第5話 奴隷商人との初戦と失われた命
「奴隷商人が……こっちに向かってる!」
村に駆け込んだ少年の声が響く中、村人たちは不安げな表情で騒ぎ始めた。デバッグはすぐに少年に駆け寄り、落ち着いた声で尋ねた。
「どのくらいの距離だ? 何人いた?」
少年は息を整えながら答えた。
「ここから数キロ先……馬車が3台と武装した奴らが15人くらい……」
デバッグはその情報を聞くとすぐに行動を開始した。
「みんな! 防衛計画を実行するぞ!」
彼の声が響くと、ロアやガルズ、訓練を受けた若者たちが次々と立ち上がり、配置についた。村人たちは動揺しながらも、デバッグの冷静な指示に従い始めた。
デバッグは村の入口付近に立ち、地図を広げながら最終確認を行った。
「落とし穴の位置はここだ。敵が最初に足を踏み入れる場所に罠を集中させる。」
ガルズが力強く頷いた。
「俺が前線で奴らを引きつける。お前はその間に全体を指揮してくれ。」
「頼むぞ、ガルズ。」
ロアは村の若者たちをまとめ、木槍を手にして防衛線の後方で待機した。
「俺たちはどうする?」ロアが尋ねる。
「敵が罠にかかったら、一気に叩く。そのために位置をしっかり守れ。」
デバッグの言葉に、ロアは真剣な表情で頷いた。
夜明け前、奴隷商人たちが村に迫ってきた。彼らは松明を掲げ、粗雑な笑い声を上げながら進んでくる。
「やれやれ、こんな小さな村からでも奴隷を集めれば、結構な金になるからな!」
リーダー格の男が叫びながら馬に乗り、村の入口に向かってきた。その瞬間――
「罠だ!」
馬車の一台が落とし穴に落ち、突き刺した木の杭に乗員が倒れた。続けざまに、もう一台の馬車が横転し、奴隷商人たちが混乱に陥った。
「なんだ、これは!」
その隙を突いて、ガルズが飛び出し、大きな剣を振りかざした。
「ここは渡さない!」
彼の剣は素早く敵の武器を弾き、奴隷商人たちに動揺を与えた。
しかし、奴隷商人のリーダーが叫んだ。
「柵を燃やせ! 奴らを追い詰めろ!」
松明が柵に投げ込まれ、木製の柵が激しく燃え上がった。その光景を見たエナが、心配そうに近づいてきた。
「お兄ちゃん、大丈夫なの……?」
その瞬間、風に煽られた火がエナの衣服に燃え移った。
「エナ! 離れろ!」
「きゃあーーーー!お、お兄ちゃーーん」
デバッグが叫び、全速力で駆け寄るも、エナの小さな体は炎に包まれてしまった。ガルズとロアが手伝い、何とかエナを救い出したものの、彼女の体は酷い火傷を負っていた。
「エナ、大丈夫か!?」
ロアが声を荒げながらエナを抱き上げたが、彼女は弱々しくデバッグを見つめて微笑んだ。
「お兄ちゃん、みんな……村を守ってね……」
その言葉を最後に、エナは意識を失った。
戦闘が終わり、奴隷商人たちが撤退した後、デバッグたちはエナの体を囲んでいた。彼女の火傷は深刻で、この村には治療の術がなかった。
「エナ……ごめん……守れなかった……」
デバッグはエナの手を握りしめ、声を詰まらせた。ロアは涙をこらえきれずに叫んだ。
「奴らを……許さない……!」
ガルズも拳を握りしめながら言った。
「こんなことを繰り返させちゃいけない……!」
デバッグは星空を見上げながら決意を固めた。
「守るだけじゃダメだ。俺たちはもっと強くならなきゃいけない。」
エナの墓を村の中央に建て、村人全員で彼女の冥福を祈った後、デバッグは静かに立ち上がった。
「これからは、村を守るだけじゃなく、外の脅威を断ち切るために動く。」
彼の瞳には涙と共に鋭い決意が宿っていた。
「エナ、見ていてくれ。俺たちは必ず、この村を安全な場所にする。」
(第5話 完)
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