7 闇に潜む意志

「これ以上ヤバいことが起きるなよ」って祈ったこと、あるだろ?

俺もそうだったよ。

でも現実ってやつはさ、そういう時に限ってさらにひどいものを投げつけてくるんだよな。




呪印術の模様が消えない。

いや、それどころか、その力がますます強まっているのがわかった。

俺とハルは路地を後にして、模様について考える時間を取ろうとした。


「零、これ、どこまで広がってるのかな。」

ハルが不安そうに聞いてくる。

「わからない。だけど、こんなに規模が大きくなるとは思わなかった。」


家に戻った俺は、パワーストーンショップの裏手にある作業スペースで模様の再現を試みた。

スマホに保存した写真を見ながら、紙に模様を写し取る。

描き終わると同時に――。


「これは…おかしいな。」

呪印術の力が、紙から微かに漏れ出している。

本来なら、術式を発動するためには大規模な準備が必要なはずだ。

それなのに、この模様だけでここまで強力な魔力を放つなんて――。


「零、これって普通じゃないよね?」

「もちろん普通じゃない。」

俺は模様を見つめながら言った。

「異世界でも、これを扱えるのは限られた連中だけだ。それも、かなり高位の奴らだぞ。」


「ってことは…。」

ハルが何かに気づいたように声を上げる。

「ああ、これを使った奴は――ただの人間じゃない可能性が高い。」


その時、スマホが震えた。

画面を見ると、知らない番号からの着信だった。

迷ったけど、俺は電話を取った。


「一条零だな。」

低く冷たい声が響く。


「誰だ?」

「お前が知る必要はない。ただ、お前に忠告しておく。」


忠告?妙に引っかかる言葉だ。

「お前はこれ以上、呪印術に関わるな。それが、お前自身のためだ。」


その言葉に、俺は腹が立った。

「誰だか知らないが、俺に指図するな。」

そう言い返すと、電話は一方的に切れた。


君もこんな電話を受けたら、普通にムカつくよな?

俺もそうだった。

だけど、その声の冷たさが妙に耳に残ってたんだ。


「零、どうするの?」

ハルが心配そうに尋ねてくる。

「決まってるだろ。」

俺は模様を再び見つめた。

「この模様の秘密を突き止めるしかない。」


夜が更ける中、俺の頭の中には新たな疑問が渦巻いていた。

呪印術を操る者――それは何者で、何を目的にしているのか。

その答えを知るためには、もっと深く踏み込むしかなさそうだった。


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