男爵令嬢の私が朝起床したら、隣に裸の若公爵様が寝ていてビックリした話

大井町 鶴

男爵令嬢の私が朝起床したら、隣に裸の若公爵様が寝ていてビックリした話

ステラは愛用のムチをドレスの内側にしまった。


「ふう、疲れたわ....」


ソファにだらしなく横たわる男をチラリと見る。今日の男は、ムチで打たれると恍惚とした声を上げて喜んでいた。


(ホント、変態って気持ち悪い)


自分でムチをふるっておいてなんだが、ムチに打たれて喜ぶなんて変態だと思っている。


..........ステラは怪しい職業に就いているワケではない。かといって彼女の性的嗜好でもない。


彼女がムチを振るうのは、実家が裏稼業をやっているからだ。ステラの実家であるタブレ男爵家は、もともと裏稼業の成果を王に認められて男爵位を頂戴した家だった。ゆえに王家の依頼を受けては、王家に邪魔な存在を排除している。


ステラは王家に仕えることを誇りにしていたから、いつも迷いなく仕事をこなしていた。だが、ある日、やってしまったのだ。


………朝、起きると、ターゲットである若公爵がステラの横で真っ裸のまま、すぅすぅと寝息を立てて眠っていた。


(ターゲットがまだ生きてる………というか、私は眠ってしまったの!?)


ステラはパニックになった。もうすでに夜が明け始めている。ターゲットは死んでいない。


(どうする!?今から殺す? あれ?ムチは?ムチがない!)


ムチは主に首を絞めたり………色々と便利な道具だ。その愛用のムチが見当たらない。


(コイツが隠した??)


そこらへんを探すがムチが見つからない。こんなに必死にムチを探しているというのに、ベッドではターゲットの若き公爵レイモンが平和そうに寝ていた。ダークブロンドの髪が目元に垂れていて色気まで漂わせている。


(キレイな顔だから殺すには惜しいと思ったけど。まさか朝まで仕留めず眠ってしまったなんて!)


とにかく、このままここに留まり続ければ人もそろそろ起きて来るだろうし、マズすぎた。しかも、昨晩、酒を飲んだせいで頭が良く働かない。昨晩の詳細を思い出そうとしてもモヤがかかったように思い出せなかった。


(……万全な状態で殺らなければ失敗するかもしれない。コイツが起きる前に去らなきゃ)


ステラは去ろうとして自分の状態に気が付いた。


素肌に男物のシャツを羽織っている。シャツは状況からしてこの男のものだろう。


(し、下は!?)


急いで確認すると、下半身は下着こそ身に付けていたが脚がむき出し状態である。


(私、コイツとまさか……まさか)


冷や汗を流しながら一生懸命記憶を辿るが、やっぱり頭がモヤモヤして全く思い出せない。


(とにかく!去るべし!)


ステラは急いで散らばっていた自分のドレスを身に付けると、急いで現場を去った。


…………自分の屋敷に戻ったステラは父の前にいた。


「どうした?朝に戻るなど、今まで無かったではないか」

「に、任務に失敗してしまいました……。ターゲットはまだ生きています」


父は観察するようにステラをジロジロと注意深く見た。


「あ、あの、どうしましょうか?」

「……私が何とかする。もう部屋で休め」


そう言うと、父は去って行った。


今回のターゲットであったレイモンは、ネウム公爵家の若き公爵だった。彼の父は基盤を整えると、レイモンに爵位を譲って領地に引っ込んでいた。領地に引っ込んでも権力は健在で、裏から色々と指示を飛ばしていると言われている。


ステラは自室に戻るとまずは身体をサッパリとさせようと用意されていた湯舟に浸かった。


(ターゲットはレイモンで22歳。私よりも2歳年上の文武両道で社交界でも美男子で大人気の男……)


ステラも舞踏会でレイモンのことをよく見かけていたが、彼はいつも人に囲まれており、特に令嬢達にチヤホヤされているのを見て、快く思っていなかった。調子に乗っているように見えた。


昨夜の舞踏会もいつものように令嬢に囲まれているレイモンだったが、変装したステラが近づくと下から上までステラをジロジロと見てきた。


(こんなに女性をジロジロと見るヤツが人気って皆、おかしいのでは??)


