第5話 地域
「私は海人と空を一人で育ててきているの。お父さんは離婚したから居ない、こんなことは本田さんは海人から聞いているわよね。私は二人の為に一生懸命、仕事を頑張ってるの」
幼い兄弟の母親の言葉に対してオレは傾聴に徹する。
「そうですね、頑張っていますね」
「そうよ。私は来る日も来る日も仕事をこなす。確かに家庭のことまで、手が回らなかった、のは認めるわ。びっくりしたのよ。海人が本田さんと言う見ず知らずの人から味方になって貰っているということに。私も日々に限界を感じていたわ。きっと海人もそうよ」
「大変でしたね、辛かったですね」
「海人から本田さんの話を聞いて、私は勘違いをしていたようね。ありがとうございます」
「いえいえ。話してくださってありがとうございます」
オレの傾聴が終わると、海人くんと空くんの母親は笑顔になる。
「ママ!」
「お母さん……」
母親である佐藤みどりさんに海人くんと空くんは駆け寄る。三人とも笑顔いっぱいだ。
「みんな、辛い時はここにいつでもおいで?」
「そうだな」
店のおじちゃんとおばちゃんも笑みを浮かべてそう言った。
地域の繋がり。
オレも笑顔がこぼれる。
間違っていなかった。ゲートキーパーとして、ヤングケアラーの海人くんに話しかけて良かった。オレはちょっと目がうるっとなる。
親子の笑顔。オレはゲートキーパー。地域の繋がり。
親子の笑顔 野口マッハ剛(ごう) @nogutigo
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