恋愛相談から始まる魔女拷問〜偽の媚薬で恋の後押しをしてやろうと思ったら、自分の拷問道具になってしまった魔女の話〜

こふる/すずきこふる

恋愛相談から始まる魔女拷問


 室内に広がる花の甘い香り。それは先日、サリーが友人に渡した媚薬と同じもの。

 その事実に口に含むまで気付かなかったサリーは、はっとして顔を上げる。


 目の前に座る友人バルテスが真っすぐに自分を見つめていた。


「どうだ、サリー? オレのことを好きになったか?」

(ああ、どうしよう……! まさか、バルテスが私に媚薬を盛るだなんて……⁉)


 大きく脈打つ鼓動をどうにか落ち着かせようとするが、今のサリーにはどうにもならなかった。


(ごめんなさい、バルテス……実はこれ、ただの紅茶の茶葉なのっ!)


 ◇


 遡ること一週間前。

 恋愛相談専門の魔女として活動しているサリーが、十年来の友人、バルテスとお茶をしていた時のこと。


「これは友人の話なんだが……」


 そんなバルテスの言葉から始まったのは、なんと恋愛相談だった。


 彼とは幼い頃に知り合い、一度家の都合でバルテスは都会に引っ越してしまった。

 再会したのはその十年後。サリーが王都で恋愛相談専門の魔女として活動を始め、定期監査にやって来た騎士の中に彼がいたのである。


 それ以来、バルテスとたびたびお茶や食事をしているが、恋愛相談をされたのは初めてのことだった。


(友人の話って……それ絶対に自分の話でしょ!)

「彼女とは幾分付き合いが長くてな。どうもお茶や食事に誘っても、いまいち脈があるのか分からないらしいんだ。友人はもしかしてキープされてるんじゃって怪しんでいるみたいでさ」

(いやいやいや! アンタの顔でキープはないでしょ⁉)


 幼馴染の欲目なしで、バルテスは顔がいい。


 さらさらの黒髪、アイスブルーの瞳は切れ長で冷たい印象を与えるが、とても澄んだ色をしている。男らしい精悍な顔立ちも相まって、多くの女性がバルテスを一目見ようと騎士団の公開訓練に押し寄せるらしい。


 サリーが彼の隣を歩く時も、すれ違う女性からの嫉妬の視線が突き刺さるほどだった。


 おまけに騎士は公務員である。領地はもらえないが、任命されたと同時に一代限りの爵位を与えられる。賃金も安定しており、戦う職業であるため、男の子がなりたい職業ランキング、そして結婚したい相手の職業ランキング一位の人気職。それが騎士だった。


 そんなバルテスをキープにするなんて、一体どんな女だ。


「さすがにキープはないんじゃない?」

「そうか? 会う度に手土産も用意してるから、自分に貢いでくれる都合のいい男だと思ってる可能性もあるだろう?」

「う~~ん。どうかなぁ……? 相手はそんな派手な人なの?」

「派手……ではないな。相手のことは、自分のことだと思って考えてくれ」

「そっか~。私と同じか。そうなると、あまり難しい話ではないと思うんだよねぇ」


 毎回手土産を持って現れる異性がいたら、そりゃ自分に好意があると分かるはずだ。もし、そんなことも分からない女だったら、きっととんでもない鈍感だろう。


「普通、何とも思ってない相手と食事とかお茶しないと思うんだよね。デートもしてるんでしょ?」

「ああ、街によく買い物に行ってる……サリー、今日持ってきたお菓子はどうだ?」

「すごい美味しい。いつもお菓子ありがとう!」

「…………どういたしまして」


 なぜか抑揚のない言葉で返されたのが気になったが、サリーはひとまずバルテスの恋の相手に集中する。


(その子、バルテスから告白されるのを待ってるとかじゃないの?)


