜…と風が通り抜け、彼女の黒メッシュを入れたポニーテールが揺れる。


「私、偶然見ちゃったんだぁ!!あの歴史の先生、授業つまんないからさ?オモシロイことないかな〜と思っててキョロキョロしてたら…♪」


おい。元気っ子。キミの何気ない言葉で、廊下の奥で階段を下る先生の後ろ姿がどこか憂鬱になってるぞ。配慮しろ配慮。

…ってかこの子かな〜りメンドクサそ〜。いや、いい子なんだ。きっと。でも今の状況からしたら…ね。


(ヒュウウウウ?)


…そして余計に面倒なことになった気がする。

俺は、とにかくはしゃいで『動く幽霊シャーペンの考察』を披露するゲンキっ子ちゃんを傍目に、一点を見た。窓の隙間だ。


(ひゅいいいい!…ひゅううう?)


窓の隙間に挟まる、5歳児サイズの(今までのコイツラと比べたら比較的)大きい、幼女。

髪の毛は藍色で、なんかポワポワしとる。雲みたいな。どんなパーマや。

足まで隠れる水色の服を着ている。下を履け下を。

不思議そうな目をしながら、太陽色の瞳をこちらへ向けてくる。キレイやな。純粋やな。

『どうかしたの?』とでも言いたげだ。どうかしたも何も、オマエラのせいでこうなってるんですが。


…俺はオマエラの存在を隠しておきたいの。

人間は未知が未知でいることに耐えられない生物だ。眼の前のゲンキっ子ちゃんのように。

だから、知るためなら、何でもしてくる。オマエラも俺も、バレたら何されるか分かんない。

人体実験?解剖?ハッ、そんなのゴメンだ。俺は一介の普通の高校生、それでいいんだ。


愚痴っぽくなってしまった…。そんな事言ったってどうもならないのに。

ハァ…困ったなァ…


(ひゅいひゅい!!)


ん…?へ?オマエが?なんとかするって?


(ひゅう!!)


「って、思ってるんだけど、どうかな〜!?アタリ?ハズレ?出来ればハズレだと嬉しいなぁ♪」


…クッ、妄想の時間もここまでか…

しょうがない…!!いけ!オマエ!今回はオマエラを信じる!

なんとかしてくれ!!!


(ひゅうううううううう!!!!)


ブワッ…


風、舞う。コイツの、小さな唇から。


ウワ〜オ♡


色は…赤……ハッ。


「…」


顔面は、真っ赤…


「も〜〜〜う!!!何見てんのよッ!!!ばか〜〜〜〜!!!」


ズバシイイイィィィン!!!!


ダダダダダダダダダダ…


俺の真横を、通り過ぎるのも、風。

鼻腔に手を当てて、手を見る。赤。


(ヒュウ♪)


ふふふ。とんだおませさんだね。フフフフフ…

フフ、フ…


「何やってくれとんじゃヴォケがァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!」

(ひゅううううううう??!!)


もう、二度と、コイツラ、信用しない。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コモノコドモ COOLKID @kanadeoshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画