第4話

それは、ある休日のことだった。

いつものように部屋でくつろいでいると、突然チャイムの音が鳴り響き、

来客を知らせる声が聞こえてきたため、慌てて玄関へ向かうと、そこには彼女が立っていた。

「こんにちは、遊びに来たよ」

笑顔で挨拶してくる彼女に戸惑いつつも中へ招き入れることにした。

リビングルームに移動したあと、とりあえず飲み物を用意するために台所へと向かったのだが、

その時にふと疑問が浮かんだため、思い切って聞いてみることにした。

なぜここに来たのかということを聞いたところ、意外な答えが返ってきたのである。

なんでも私の両親から許可をもらって来たらしいのだ。

いつの間にそんなことになっていたのだろうかと思いつつ、

詳しく話を聞いてみると、どうも数日前の出来事が原因のようだった。

その日は、両親が揃って外出していたため、家の中には私と彼女しかいなかった。

そのため、必然的に二人きりになってしまうわけだが、

だからといって何かあるわけでもなく、普通に過ごしていただけだったはずなのだが、

なぜか妙に落ち着かない気分になっていたことは確かだった。

そんな時、タイミングを見計らったかのように現れた彼女に迫られてしまったというわけだ。

要するに、そういう空気になってしまったということである。

こうなってしまってはもう諦めるしかなかった。

結局、流されるままに抱かれることになってしまったわけなのだが、

不思議と嫌な気持ちはしなかったどころか、

むしろ幸せな気分だったと言えるだろう。

その後も何度か同じようなことを繰り返し、

そのたびに快感に溺れていった結果、今ではすっかりハマってしまっている自分がいることに気づき、苦笑するしかなかった。

しかし、その一方で、不安を感じている部分もあったりするわけで、

いつか飽きられてしまうのではないかと考えると憂鬱な気分になることもあるのだが、

今はただ目の前の幸せに酔いしれることにすることにしようと思う。

さて、次はどんな風に楽しませてくれるのか楽しみだなぁ、

そんなことを考えながら待っている間に、自然と笑みが溢れ出てくるのだった。

そうして迎えた朝、目が覚めると隣に下着姿のまま眠っている彼女がいた。

昨夜のことを思い出して恥ずかしくなりつつも、起こさないように気をつけながら起き上がると、朝食の準備を始めることにした。


とは言っても簡単なものしか作れないのだけれど、

それでも喜んでくれる人がいるだけで嬉しいと思えるのだから不思議なものだ。

出来上がった料理をテーブルに並べていると、匂いに釣られたのか、

ゆっくりと起き上がった彼女が欠伸をしながら近づいてきた。

まだ眠そうな様子ではあるが、食欲はあるようで、

しっかりと完食してくれたのでホッと胸を撫で下ろす。

食事が終わると、食器を片付けた後、ソファに座って一息つくことにした。

テレビを見ながら談笑したり、ゲームをしたりして過ごしているうちに時間が経ち、

気がつけば夕方になっていた。

「そろそろ私は帰るね」

彼女がそう言うと、私は慌てて引き止めた。

このまま帰したくないという思いが強かったからだ。

もちろん、本気で引き留めようとしたわけではないけれど、

冗談半分で言ったつもりだったにもかかわらず、

まさか本当に泊まってくれるとは思わなかった。

そんなわけで、急遽決まったお泊まり会が始まったわけだけど、

特に何をするでもなく、のんびりとした時間を過ごしていただけで終わってしまった。

ただ一つだけ変わったことがあるとすれば、寝る時に同じベッドで寝たということだ。

シングルベッドに二人で寝るとなると、かなり密着することになるため、

ドキドキしてしまい、なかなか寝付けなかったが、不思議と嫌な気分にはならなかった。

むしろ、心地よい温もりに包まれているような安心感すら覚えるほどだった。

翌朝、目を覚ますと、目の前に彼女の顔があった。

どうやら先に起きていたようだ。

目が合った瞬間、ニコッと微笑んできたので、私もつられて笑顔になる。

その後は、朝食を済ませてから身支度を整え、駅まで見送りに行った。

帰り際、名残惜しそうにしていたが、

また会える日が来ることを信じて別れたのだった。

それからというもの、毎日のように彼女と連絡を取り合い、

会えない日には電話などで会話を楽しんだりしていたおかげで寂しさを感じることはなかった。

そんなある日、久々に会う約束をしていたので、

待ち合わせ場所に向かうと、既に到着していたようで、

こちらに気づいた彼女が駆け寄ってきた。

「久しぶり、会いたかったよ」

そう言いながら抱きついてきた彼女を抱きしめ返すと、

愛おしさが込み上げてきて胸がいっぱいになり、

涙が出そうになったが、なんとか堪えることができた。

それから、近くのカフェに入ってお茶をしながら、

最近の近況報告などをしていたのだが、途中で会話が途切れてしまったため、

なんとなく沈黙が続く時間が続いた。