そんなことを考えていると、レイモンが令嬢達から離れてステラの元に寄って来た。


(来たわね。いやらしいヤツ)


ステラのドレスは身体のラインが出ていて煽情的だったから、下心がある男はすぐにホイホイとやって来るだろうと思われた。


(やっぱり男ね)


ちなみに、任務では大胆なドレスを着るが、普段は裏稼業を知られないためにも清楚なドレスを着ている。そもそも、可愛いドレスは自分の趣味であったし、仕事用のドレスは全く好みじゃない。だから、男達が釣られて寄って来るとは分かっていてもこういったドレスは好きになれなかった。


近寄って来たレイモンはさっそく口説き出した。


「キレイなレディ。初めて見る顔だ。お名前は?」

「私はエステルですわ。若公爵様ってとてもハンサムですのね。見つめられただけで身体が熱くなってしまいます」


意味ありげに微笑めば、すぐに狙い通りの展開になった。


しばらく会話をした後、”2人きりで会話でも”と言われ、舞踏会場から少し離れた客室になだれこんだ。扉が閉まると同時にその気になったレイモンがブチュブチュと口づけしてきた。


(ちょっと!がっつき過ぎよ!コイツ、余裕が無さすぎ!)


レイモンの胸を手で押して離す。


「若公爵様、まずはワインを飲みません?雰囲気って大事ですわ」

「ああ、そうだね。ゴメン、君が美しいから焦ってしまったよ」


そこからしばしワインを飲んだ。チラチラとレイモンの様子を見るが彼は変わりなくワインを飲み続けた。ワインにはあらかじめ、睡眠剤を入れておいたというのに酔いつぶれる気配がない。いつもなら、その気にさせた男に酒を飲ませて潰れたところをお命頂戴という具合である。


(なぜ、眠らないのよ!仕事ができないじゃない!)


仕方なく、ステラは次の作戦へと出た。愛用のムチをドレスの内側から取り出すと、怪しく微笑んだ。


「こういったものを使って遊びません?」

「それは……ムチだよね?どうやって使うつもり?」

「どう使いましょう?」

「えーと、ムチで叩かれるのはイヤだな。縛られるのはいいかな」


レイモンはノリノリで手首を自ら差し出した。


(ムチで縛られたいなんて、とんだ変態野郎)


妖艶な微笑みを顔に貼り付けながらも内心、毒づく。


どうせ縛るならと、レイモンをベッドに押し倒してベッドボードの格子に手首を縛り付けてやった。


「これからどうするの?」


手首を頭上で縛られ興奮した様子でステラを見上げるレイモンは“次にどうするのか”とか、色々と話しかけてくる。


「そんなに話していては、雰囲気も台無しですわよ」


仕事がやりにくいので、黙らせたいステラは口の中に仕込んでいた小さな固まりをガリッとかみ砕いた。ワインを口に含むとレイモンに口づけて口の中へとより強力な睡眠剤を流し込む。


(よし、これで絶対に眠るはず)


だが、レイモンが急にステラの後頭部をいきなり押さえつけながらキスしてきた。


(うぐぐ、なにを!)


鼻をつままれて思わず口を開くとワインが口の中に流れてくる。


(絶対に飲んじゃダメ)


自分が睡眠剤入りワインを飲むワケにいかないので飲まずに吐き出す。せき込んだ。


「ああ、可愛い!」


目の前の男は縛ったはずの手首が自由になっており、ステラを見てウットリとしていた。


(このバカ男~!予想外のことをするな!)


怒りの表情が出そうになるが、必死に微笑む。だが、微笑もうとするがなんだか顔が麻痺したようにうまく動かせない。


(もしかしたら、睡眠剤を少し飲み込んでしまったのかも............)


