第15話
「まぁでも、
「そうだな」
陽気に笑う翔馬に、美風も微笑んで頷く。中学からずっと一緒の美風らもかなり珍しい気がしたが、それも美風にとっては特段気にも留めないことだった。翔馬とは馬が合って楽しい。それが何よりも大事なことだからだ。
「なぁ美風、今日バイトない日だろ? 久しぶりに映画観に行かねぇ? いまアクション系やってただろ」
「あー……ごめん。今日はちょっと予定があってさ」
映画に行けたらどんなに良かったか。でも今日は寄る所もあり、とにかく早く帰らなければならない。なにせ悪魔が待っているから。
残念な思いと翔馬に悪くて美風はこっそりため息を吐いた。
「……そっか。ま、残念だけど、まだ公開したばっかのやつだし、また次予定合う時に行こう」
「あぁ、悪いな」
翔馬とはバイトも一緒だ。一人だと危ないだとかでわざわざ一緒に入ってくれたが、こういう所が本当に過保護だった。女じゃないし、華奢な見た目をしているが喧嘩も強い方だ。それなのにそこは頑固で翔馬は譲らなかった。結局は一緒にバイトをして困ることはないからと半ば諦める形で了承したのだった。
一日の講義を終えると美風は脇目も振らずに、とある店に向かった。
「いらっしゃいませ~」
派手な髪色に、耳にピアスをジャラジャラ着けた男性店員が間延びした声で美風を迎えた。店内には数多くの衣料に服飾や靴などが所狭しと並んでいる。
ここは駅近の古着屋だ。そう、美風はアリソンの服を買いに来た。アリソンの身長は恐らく百九十はゆうに超えている。日本のショップでは百九十センチの男性が着られる服はほぼ無い。あっても値段が高いという難点がある。だけど古着屋なら海外サイズのメンズ物なども安く手に入りやすい。
何点か手に取りレジに持っていく。店員の目はいかにも〝あんたじゃブカブカ過ぎるぞ〟と言いたげに美風をじろじろと見ている。いいから早く会計を済ませてくれと美風はスルーを決め込んだ。
「ありがと~ございました~」
店員の声を背中に足早に店を出ると、次はスーパーに向かった。
いつもかなり節約をしてチラシなど見てから買い物をするが、今日はとにかく早く帰りたい気持ちが勝り、手当り次第に食料品をカゴに入れていった。
スーパーを出るとほぼ駆け足気味に、いつもの公園を抜けていく。
今日も静かだ。やっぱりアリソンの影響なのだろうと、少しの寂しさを感じながら美風はアパートを目指した。
「ただいまぁ」
鍵を開けて声を掛けるが、中は静かだ。人の気配ならぬ悪魔の気配が感じられなかった。
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