第2話

 その夏の間、私は、毎日その風鈴を眺めながら、風の妖精シルフと水の妖精ニンフの戯れのような、幻想的なファンタジー空間に遊弋している気分を楽しんでいたのだ。


 秋になるころ、ふと不注意で、水洗いした大事な風鈴を取り落して、御影石の上がり框の上でその宝玉のような結晶は、派手な音を立てて砕け散った。


… …


 ふと気が付くと、私は古道具屋の店先にいた。

 ミンミンゼミが鳴いている、あの茹だるような真夏の昼下がりだった。


 並んだ美麗な風鈴たちは、相変わらず繊細な音色で、涼しげな音楽を奏でていた。


「いったい…?」


 夢でも見ていたのだろうか? 風鈴の音に、催眠術のような不可思議な効果が隠されてたのだろうか?

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