そこで意識は途切れたのだった。


(あそこでまさか眠るなど。とんだ失態だわ)


浴槽に浸かりながらひたすら反省する。一応は、プロの殺し屋なのだ。プライドがある。


(失敗はしたけど、こちらの正体には気付かれてはいないはず。カツラも被っていたからこの特徴的なプラチナブロンドの髪色も知られていないだろうし。メイクだって落ちていなかったわ)


入浴後に朝食をとりに食堂へ行くと兄がいた。兄は荒っぽい暗殺担当だ。


「お兄様、おはよう」

「失敗したらしいな」

「いきなりそれ?」

「ほかに言うことあるか?」

「私に優しくないわ」

「そんなことない」


兄妹で言い争っていると、父と母が食堂に入って来た。ちなみに父は謀略担当、母は情報操作担当であった。


「ステラにさっき、急ぎの手紙が届いたわ」


母のリンダが手紙を掲げた。母の表情が険しい。


「誰から?」

「ネウム公爵家のレイモン様」

「えっ!?」


急いで母から手紙を受け取り、中身を確認する。


「…………今日の午後、屋敷に来いと書いてある」


青ざめた表情でステラが言うと、父達はあれこれどうするべきか話し合い出す。


「ステラ、ここは言われた通り、まずはネウム公爵家に向かうんだ。何の目的で呼ばれたかはまだハッキリしていないのだからな」

「……はい、お父様」


すぐに用意すると、ステラはネウム公爵家へと出発した。馬車から降り立つと、建物の端は一体どこなのだろうと思うほど、立派な屋敷であった。


応対した使用人に豪華な応接間に案内されると、フカフカな椅子に座るように勧められる。すぐにお茶やお菓子も用意された。


(レイモンはどうして私を呼び出したのかしら。私とレイモンは直接の面識は無いのに)


今日は淡い水色にレースがついた清楚なドレスを着ている。昨晩のドレスとは真逆のデザインだ。


(私の正体など気付いているわけがない。変装をしていたし、彼だって睡眠剤を少しは飲み込んでいるはず。朝もグッスリと眠っていたし、そこは間違いないわ)


正体はバレていないのだから堂々としていればよいと、何度も自分に言い聞かせていると、レイモンがやって来た。なんだか笑顔だ。


「突然、呼び出してすまない。君と話してみたかったんだ」

「はあ………私は若公爵様とは面識はないはずですが」

「若公爵などと呼ばずにレイモンと呼んでくれ」

「では、レイモン様と呼ばせて頂きます。それで、どういったことで呼ばれたのでしょうか?」


ステラは早く帰りたい気持ちもあり、早く話を進めようとした。


「まあまあ、焦らずゆっくりと話しましょう。“雰囲気って大事”じゃないか」


ピクッとステラは反応した。


(昨晩、私がした言い回しと同じ……)


「僕は舞踏会で男達の関心を集めているあなたと一度、きちんと話してみたかったんだよ」

「はあ.......」


ステラは美しくて優雅、プラチナブロンドの髪が見事だったから男性から声をかけられるのはそう珍しいことではない。むしろ、慣れている方かもしれない。だが、普段はかなーりお淑やかに振る舞っているので男性の誘いに乗ることはない。いわゆる高嶺の花キャラなのだ。


「お話ならば舞踏会で声をかけてくださればいいのに」

「うーん、僕も意外と人気があってね。舞踏会に行くと大抵、女性に囲まれてしまうのさ」

「確かに令嬢にいつも囲まれてらっしゃいますものね」

「だから、こうして呼び出してみた」

「............」


レイモンの言うことは分からないでもないが、一度も話したこともない女性をいきなり呼び出すなんてと、レイモンをジロリと見た。


(呼び出したのは、ただの関心なのかしら?)