そんな中、意を決して口を開くと、彼女は驚いた表情を浮かべた後、真剣な眼差しを向けてきた。

何を言われるのだろうと緊張しつつも、黙って待っていると、

「あのさ、もし良かったらなんだけど、一緒に暮らさない?」

予想していなかった言葉が飛び出してきたので、一瞬戸惑ったものの、すぐに理解することができた。

「でも、私達まだ学生だよ?」

「大丈夫、親の許可なら取ってるから安心していいよ」

自信満々に答える彼女の姿を見て、断る理由などなかった。

むしろ、願ってもない申し出だったため、二つ返事で了承することにした。

こうして、私たちは同棲することになったのである。

翌日、早速引っ越しの準備をするために、必要なものを買い揃えるために出かけることになった。

まずは、家具屋さんに行き、ベッドやテーブルなどの大きなものを購入してから、次に電化製品店に向かった。

冷蔵庫や洗濯機などは備え付けのものがあったので買わずに済んだが、

それ以外は何もない状態だったので、最低限必要な家電類を揃えておく必要があったからだ。

一通り買い揃え終わった頃には、すっかり日が暮れていたので、

最後にスーパーに立ち寄って食材を購入してから帰宅した。

帰宅後は、疲れた体を休めるため、お風呂に入った後に夕食を作り、

一緒に食べて過ごした後、早めに休むことにした。

翌朝、目を覚ましてみると、隣で寝ていたはずの彼女がいないことに気がついた。

どこに行ったんだろうと思いながらリビングに行くと、テーブルの上に置き手紙があることに気付いた。

読んでみると、買い物に行っているようだということが書かれていたので、

帰ってくるまでの間、のんびり待つことにした。

しばらくすると、帰ってきた彼女が紙袋を手に提げている姿が目に入った。

「ただいま、遅くなってごめんね」

と言いながら部屋に入ってきた彼女を出迎えると、持っていた荷物を受け取り、

中身を確認した後、収納場所へと片付けていく。

その様子を見ていた彼女が感心したような声を上げた。

「へぇー、結構綺麗に整理整頓されてるんだね、すごいじゃん」

褒められていることが嬉しかったこともあり、ついつい調子に乗ってしまい、

次々と説明していくうちに、いつの間にか話が脱線していき、

最終的にはただの自慢話に発展していったことに気づいて我に帰ると同時に恥ずかしくなってしまった。

その様子を微笑ましそうに見ていた彼女が口を開いた。

「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫だよ、

誰だって得意分野くらいあるものなんだから気にしないでいいんだよ」

そう言われたことで少し気が楽になったような気がした。

改めてお礼を言うと、どういたしましてと言って頭を撫でられたので、

なんだか子供扱いされているような気がして複雑な気持ちになったものの、

悪い気はしなかったので、しばらく大人しく撫でられることにした。

そうこうしているうちに、お腹が空いてきたので、お昼ご飯を作る準備を始めた。

今日はオムライスを作ることにしたので、材料を用意し、調理に取り掛かることにした。

手際よく進めていき、あっという間に完成したので、

二人分のお皿に分けて盛り付けると、テーブルに並べた。

いただきますの合図と共に食べ始めると、とても美味しくできたみたいで、

私と彼女は満足げな表情を浮かべていた。

食べ終わると、満腹感に浸りながらまったりとした時間を過ごしていると、

不意に眠気に襲われたので、少しだけ昼寝をすることに決めた。

横になって目を閉じると、意識が遠のいていき、深い眠りへと落ちていった。

目が覚めた時には、午後3時を過ぎていたので、おやつの時間だと思い、キッチンへ向かった。

冷蔵庫を開けて中を見てみると、卵と牛乳が残っていたので、

ちょうどいい機会だと思った私は、お菓子作りに挑戦することにした。

レシピを見ながら作っている最中、上手くできるか不安だったが、

何とか完成させることができたのでホッとした。

味見のために一つ食べてみたところ、我ながら上出来だと思うほどだった。

せっかくなので、もう一つ作ってみることにして、

再度挑戦してみたところ、こちらも無事に焼き上がったので、

皿に盛って食卓へ運ぶことにした。

準備が整う頃、ちょうど彼女が戻ってきたので、一緒に食べることにする。

一口食べた瞬間に、今まで味わったことのない美味しさを感じたせいか、

二人とも無言のまま夢中で食べていたせいで、あっという間に平らげてしまっていた。

ごちそうさまでしたと言って手を合わせると、

今度はデザートタイムに突入し、残った分も残さず平らげてしまった。

お腹いっぱいになったところで、ソファにもたれかかり、

寛ぎながら雑談をしていると、ふいに彼女が立ち上がり、

どこかへ行ってしまったかと思うと、数分後に戻ってきた時には手に箱を持っていた。

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