「私・・・幸せそうに見えない???」


周りの人に・・・・そう思われないよう、してきたのに・・・。

親友の美佳にさえ可哀想・・・とか思われないよう・・・そうしてきたつもりだった。


近所の人にも、


『三木さん宅はいつもご主人いないわよねーー・・・』


とか、


近所の奥さんたちは皆でお茶したりランチしたり・・・そこに行くつもりはないけどそれは・・・・。


でも、行かなかった理由は他にもあった。

周りの人たちが子供に囲まれて、そんな幸せな風景を直視する勇気が無かったから。


笑える自信がなかったから。


涼君は私の頭を撫でて、


「そんな事ないよ??・・・ただー、・・・悩んでいるのかなって思ったから・・・。」


悩み・・・。


結婚して冗談っぽく美佳や俊也に愚痴ってはいたけど、それを本気の悩みとしては・・・言えなかった。


だって、マジでコイツ旦那の事で悩んでる。とか、重く思われるのは嫌だった。



でも・・・涼君になら・・・。

知っている仲じゃないからこそ・・・言えるのかも・・・。





——涼side



結城ちゃんはまた下を向いて、


ゆっくり口を開いた。


「私・・・三木との結婚は・・・出来婚だったの。」


・・・・・。


「うん・・・。」


「でもね、・・・赤ちゃん、・・・心音が確認できた、次の検診で・・・もう心音が消えてて・・・・流産だったの・・・・。」


・・・・・・。


「結婚する前、三木とは付き合っていた訳ではなかったんだけど・・・。色々あって体の関係を持ってしまったの・・・。でもね、妊娠したと言った時・・・三木は凄く嬉しそうにしてくれて優しかった・・・・。」


話が進むにつれて結城ちゃんの声が震えてきて、俺は彼女の手を握った。


「でもね、・・・婚姻届けを出して・・・その直後に流産・・・。その後は・・・あまり家にも帰ってこないし、帰って来ても自室で仕事をしていたりして会話もあまりないし・・・。だからと言ってまた子供を作ろうかって思っても・・・気が進まないの・・・。」


そっか・・・。


「でもね・・・。近所には子供が沢山いて・・・可愛いなって思うし・・・。芸能ニュースとかで知っている人たちがどんどん結婚して・・・幸せそうにして・・子供産んで・・・そういうの見てると・・・羨ましいなって・・・。」


・・・・・・。


「でも、子供がいなくても幸せな夫婦は沢山いるでしょ??・・・うちは・・・そういう感じもなくて、・・・そういう・・・仲が良い夫婦とかも良いなって・・・」


「結城ちゃん・・・・。」


「でも、・・・・可哀想とか・・・同情もされたくないから。寂しいって言うわけにはいかないの・・・・・」


・・・・・・・。


結城ちゃんは、ギュッと拳を握ってそう言った。


寂しいけど、・・・・そう思われたくないから、言わない。

言う訳にはいかない・・・って・・・。



それは、彼女の・・・彼女なりのプライドなんだと思った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る