「君は高嶺の花と言われているが、意外な趣味があると知って僕は驚いたなあ」

「意外な趣味?私に?」

「心当たりない?」

「..........ないですわ」

「本当かなあ」


そう言うと、レイモンは胸元からあるものを取り出してテーブルに置く。ムチだった。


「……これは何です?」

「これはムチですね。あなたのですよね?」

「どういう意味で言ってらっしゃるんですか?」


動揺を隠しながらレイモンを見る。彼はニヤニヤしていた。


(アレは私のムチだわ)


「そんなモノを見せるなんて、私をどうしたいのです?それで遊ぼうとでも?」

「それもいい」


レイモンの言葉にギョッとする。


「僕は今朝まである女性といたが、コレが枕元に落ちていてね............」


レイモンはハンカチにつつまれたある物を取り出す。


髪の毛だった。プラチナブロンドに輝いている。


「これはあなたのではないですか?」

「ムチはともかく、髪の毛は舞踏会に私も出席していましたから、なにかのタイミングでついてしまったのかもしれませんね」

「なかなか認めないね」

「だからなにを言っているのです」


ステラは表面上は取り繕って平然とした顔をしていたが、心の中では完全に動揺していた。


(これはアウトというやつでは.............どうしよう。どうするべき??)


「その平然とした顔がまたいいね」

「からかわないで下さい」

「君、自分の身体をきちんとチェックした?」

「はい?どういう意味ですの?」


レイモンはさらにニヤニヤとする。こうなると気味悪かった。


「胸元、トイレで確認してきたら?」

「胸元??」


身体なら今朝、入浴した時にチェックしたはずだ。特になにも変わったことはないはずだが、レイモンに自信満々に言われると急に心配になった。


「あの、さきほどから色々と言われていますが、どなたかとお間違えなのではないですか?レイモン様がどんな方とどう過ごされても私に関係ないことですし、変なことを言わないで下さい」

「ふうん。君が優秀なのは分かった」

「だから、なにを.......」


レイモンはメイドを呼ぶと、ステラをトイレに案内させた。ステラも気になっていたので素直に従った。


トイレに入るとさっそく胸元を確認する。すると、胸の下にアザができていた。


(多分、これってウワサのキスマークよね?)


紛らわしい仕事方法をしているステラだが、実際のそういった経験は無かった。ただ、どういった現象が起きるのかは知っている。


(これはやはり完全にバレているのだ。ひとまずここから逃げよう。気分が悪くなって失礼したと言えばどうにかなるだろう)


そう判断したステラは、気配を探りながらトイレを出た。


(メイドはいない。よし、近くの窓から逃げよう)


人気のない廊下の窓を開けようと近づいた。素早く窓を開ける。


「どこに行く?さっきいた部屋はあっちだよ」


いつの間に近づいて来ていたのかレイモンの手が伸びてきて開けた窓を締められた。


壁ドンならぬ窓ドン状態だ。


「あの、その、外がキレイだなと。窓を開けてよく観たかっただけですわ」

「ふうん。胸、見てきた?」


レイモンがやたらと砕けた口調になっていた。ギラリと光る目はもう、逃れられない表情を表わしていた。


「...............あなたは私をどうしたいのです?わたしを殺そうと?」

「殺しなんてしない。ただ、僕とある約束をしてもらう」

「約束?」

「というわけで、出かけよう」


レイモンは茫然とするステラの腕を取ると馬車に乗せられた。


「どこに行くのです?」

「うん?ああ、行くまでちょっと目隠ししておこうか」


レイモンはポケットチーフを胸元から取り出すとステラの目が見えないように目隠しをした。


「なぜ目隠しを?」

「どこに行くか分からない方が面白いだろう?」


(私、このまま警備隊に突き出されるのかしら?)


