第4話 憧れの人
私は独身で親元に住んでいて近所のスーパーでレジのパートをしている。そんな私も50歳と絶望的な年齢になった。結婚なんて望んでいない。私の市場価値は最底辺だから。それでも私は女なのだと感じさせてくれる瞬間がある。いつも私のレジに並んでくれる、あの人。毎回酎ハイとお弁当を買っていくあの人の名前を私は知らない。白髪の入ったあの人は多分独身だと買い物内容を見てわかる。でも、うちのスーパーは個人的な会話は禁止。だけど私は個人的にあの人と仲良くなりたい。しかし、業務内容を逸脱して首にされるのはもっときつい。いくら低収入の私だって生活がある。せめて名前くらいは聞きたい。欲張って連絡先くらい聞きたい。でもそれは就業規約に反してしまうし、解雇されたって文句は言えない。私は今でもあの人が話しかけてくるのを待っている。いつも買う缶酎ハイの銘柄も覚えているのに。私はやるせない気持ちで今日もレジに立つ。
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