第3話 悪役令嬢の過去(2)

「ここが俺の部屋だ。お前は部屋があまりないし、、、、とりあえず同じ部屋にいていいぞ。」

「わかりました。」

私はそう答えた。

そして、

「私を鎖で縛らなくていいんですか?あるいは、私は家事洗濯をしなくていいんでしょうか?」

と、気になっていたことを尋ねた。

「なんでそんなに物騒なことを言うんだ?」

「いえ、今までの人がそうでしたので。何も、しなくていいんでしょうか?」

「ああ、なんもしなくていいんだぞ。まあ、できればこの本に載っている魔術について学んでみてほしいが。」

そう言って、彼は、私に魔導書のようなものを渡した。

「わかりました。」

そう言って、私はその魔導書を見てみることにした。

それから、平凡な日々が続いた。

一年くらいたったかもしれなかったある日、彼は私に、

「何か欲しいものはあるか?」

と、聞いた。

「欲しいもの_ですか?」

「ああ。」

そんなもの、私に聞いてきたものは今まで誰もいなかった気がする。

どうしてそんなことを聞くのだろうか。

「なぜ、そんなことを聞くのですか?もしかして、私が欲しいと言ったものを一生手に入らないようにする___とか?」

「ねえよ、そんなこと!どうしてその発想になった?そんなことして俺に何の得があるってんだよ。ったく、普通に欲しいものがあったらあげようと思って聞いてんだよ。」

「そうなのですね。ありがとうございます。」

「で、何かほしいものある?」

「そうですね、では、たしか昨年、亡くなった私の同居人であるの死体が欲しいです。」

「何でだ?」

「ちょっと試したいことがあるんです。」

「______、いいぞ。」

その魔術師は、かなり複雑な表情で、しばらく考え込んでいたが、くれると言ってくれた。正直、ダメ元だったのだが。

次の瞬間、何もないところから、その魔術師は、を出した。

「今、出したのは魔術ですか?」

「ああ、そんなとこだ。ほい、やる。」

そう言って、魔術師は、彼を私に投げた。

「ありがとうございます。」

「いったい何をするつもりなんだ?」

「魔法陣を書きたいのですが、ここに書いていいですか?」

「ここはだめだ。実験室にかけ。」

「それはどこですか?」

「こっちだ、ついてこい。」

私は、彼についていき、実験室で、魔法陣を書いた。

「おい、、、それ、死者蘇生の魔法陣じゃないだろうな?」

「そうですけど?」

「おいなんで、生き返らそうとしているんだよ。」

「ちょっと、試してみたいことがあるので。」

「生き返らせてもちゃんと自分で殺せよ。」

「わかりました。自分で責任はとります。」

私はそう言うと、魔法陣に、魔力を本に書いてあった通りに流し込んでみた。

すると、魔法陣が光り、彼は生き返った。

「ああ、おはよう。君が、、生き返らせてくれたんだね。」

彼はそう言って、私に抱き着いてきた。

私は、ポケットから、彼に見えないようにナイフを取り出し、彼を刺した。

「ぐはっ、、?」

どうして、?どうしてそんなことをするんだ?といった不思議そうな顔で彼はこちらを見ている。

「ふふっ、どんないい音を聞かせてくれるのかしら。」

私はそう言って、

ぐしゃり、ぐしゃり、ぐしゃり、と、彼を切り刻んでいった。

決して殺さぬように、じわじわ、じわじわと痛めつけた。

その様子を見ていた魔術師は、心底面白そうな顔でこちらを見つめていた。

必死に笑いをこらえている、といった様子だった。

「あなたは偽善者。私を助けたふりをして自分の偽善心を満たし、それから自分の魔術への好奇心が抑えられなくなって私を実験に使おうとした。別にそのこと自体はいいのよ、弱いものは強いものに利用されるのが当たり前なのだから。でもね、今、この場において、強いのは私。弱いのはあなた。だから、私があなたを利用するの。」