 これだけバルテスにアプローチをかけられているのだ。女の子としては男の子の方から告白されたいに決まっている。

 異性から告白されるということだけでも、女性は憧れを抱くし、そこから相手を意識することだってある。


「バルテス、そのお友達は自分から告白しないの?」

「………………」


 そう訊ねると、バルテスは苦々しい表情を浮かべた。


「言ったろ? 相手は長い付き合いで、今の関係性が壊れるならいっそうこのままがいいと思っているんだよ」

「なるほどね……確かに、告白して友達じゃなくなったらイヤだもんね」


 言葉では同意するが、サリーはただ恋に臆病になっているのではないかと推測する。


(ここは幼馴染として、バルテスの背中を押してあげなくちゃ!)


 今、バルテスに必要なのはきっかけだ。

 この恋愛相談専門の魔女、サリーが幼馴染の為に一肌脱ごうではないか。


「バルテス……私がいいものを作ってきてあげる」

「は? いいもの?」


 ぽかんとするバルテスを置いて、サリーは奥にある調合部屋へ向かった。


 そこで手に取ったのは、サリーが愛飲している紅茶の茶葉である。そこにいくつかブレンドをして袋に入れ換えるとバルテスの下へ戻った。


「これをアンタに預けるわ」

「……なんだそれ?」


 怪訝な顔をしながらも受け取ったバルテスに向かって、サリーは答えた。


「これは私特製の媚薬よ!」

「………………は?」


 声を低くして聞き返したバルテスが、眉間に皺を寄せる。


 騎士は主に警備だけでなく、法令違反をした魔女や魔術師を捕まえる役割を持つ。

 魔女や魔術師が作る薬の販売はルールが定められており、相手の思考を支配するような薬は法令に反する。

 特に媚薬は摘発される例が多く、扱いには十分に気を付けるものだった。


「媚薬ってお前……それ違法じゃ……」

「いいえ! これはちゃんと合法よ! 精神支配も後遺症もないし、依存症もないわ! ただこれを飲むと、ちょっと胸がどきどきしちゃって、恋をしたような感覚になるだけ! 巷で売ってる栄養ドリンクやお酒とそんな大差ないわ!」


 サリーが媚薬といったそれは、ただのブレンドティーだ。実際のところ、説明したような動悸を引き起こす副作用はない。

 初めてブレンドしたが、主な茶葉は自分が好きなものだ。甘い香りがするし、口当たりもすっきりしていて紅茶を飲み慣れていない人も飲みやすいだろう。


 今もなお訝し気に袋を凝視しているバルテスは、ため息交じりに口を開いた。


「は、はぁ……これを使ってどうしろと?」

「これを飲んだあとに相手を褒めたり、好意を伝えたりするのよ! そうしたら、胸がどきどきしちゃって相手はそのお友達を意識するに違いないわ! きっと『実は私も好き』とか言ってくれるよ!」

「…………そんな上手くいくものか?」

「私は魔女よ! 信じて!」


 呆れ口調のバルテスに向かってサリーが力強くそう答えると、彼は低く唸るように悩んだあと、短く「分かった」と頷いた。


「友人にコイツを渡してみるよ。相談に乗ってくれてありがとうな」

「いえいえ! 楽しい時間だったわ!」


 バルテスとのお茶の時間も終わり、彼を見送った後、サリーは感慨深い感情になった。


「バルテスが恋か~……そうだよね。もう成人男性だもんね」


 彼も好きな人ができたり、結婚を考えたりする年頃。何もおかしいことはない。

 しかし、サリーの胸に寂しさが過った。


「告白が上手くいった後も、会いに来てくれるのかな……いやいやいや! 彼女持ちの男が、友達とはいえ他の女と会っちゃダメでしょ! 背中を押したからには、ちゃんと応援しなくちゃ!」


