第6話 お披露目会本番(7歳)②
「すごかったではないですか、アマデウス様!あんなに達者な演奏をお披露目で聴いたのは初めてだって母上も父上も仰っていました!!」
「あ、ありがとうございます…?」
会が終わった後は自由解散のようだったが、まだ正解がわからない俺にリーベルトが興奮しながら話しかけてきてくれた。助かる。
遠巻きにチラチラ見られているのが気になるが、リーベルトの笑顔のおかげでとりあえずとんでもないマナー違反はしていないとわかった。よかった。
リーベルトによく似た美女が後ろからおもむろに現れ、俺に話しかけてきた。
「普通は身分が上なほど家庭教師の質が上がるので上手いものですが、男爵家の身分でここまでお上手な例は寡聞にして存じ上げません。お見事でした、アマデウス殿。わたくしはリリアーヌ・グロリアと申します、お見知り置きを。リーベルトと親しくして頂けたら嬉しいですわ」
「グロリア子爵夫人でいらっしゃいますね、改めまして、アマデウス・ロッソと申します。こちらこそ仲良くして頂きたいです!」
童顔だから若く見えるし可愛らし過ぎる奥様だ。優しそうだし羨ましい。リーベルトには一つ下の妹もいるらしく、折を見てお茶会に招待したいと言われて飛び上がりそうに嬉しかった。友達の家に遊びに行く経験、前世でも二回くらいしかなかった!楽しみ!
二人と少し談笑した後お別れして、俺も帰るか…と講堂を出ようとしたところ、美少年に声をかけられた。どこの美少年だ?美少年ばっかだからな。
アルフレド様の脇にいた侯爵家令息美少年だった。演奏の方のトリだった彼だ。顔を赤くして睨みつけてくる。
「貴様、演奏だけ上手いからって図に乗るなよ。上の者達に恥をかかせるような真似をして…社交界で穏便に過ごせると思うな」
………
なんですと!?
なるほど、そういう見方もあるのか…
マナー違反はしていないが、俺の後に演奏を披露した子供達のプライドは傷つけてしまった訳だ。リーベルトのように剣舞を披露した子や家にはダメージはないけれど、演奏を選んだ家の方々には『男爵家のくせにナマイキだ!』といった感情を持たれてしまった…?
「—――おい、ハイライン。聞こえたぞ、情けない真似をするな」
「!!ア、アルフレド様…!!」
アルフレド様はスッ… とどこからともなく侯爵家令息の横に現れた。少し小柄だからか全然気付かなかった。こんなに目立つ見た目してるのに。剣舞の動きも凄かったし、足運びが素早いのか?
「お前は下の者に持ち上げてもらって優れた成績を残したいと思うのか?上に立つ者として、そんな心掛けでいるのは恥ずべき事だぞ」
「は、はい。申し訳ありません…」
――――ま、…ま…まぶし~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!
ええ…ウソ…… 大天使、中身まで高貴…!!??!!
高飛車だけど芯があるタイプ!漫画とかで超人気出るタイプだァ~~ッ!!俺も大好き!!!ドンドコドンドコ!!
アルフレド様が美イケショタ過ぎて泣きそうになってプルプル震えていると、彼は慈しみを持った視線を俺に投げた。
「フン、心配するな。お前をつまはじきにするような真似は私がさせない。見事な演奏だったぞ、アマデウス。また会おう」
脳内で太鼓を叩き鳴らしていただけで心配して泣きそうになってた訳じゃないけど、感動したので「はいッッッ!!!ありがとうございます!!」と良い返事をした。
「いかがでしたか、アマデウス様…?」
待機していた少し心配そうなアンヘンに衒いの無い笑顔を返すとホッとしていた。
「上手くいきました!多分!」
「多分ですか…?」
詳しい話は帰りにするよ、と言って俺達は馬車に乗り込み、帰路についた。
そんなこんなで数日後。
ロッソ家に『次男殿をスカルラット伯爵家の養子として迎えたい』という申し出が来た。
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