恐怖で震えた。レイモンはそんな震えるステラの肩をトントンと叩く。楽しんでいるようだった。


しばらくして馬車が停まると、ステラは目隠しをされたまま抱き上げられた。


「自分で歩きたいです」

「目隠ししてたら歩きにくいだろう」


バタバタと暴れたが降ろしてもらえなかった。


「さあ、ここに座ろう」


ソファの上に降ろされた。目隠しをとられる。目隠しを取られると目のまえには不機嫌そうな父の顔があった。父だけでなく母や兄もいた。


「これは一体.........?」


混乱したままだった。


「やあ、驚いた?」


レイモンが明るく言う。


「ワケが分かりません」


警備隊まで連れて行かれるのかと思ったら、実家に連れて来られて困惑していた。


「レイモン様、馴れ馴れしく娘に触れないで頂きたい!横抱きまでして......」

「もうそれ以上も触れたよ。でもいいじゃないか。これから僕が..........」

「なんですと!?約束でも順番というものがあるでしょう!」


父は怒っていた。母と兄は心配そうではあるが怒っているふうではなかった。


「約束?順番?」


困惑するステラに父が説明を始めた。


「...........レイモン様は実は組織を束ねる方だ。そうでもなければこのバカげた計画を許すこともなかった」

「レイモン様が組織のトップ?王家に敵対しているのではなく我々の長だと?」

「そうだ。ここからはレイモン様に説明して頂くのがいいだろう」


ホレ、ことの次第を話せ、というふうに父がレイモンを急かした。


「あー、僕はステラの評判を聞いてずっと気になっていたんだよ。だけど、組織内の者があまり大々的に接触しない方がいいから近づけなかった。それに、僕も普通に話しかける勇気が無かったし」

「それで任務に見せかけて私に接触したと?」

「そう」


ポン!とレイモンが両手を合わせる。


「なんと紛らわしい..........。私は正体がバレて警備隊に連れて行かれると思って覚悟したというのに」

「ごめんごめん」

「それで、約束とは?」


ムッとしながらステラが尋ねた。


「まあ、こうして種明かししたわけだし、約束してほしんだ」

「だからなにを?」

「僕と結婚してほしい」

「は............?」


急にプロポーズされてステラは固まった。


「僕は絶対に君を手に入れたかったからいろいろと手を打ったんだ」

「なにを?」

「それを今ここで言うのは..............」


赤くなったレイモンに父の怒りが増した。


(まさか............私、この人とそのあれなのかしら?)


朝、起きるとレイモンのシャツを着せられていた。ほぼ裸の上に......。


「レイモン様、ヒドイです!」


ワッと泣き伏せると、レイモンが慌てた。


「えっ、なんで泣くんだ?」

「レイモン様、まさか娘に手を出したのですか?それも意識が無い状態で.........」


父がどこから出したのかレイモンに剣を突きつける。


「違うよ!さすがに違う!そう勘違いさせて断らせないつもりだっただけだよ!」

「え!?」


レイモンはステラに恋焦がれるがゆえに、強引に結婚までこぎつけようとあれこれ紛らわしいことをしたのだった。


彼は、ステラが眠ってしまうと、自分も朦朧としている中、ステラの服を脱がせてなにかあったように胸の下にコッソリとキスマークをつけた。一線を越えたとなれば彼女も諦めて自分と結婚するだろうと考えたらしい。


「だからって服を脱がすなんて。裸を見たなんて!」

「見たけど、正直、それどころじゃなかったんだよ」


強力睡眠剤のせいで、睡眠欲の方が勝っていたらしい。


「だから、いろいろと方法を間違えたけれど、僕と結婚してほしい」

「............まったくロマンチックではありませんね。でも、私は裸を見られたわけですし.....」

「前向きに考えてくれるんだね。良かった」


レイモンは一人、喜んでいた。


レイモンとはそれ以降、なんだかんだでデートを重ねながら婚約している状態を続けている。


「私、約束は守りますけど、好きな方と結婚したいんです。だから、私があなたを好きになるようにきちんとまともに努力なさって下さい」


結局、レイモンは正統派な求愛をするようにステラに教育されていた。


(レイモン様は組織のトップだし、顔も良い。ただ、思考がぶっ飛んでいるけど)


「ステラ、花束のプレゼントだよ」

「あら、まともになってきましたね」


バラの花束を受け取る。香りを吸い込むととても良い香りがした。


「こういう王道のスタイルが一番の方法だったのかあ」

「そうです」

「だけどね、僕は早くムチを使って仲良くしたい。あ、僕は縛られるのがいい」


そっと耳元で囁くレイモンはやはりちょっと変態の要素があった。でも、そんなレイモンを扱うのがだんだんと楽しくなってきているステラもいた。


(結局、なんだかんだでお似合いだったのかもね、私達)


どうやって調教しようかしらと、密かにワクワクしてくるステラだった。

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