 サリーは気合入れに自分の頬を叩き、大人しくバルテスの報告を待つことに決めたのだった。


 そして今日。バルテスがいつも通りに手土産を持ってサリーの店に訪れた。


「サリー、今日はお菓子の他に茶葉を持ってきたから、オレが淹れてやるよ」

「本当? 楽しみ~! 渋いお茶は出さないでよね?」

「ああ……とびっきり美味いヤツを淹れてきてやるよ」


 そう言って彼はキッチンに行き、ポットを持って戻って来た。

 熱湯が注がれたティーポットからは甘い花の香りが漂い始め、サリーの好みな香りにうっとりする。


「あら、すごい良い香りね。私、これ好きかも」

「そうか。なら、良かった」


 砂時計の砂が全て落ち、彼はカップに紅茶を注いだ。

 熱々の湯気と共に漂う花の香りは、普段自分が愛飲している紅茶に似ていた。


「そういえば、先週話した恋愛相談のことなんだが……」

「え、もしかして、あのお友達の話⁉」


 聞きたかった話題を彼から振ってくれて、サリーは思わず声を弾ませてしまう。


「どうだったの? 私があげた媚薬使ってくれた?」

「そう興奮するな。これでも飲んで落ち着け」


 そう言って差し出された紅茶を、サリーは何の躊躇いもなく口に運ぶ。


(…………ん?)


 香りはやや違ったものの、甘い花の風味と口当たりは普段飲んでいる紅茶を変わらない。

 もしかして、バルテスが店員に頼んでブレンドしてもらったものだろうか。


 不思議だなと思いながら、紅茶を味わっているとバルテスが静かに言った。


「……実は、先週お前に話した話は自分の話でさ」

「え? ああ、そうなの?」


 察していた事柄だったので特に驚きもせずに頷くと、バルテスはさらにこう言った。


「ああ。それでその好きな人っていうのは、お前のことなんだ。お前が飲んだ紅茶も、先週オレに渡したものだ」

「⁉」


 サリーははっとして顔を上げる。

 すると、バルテスがいつになく真剣な顔でサリーを見つめていた。


「どうだ、サリー。オレのこと好きになったか?」


 そう言って、微笑むバルテスにサリーはひどく動揺する。


(ああ、どうしよう……! まさか、バルテスが私に媚薬を盛るだなんて……⁉ ごめんなさい、バルテス……実はこれ、ただの紅茶の茶葉なのっ!)


 返事を待つバルテスの目は今もサリーを見つめており、思わず目が泳いでしまう。


 浮いた話が一つもなかったバルテスを応援したくて用意したものだったが、まさか恋の相手が自分だとは思わなかった。


 よく考えてもみれば、確かに自分は長い付き合いで、一緒に食事やお茶もして、毎回お菓子を手土産にもらい、街へ買い物もしている。

 しかし、それは好意ではなく友達付き合いの延長線上だと思っていた。

 子どもの頃はお菓子を持ち寄って互いの家を行き来していたし、買い物や食事だって友達と行くのは当然のこと。

 そもそも彼はそんな甘い雰囲気を出していたこともなかったし、異性として見ていないものだと思っていた。


(……私、今すごいドキドキしてる。これ、ただの紅茶なのに!)


 罪悪感と動揺がサリーの鼓動を加速させる。


 彼の想いにどう答えたらいいのか。そして、渡したものが媚薬でもなんでもないただの紅茶の茶葉であることをどう自白すべきかサリーの頭を悩ませた。


(どうしようどうしようどうしよう! 私、媚薬を飲んだことになっているのよね⁉ 媚薬の効果に当てられたフリした方がいい⁉ いや、偽の媚薬だってバレたらややこしいことになる! というか、バルテスは本当に私のことを好きなの⁉ そもそも私はバルテスのこと好きなの⁉ ああーっ! こんなことなら本物の媚薬を作れば良かった!)


