第4話 新たな仲間?
畑作りの成功は、村にとって大きな一歩だった。井戸から安定した水が供給され、作物が育ち始めたことで、人々の間に少しずつ希望が芽生えていた。しかし、デバッグの視線はその先を見据えていた。
「食料があれば、人々は生き延びられる。でも、それだけじゃ守れない。」
村の外れに立ちながら、彼は大陸全土に広がる過酷な現実を思い出していた。奴隷商人や略奪者が力を持ち、弱者を食い物にするこの地では、単に生きるだけでは不十分だった。
「守る力が必要だ。この村を、本当に安全な場所にするためには……」
そんなある日、デバッグは村の近くで見知らぬ青年に出会った。彼は鋭い目つきと筋肉質な体格を持ち、どこか疲れ切った様子だった。
「おい、お前は誰だ?」
デバッグが声をかけると、青年は警戒しつつも答えた。
「俺はガルズ。近くの村が奴隷商人に襲われて、そこから逃げてきた者だ。」
「奴隷商人が?」
ガルズの言葉に、デバッグの表情が引き締まった。
「そうだ。奴らは村を焼き払い、生き残った者を捕まえて連れ去った。俺も危うく奴隷になるところだった。」
その言葉にデバッグは状況を理解した。この地域を脅かしている奴隷商人の動きが、ますます活発になっているのだ。
「お前、戦えるのか?」
デバッグの問いに、ガルズは不敵な笑みを浮かべた。
「剣の腕には自信がある。だが今は、守る力が欲しい。」
その言葉を聞いたデバッグは彼を村に迎え入れることに決めた。
「いいだろう。俺たちと一緒に、この村を守る仕組みを作るんだ。」
その夜、デバッグは村人たちを集めて会議を開いた。
「奴隷商人が次に来るのは、この村かもしれない。」
その言葉に、村人たちは不安そうな表情を浮かべた。
「抵抗したらどうなる? 奴らは武器を持ってるんだぞ!」
「戦ったら余計に酷い目に遭うだけだ……」
そんな声が飛び交う中、デバッグは冷静に話を続けた。
「確かに、今のままでは勝ち目はない。でも、戦う力をつければ状況は変えられる。」
彼は村の地図を広げ、周囲の地形を指し示した。
「この村は丘に囲まれている。この地形を活かして、防衛線を作るんだ。具体的には……」
彼は防衛柵の設置、村の入り口に罠を仕掛ける案、さらに村人たちへの戦闘訓練の計画を説明した。
「誰が訓練をするんだ?」
「俺が教える。ガルズも力を貸してくれる。」
デバッグの言葉に、ガルズは頷いた。
「面白い。俺もこの村に恩を返したいと思ってたところだ。」
こうして、村全体で防衛計画を進めることが決まった。
翌日から、デバッグたちは防衛線の設置作業を開始した。
「ここに木を並べて柵を作るんだ。」
デバッグが指示を出し、村人たちは木を切り出し始めた。ガルズとロアは重い木材を運び、エナとリクも小さな手で作業を手伝った。
「これ、私にもできる?」
エナが柵の組み立てを見ながら尋ねると、デバッグは笑顔で答えた。
「もちろんだ。お前は細かい作業が得意だから、この縄をしっかり結んでくれ。」
エナは嬉しそうに頷き、リクも「僕もやる!」と元気よく声を上げた。
さらに、村の入口には罠を仕掛ける作業が行われた。
「ここに穴を掘って、尖った木を埋めるんだ。これで敵の進軍を遅らせられる。」
デバッグの説明を聞いたガルズは感心した様子で言った。
「お前、ただの子どもじゃないな。その頭、どこで鍛えたんだ?」
「本を読んだだけさ。」
デバッグは前世の記憶を隠しながら作業を進めた。
同時に、村の若者たちへの戦闘訓練も始まった。デバッグとガルズは棒を使った防御や集団での陣形を教え、村人たちは少しずつ戦う術を学んでいった。
「デバッグ! これで俺も奴隷商人を倒せるか?」
若者の一人が棒を振りながら聞くと、デバッグは冷静に答えた。
「倒すのはお前一人じゃ無理だ。でも、みんなで連携すれば勝てる。」
その言葉に若者たちは真剣な表情で頷き、練習に励んだ。
数週間後、防衛線が完成した。村を囲む木製の柵と落とし穴、さらに村人たちの訓練により、村は以前よりも格段に安全な場所となった。
「これで、この村も少しは守れるな。」ロアが満足そうに言った。
「まだ始まりに過ぎないさ。これからもっと強くなる必要がある。」
デバッグはそう言いながら、防衛線の先に広がる荒野を見つめた。
その夜、村に一人の少年が駆け込んできた。息を切らしながら、少年は叫んだ。
「奴隷商人が……こっちに向かってる!」
村人たちが騒然となる中、デバッグは即座に行動を開始した。
「みんな、準備をしろ! 防衛計画を実行するぞ!」
ガルズとロアが村人たちを集め、デバッグの指示のもとで配置についた。
「この村は渡さない。絶対に守り抜く。」
星空の下、デバッグの瞳には鋭い決意が宿っていた。
(第4話 完)
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