6 呪印術の真実
「なんでこんなことになったんだ?」って思ったことないか?
何かが動いてるのはわかる。
でも、それが何なのか、どこまで広がってるのか――そんなの誰にもわからない。
俺もそうだった。
鷹村とのあの会話以来、どうにも気持ちが落ち着かなかった。
呪印術に関わる何かが起きているのは間違いない。
だけど、俺がどう動くべきかは見えてこない。
「零、なんか考え込んでるね。」
ハルが肩の上から話しかけてくる。
「まあな。」
俺はスマホで例の模様を再び見つめていた。
被害者が描いたあの模様――あれは、俺が異世界で何度も見たものだ。
でも、ただの術式じゃない。
あれは、異世界でも特定の者しか扱えない、制御が難しい術式だ。
そんなものが地球に現れるなんて、普通に考えたらおかしい。
「零、また現場に行くの?」
ハルが聞いてくる。
「ああ、もう一度確認したい。」
そう答えた時、正直ちょっとだけ面倒だと思ってた。
けど、ここで動かなきゃ何もわからないままだ。
俺は再び路地裏へと向かった。
夜の静まり返った空気は相変わらず不気味だ。
だが、今回は前よりも魔力の痕跡が薄くなっていた。
「ここに何かいる…?」
俺は周囲を探りながら歩を進めた。
すると、突然視界が揺れた。
いや、揺れたんじゃない――空間そのものが歪んだんだ。
「何だこれ…!」
ハルが肩で身を縮めながら叫ぶ。
「零、これ絶対ヤバいやつだよ!」
俺は魔力を感知し、空間の中心へと駆け寄った。
そこには、新たな呪印術の模様が刻まれていた。
前回の模様よりも複雑で、明らかに大規模なものだ。
「これを誰が仕掛けてる?」
俺が模様を見つめながら呟いたその時――。
背後に強烈な気配を感じた。
振り返ると、そこには黒いローブをまとった人物が立っていた。
「ようやく気づいたか。」
低く静かな声が響く。
「お前が呪印術を止められるかどうか、試してやる。」
その言葉と同時に、模様が光を放ち、空間が大きく歪み始めた。
その中から現れたのは――異世界の魔物だった。
「零、あれ…!」
「見りゃわかる!」
魔物は異世界でも中級以上の強さを誇る存在だった。
鋭い牙と爪を持ち、空間を引き裂くような一撃を繰り出してくる。
俺は防御魔法を展開し、即座に攻撃態勢に入った。
戦いは熾烈を極めた。
魔物の一撃は重く速い。
だが、俺も伊達に異世界で生き延びてきたわけじゃない。
「これで終わりだ!」
俺は最後の一撃を叩き込み、魔物を消滅させた。
だが――。
呪印術の模様はまだ消えていない。
それどころか、さらなる気配が広がっていた。
「零、これって…。」
ハルが不安そうに声をかけてくる。
「ああ、ただの魔物の召喚じゃない。これ、もっと根深い何かがある。」
俺は模様を見つめながら、これが単なる始まりに過ぎないことを悟った。
君ならどうする?
こんな状況で、次の一手がわからないまま動き続けられるか?
俺?
止まれないんだよな、こうなっちまうと。
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