 本物の媚薬だったら、全て媚薬のせいにして、うやむやにすることができたかもしれないのに。


「サリー?」


 バルテスに名前を呼ばれて我に返る。


「ご、ごめんなさい。私、今、すごい動揺してるみたいで……胸のドキドキが止まらないというか」

「自分で作った媚薬のせいじゃないか?」

「そ、そう、かもっ、ね!」


 実際に自分が作った媚薬のせいで動揺しているのは間違いない。

 今も返事の声が上ずってしまったし、カップを持つ手も震えている。


「それで、サリー。返事は?」

「へ、返事って……?」

「オレは、お前のことが好きだ。そして、お前のことが好きだから、お前の助言にしたがって、こうして媚薬を盛って告白をしている」

「ンンンンンンンンンっ!」


 言葉にならない声がサリーの口から漏れ出る。


(む、胸が苦しい……! バルテスがこんなにも真剣に告白をしてくれているのに。媚薬を盛ったことすら堂々と自白して、告白の返事を待っているというのに。私ときたら! 偽の媚薬であることも打ち明けられず! バルテスと友達以上の関係になることも、このまま友達でなくなることにも踏ん切りがつかないなんて! なんて中途半端な女なの!) 


 この精神的な苦痛は、まるで拷問にかけられている気分だ。

 身から出た錆とはいえ、言葉だけでこんなにも苦しめられるとは。


「サリー?」

「え、え~っと……い、いつから好きなの?」


 そう、まずはこれを聞かなくては。

 もしかしたら、バルテスが自分をからかっている可能性がある。


 これと言って二人の間に何かがあったことはないのだ。恋愛相談に来た客のように運命的な出会いをしたわけでも、事件や出来事があったわけでもない平々凡々な幼少期を過ごした。

 そして、大きくなって再会した後も、何事もなくただ普通に過ごしてきたのだ。これで言葉に詰まるようなら冗談だと思っていいだろう。


 しかし、サリーの考えとは裏腹に、バルテスの答えは早かった。


「小さい頃からずっとだが?」

「えっ……?」

「これと言って決定打があったわけじゃない。気付いたら好きになっていた。一緒にいて居心地も良かったし、久々に会ったお前は、綺麗になったからな。余計に惚れた」

(やめろぉおおおおおお!!!! 私を口説くなぁあああああああ!!!!!)


 媚薬の効果なんてないはずなのに、心臓が痛くてたまらない。あまりの苦しさに胸を押さえると、バルテスはふっと小さく笑って、テーブルに頬杖をついた。


「王都で騎士になったのも、お前が昔、王都で店を開きたいって言っていたからだ。そうすれば、定期監査やら見回りやらでいつか再会できる日が来るしな」

(え……そうなの⁉)


 堅実的な男なので、てっきり安定した職を求めた結果かと思っていた。


(もし本当にそうなら、私のこと好きすぎない⁉)


 こんな一途な男だとは知らなかったサリーは、少しだけときめいてしまう。


「それに────……」

「それに?」

「……もし、お前が何かやらかした時、自分の恋に自ら区切りをつけて、お前を処断することができるしなァ……」

(やばい、処される⁉)


 この真面目人間は間違いなくサリーを魔女裁判にかけ、火刑となれば自ら火を点けにくるだろう。自分の恋に終止符を打つ為に。


(私、嘘がバレたらシバかれるのでは?)

「それで、サリー。お前はどうだ?」

「え、どうって……?」


 バルテスがサリーに向かって手を伸ばし、優しく顎を持った。

 顔を固定されて、サリーの顔はまっすぐにバルテスへ向けられる。


「お前を好きだと言った男にこうして媚薬を飲ませられたんだ。自分の手で媚薬を渡したオレに何か言うことがあるだろう?」

(ひぃいいいいいいいいいいいい!!!!!)


 言うことってなんだろうか。まさか『実は私も好き!』っていう言葉を待っているのだろうか。


 至近距離にあるバルテスのアイスブルーの瞳が射抜くようにサリーを見つめる。

 まるでサリーの心の内を暴こうとしているかのようだった。


(誰かーーー!!!! 助けてぇーーーーー!!!)


