カキカキ

俺は普通の学生だ。

自分でも藪から棒な導入の仕方だとは思う。


でも俺はの高校生だ。うん。

宿題はする。ま、先週一回だけわすれちったけど。


勿論授業も受ける。なんなら今受けてる。歴史の授業だ。みんなが眠る睡眠導入ASMRとして有名な。


なのにさぁ…


(カキカキ〜♪シュッシュル〜♪)


こんな所でんじゃねぇぇぇぇ…!!!


俺は恨みのこもった視線をむける。眼の前の白いステージの上で縦横無尽に踊り駆け巡り、漆黒の足跡を残すコイツに。


シルバーのシルクハット、カチッとした杉色の紳士服に身を包んでいる。

ネクタイも銀で決めて。靴は勿論ブラック。気品と風格を感じる。

高身長な体躯に宿る抜群のスタイル。顔面偏差値が高いのは言うまでもない。

当に、童話や妄想のなかのスーパーイケメン。


…なんだけど俺としては、早急に踊るのをやめて大人しくしてて欲しい。

んでもって、控室で帰って他のヤツライケメン共と駄弁ってて欲しい。

これは決して容姿に嫉妬したからとかじゃない。決して。


(シュル〜…シュルッル〜!)


トリプルアクセル〜!…じゃねんだわ。


俺はため息を吐きころしながら、肘をついて授業を眺める、フリをする。

幸い俺の席は一番後ろの角っこ。しかも前に座る高身長青年の居眠りで教師目線からでは、射線が切れている。コイツはバレてない。

ありがとう、名も知らぬ君…よく近くの席になるのに名前覚えられなくてごめんよ…


(シュルシュルッ…カキカキッ!)


あ〜あ〜暴れんな…!ノートぐちゃぐちゃだろうが…!

ったくコッチは毎日この摩訶不思議なナニカが誰かに知られるかヒヤヒヤしてんのにっ…!!今日も今日とて呑気にフィギュアスケートしやがって…!!


(カキ〜カキカキ…シュル!!)


チックショォ…台パンでもしてやろかな…ん?

俺はふと視線を感じた。先生のものではない、訝しげな目線を…

恐る恐る、しかし自然に見えるように…俺は突っ伏してあたかも寝たかのように振る舞いながら、視線を探す。


「ジィ〜〜〜〜〜…」


はいオワタ。

クラスで一番の人気者でゲンキっ子ちゃんが、一番前の席からこちらを凝視しているではありませんか。

あそこから見えるんかよ。視力良すぎやろがい。ふざけんなちくしょう。


キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン…


…そして図ったかのようなタイミング。


(シュッシュッシュル!…ペコリ)


んでもってお前は終焉フィナーレです、か。ホンマ覚えとけマジで。


ハァ〜〜…さて、どう弁明しようかナ?




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