その頃



——俊也side



俺は結城をあのビルまで送って、エレベーターに乗せておいて

その後が気になって・・・・。


気になって気になって!!!


仕方ない。



見慣れた高級車が何台も止まるそのビルの駐車場で、俺はタバコを吸いながら色々考えていた。

自分の役割と立場を・・・。


結城と出逢ってもう10年。

俺は・・・ずっと結城を見てきた。


今までアイツに手を出した事は・・・1度もなかった。


今日まで1度もだ。

もしかしたら結城からSOSの連絡が来るんじゃないかと、スマホを持ったまま・・・一服していた。


SOSなんてあるわけない。


相手は・・・


アイツ等だ。


落ちない女なんて、


いない。




ビルの出入り口の方を見ていると、ゆっくり扉が開いた。


・・・・・・・。


そこから出てきたのは


紛れもなく涼と結城だった。


涼は何度も振り返って結城を見て・・・優しく笑っていた。


結城も笑顔で涼の後を歩き・・・出入り口の直ぐ脇に止まっていたリンカーンの横に行くと・・・。

涼が助手席の扉を開け結城をエスコートし、そのまま結城は助手席に座った。


くっ・・・・・・

くっそぉぉぉーーーー~ッ!!!!!


って、・・・・俺が連れて行ったんだけど!!!


俺は座席を倒し二人に気づかれないよう寝転がって煙草を吸った。


はぁーーー・・・、


直ぐに涼が運転する車は駐車場を出て行った。

マジーーーー・・・。

俺って、一番損な役回りだな。





——淳side




あーーーあ。

涼女と帰っちゃったーーーー!



オフィスの鍵を閉めエレベーターに乗って地下の駐車場に向った。

駐車場に着き、奥の方を見ると・・・見覚えのある車・・・・。


俺は周りを見渡し・・・ゆっくりその車に近づいた。

すると、

あーーーーー、・・・やっぱっ?!


車内を覗くと、そこにはかつて一緒に働いていた俊也の姿。


俊也も直ぐに気付いて窓を開けて来た。


「おーーー、淳じゃんッ今帰り???」


俊也は笑って言ってきた。


「お役目終了???」


俺がそう言うと、俊也はニカッと笑って


「飯行かない??今俺ちょっと凹んでる!!」


コイツが居て・・・あの子が会社に来た。


って事はそういう事だろ??


「OK!!マンション近くでいい???」


俺が言うと俊也は笑って・・・・。


「あぁ・・・」



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