第2話 学園入学【2】

 「逃げるぞ、なぎさ!」



_______少し前





…鬼ごっこ?何を言ってるんだ?ここは実力が全ての学園だろ?なのに…鬼ごっこ?


俺はその言葉の意味が分からなかった。


どれだけ考えても分からなかった。


そして…数秒、俺が混乱しているとまたも声が

響いた。



「早速ルールを説明しよう。この学園の教師、

 総勢12人が鬼、そして新入生全員が逃げる側

 で1日逃げ切った新入生の入学を認める。」


と…。




1日逃げ切った新入生の入学を認める?あぁ…

そういうことか。


俺達はまだこの学園に入学なんて…



【出来ていなかった】



この鬼ごっこは真に強い強者だけを残すって事

なんだろうな…。


はっ、上等だ。



そして俺が覚悟を決めたその瞬間…鬼ごっこが

開始された。




_______鬼ごっこ開始





取り敢えず俺達は部屋から出て学園の中庭に

来ていた。



「人が多いな。」


「やっぱり皆が考える事は同じですね…。」


渚がそう言った瞬間に少し驚いた様な表情を

して俺に言った。



「着いて来て下さい!」


そうして俺は手を引っ張られて中庭から離れた

学園の実習場に連れて来られた。



「お、おい!急にどうした。」


「す、すいません…ちょっと今は説明出来なくて

 後で絶対説明するので今は…。」



その言葉が紡がれるより早く中庭から

途轍もない悲鳴が響き渡った。




「何が…。」


「先生の能力で、かなりの数の新入生達が

 捕えられたんです。」



そう言われれば…確かに血の匂いはしない。

無力化されたって事か。


だけど…何でこいつはどうやってこの情報を

知った?


そう思考を巡らせて俺は言った。




「能力か…?」


「はい、私の能力で…」


その先の言葉が紡がれるより前に俺は言った。




「能力の詳細は言わなくていい。ここは何処か

 考えろ。実力至上主義の学園なんだぞ…?

 俺達は将来戦う事になるかもしれないんだ。

 だから迂闊に自分の能力は明かすなよ。」


「わ、分かりました。」


「でもまぁ…バレる危険性もあった中で俺を、

 助けた事は感謝する。ありがとな、渚…。」



そんな俺の言葉に渚は俯いて黙りこくった。



「おい、どうした。」


そう言いながら手を伸ばすと、渚は。



「すいません、感謝される事が嬉しくて…。」


そんな事を言う渚は少し悲しそうで…俺は。



「……感謝はしてる、だけど感謝するのは多分

 これっきりだ。だから一々感謝程度の事で

 そんな悲しそうにすんな。」


そう言って、俺は渚の手を引きながらその言葉を紡いだ。



「行くぞ、さっき助けられたからな。今回の

 鬼ごっこ…最後までエスコートしてやる。」


そう言って俺は渚の手を引きながら走った。




_______鬼ごっこ中盤



俺達は絶賛教師達に追われていた。



「渚!もう少し早く走れるか!?」


「も、もう…これ、以上は!」


「無理そうだな!」


そう言って俺は渚を抱えた。



「しっかり掴まっとけよ!」


そう言って俺は地面が割れる程の力で地を

蹴り抜いた。


そのおかげか教師達はすぐに見えなくなった。


だけれど、俺達は最初に来た学園の中庭にまで

戻って来ていた。



…今は大体15時、鬼ごっこが始まってから大体

6時間か…。何処か安全な場所はないのか?

さっきからずっと教師達に追われっぱなしだ。


俺は大丈夫…だけど渚はそうもいかない…か。

もう渚の息は絶え絶え…抱えて走ってもいいが

それじゃ俺達2人が教師に捕まる可能性が高く

なるかも、しれない…。


そんな思考に陥っていたその瞬間、途轍もなく

濃密なプレッシャーを俺は感じ取った。



次の瞬間、目の前から1人の男がゆっくりと

歩いて来た。


その男は俯いていた…が、突然と俺の顔を見て

不敵な笑みを浮かべて…とんでもない力で地を蹴った…。



気付けば、目の前に拳が迫っていた。















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