そこで私はいったん言葉を切り、

「あなたが私を利用したように。」

と、付け加えた。

ぐしゃ、ぐしゃ、、ぐしゃ、という血肉が裂けていく音、う、うぁ、、という声になっていない苦し気な声、、そのすべてが私からしたら幸福だった。

すごく、すごく、愉快な音だった。

まるで、美しいオルゴールの音色を聞いているかのような感覚だった。

「ふふっ、私ね、あなたのこと、嫌いだったけど、今は好き。だって、こんなにもいい音を聞かせてくれるんだもの。」

私はそう言って笑った。

ざくっ、ざくっ、ざくっ、切れ味の悪いさびた包丁で、その血肉を裂いていく。

「う、う、ぁあぁ、」

気が付いたら、かなり血まみれになっていた。

「あらあら、こんなに重症になっちゃったわ。回復させなくちゃ。」

そう言って、私は回復させる魔術の魔法陣を書いて、彼の傷をすべて治す。

そして、再び、ざくっ、ざくっ、ざくっと、彼の血肉を裂く。

何度も、何度も、を繰り返した。

そしてそんなあるとき、彼は、

「う、あ、もう、もう、やめてくれ。君の両親を殺したことも謝るし、君の姉を病院送りにしたのも、謝るから。」

と、言った。

どうやら話を聞いてみると、幼いころに、私の両親を殺害し、姉を病院送りの重傷にさせたのは、彼がわざと意図的に起こした事故のせいなのだという。

話を聞き終わると私は、

「そうなの。でも、そんなことどうでもいい。別に復讐のためにあなたを傷つけているのではないのだもの。とっても、とってもいい音を聞かせてくれるから、引き裂いているの。ふふっ。がっかりした?」

と、言って、再び彼を引き裂き始めた。

その場に、とても、とてもいい音が響く、食事などの時間になると、かれを鎖につなぎ、その場を去り、厳重にその部屋の鍵をかける。そんな日々が何日か続いた。

そんなある日、魔術師は、

「あれ、俺、お前に名前名乗ってたっけ?」

と、聞いてきた。

「そういえば聞いていませんね。私も名乗っていませんでしたし。」

「そうか。じゃあ今言うか、、今更だけど、俺の名前は、ピリュフだ。職業は、知っての通り、魔術師だ。これからもよろしくな。」

「ええ、よろしくお願いします。私の名前は真雪。この名前は、死んだ両親がつけてくれた名前です。」

「そうなのか。真雪。お前にぴったりな名前だな。雪みたいに真っ白な状態で、周りのものをじわじわとすぐに吸い込んで吸収していく。そして冷たい。温めたら消えてしまいそう。本当にお前にぴったりな名前だ。」

「それは___、ほめているんですか?」

「ああ、ほめているんだよ。魔術師として、そういう性格は大切だ。」

「そうなんですね。」

ピリュフは、笑って、私の頭を撫でた。

それから月日は流れ、私は記憶を持ったまま転生する術を覚えた。

私はその術を使い、何度も何度も同じ世界で転生を繰り返した。

そして、その過程で、その乙女ゲームもプレイした。

その乙女ゲームをプレイした後、学校に行く途中で私は死に、転生した。

その時は急な死だったので、転生の魔術は使えなかった。

なので、違う世界に転生してしまったのだ。

異世界に。

まあ転生するときに、なぜだかチートスキルもらえたし、今無双的なことできてるし、異世界に転生してよかったと思ってはいるのだが。

今世の私は、13歳。ゲームがスタートするのは、私が15歳になってからだから、まだ少しは余裕がある。

今のうちに、攻略対象と友達になっておかなければならない。

そして、濡れ衣で断罪されるときに、絶対にその人はそんなことをしない、という風に民衆に思われるような信頼も勝ち得ていなければならないのだ。

つまり、私が魔王を倒したのは、これが目的でもあった。

さあやってこい、死亡フラグ。

絶対に濡れ衣で断罪とか回避してやるから。




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混沌と忘却の物語 藍無 @270

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