 あまりの心臓の騒がしさに上手く頭が回らない。

 サリーの心臓はバクバクと激しく脈を打ち、下手に口を開けば、飛び出してしまうのではないかと錯覚してしまう。


「え、あ、い、言うことって……?」

「………………なら、少し言い方を変えようか」


 先ほどまで甘く囁いていた言葉が、急激に温度を失い、アイスブルーの瞳が鋭く光った。



「媚薬と偽ってただの茶葉を渡したオレに、何か言うことがあるよなぁ……?」

「――――――――っ!」



 言葉にならない叫び声が、店内に響き渡るのだった。


 ◇


「たっ、大変申し訳ございませんでしたーーーーーーーーーーーーーっ!」


 涙目で頭を下げるサリーに向かって、バルテスが舌打ちをする。


「もう二度とするなよ……バカ魔女」


 そう言って彼は新たに入れ直した媚薬改め、ブレンドティーを口にする。

 室内に再び花の甘い香りが広がり、サリーも鼻をすすりながら紅茶に口をつけた。


「は、はいぃ……で、でも。いつから気付いてたの?」

「ものの数分で出来上がる媚薬があってたまるか、このバカ!」

「仰る通りです!」


 あの時、サリーは調合室で茶葉を混ぜていただけだ。本来ならば魔法薬は慎重に取り扱う必要があり、余計な不純物が混ざらないように白衣を着るなり、手袋をつけるなり準備が必要だ。そして、出来上がったものは必ず成分が規定の量になっているか調べなくてはならない。ものの数分で出来る薬なんてないのだ。


「まあ、既製品の可能性も疑って、ちゃんと魔力や薬品の含有量を調べて、試飲もしたがな。変な媚薬なら摘発する必要があるし」


 さすが疑うのが仕事の騎士様。友人相手でもやることは同じだった。


「分かってたら、こんな意地悪しなくてもいいじゃない! 私だって真面目に考えて渡したのにぃ~!」

「ほう……? お前、別の男に同じことをしてみろ? お前の言うことを鵜呑みにして男が迫ってくることだってあるんだからな」

「あ、はい……」


 痴情のもつれで大事件になる例をサリーはたくさん知っている。自分が事件に巻き込まれる可能性は無きにしも非ずだった。


「とにかく、もうこんなことするなよ? 今回はオレだから良かったものの……」

「…………バルテス以外になんかやらないもん」


 そう、バルテス以外になんかやるわけがない。大事な友人であるバルテスだから媚薬なんて大嘘をついて背中を押そうとしたのだ。


 小さく項垂れていると、バルテスからため息が零れる音が聞こえた。


「ならいい……」


 彼は呟くように言うと、再び紅茶を口に運んだ。

 もう彼の怒りは鎮まったようで、サリーはほっと胸を撫で下ろし、気になっていたことを口にする。



「そ、それでバルテス……あなたの恋愛相談はどこまで本当だったの?」

「………………あ?」



 どこか苛立った声で返され、サリーはおそるおそる訊ねた。


「ほら、アンタが恋愛相談なんて珍しいから、本当にお友達の話だったのかなって思って。そ、それとも、本当に自分の話だったの? だから、念入りに茶葉のことを調べたとか?」


 好きな人に変なものを渡すわけにはいかない。真面目人間のバルテスなら、いくらサリーからもらったものでも、そのぐらいは平気でするだろう。


「も、もし、本当に自分の話なら、応援してあげたいなぁ~って……ね?」

「……………………」


 長い沈黙が流れた後、バルテスから地を這うようなため息をつかれる。


「……サリー。お前、恋愛相談専門の魔女だったよな?」

「え、ええ。そうよ」


 サリーがそう頷く後、大きな舌打ちと共にバルテスが席を立った。



「だったら、ちったぁ自分で考えな!」

「えええええええっ⁉ ちょっと待ってバルテス! バルテス~~~~~~~~~っ!」



 こうして、サリーはバルテスが再び店に訪れる一か月後まで、ずっと頭を悩ませることになるのだった。

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