4 被害者の語るもの
怖い話を聞いてどこまで信じる?
俺は正直、異世界で散々怖い目に遭ったから、普通のホラーなんて大したことないって思ってた。
でも、この件は――ちょっと違う気がしてたんだよ。
その日のニュースで、例の被害者が一命を取り留めたって報道があった。
病院に搬送されて、まだ意識があるらしい。
腕にはあの奇妙な模様――呪印術の跡が残ってるって話だ。
「零、行くの?」
ハルが肩の上で問いかけてきた。
「まあ、そうなるよな。」
俺はため息をつきながら答えた。
正直、行きたくなかったんだよ。
だって、何か大きな問題に巻き込まれる未来しか見えないからさ。
でも、放っとけるほど気にはならなかったんだ。
病院の白い廊下を歩きながら、俺はどこか落ち着かない気分だった。
被害者がいる病室を見つけて中に入ると、彼はベッドの上で横たわっていた。
顔色は悪い。
腕には包帯が巻かれてて、見てるだけで痛そうだったよ。
「調子はどうだ?」
俺が声をかけると、彼は少し怯えたように目を向けてきた。
「…誰だ?」
小さな声で聞いてくる。
「ただの通りすがりさ。」
俺は軽く肩をすくめて答えた。
「けど、その腕の模様、あれが気になってな。」
彼の表情が一瞬強ばった。
その模様について触れられるのを、避けたがってる感じだった。
「腕に触れた時、何かあったんじゃないか?」
俺が聞くと、彼はしばらく黙ってたけど、やがてぽつぽつ話し始めた。
「…触れた瞬間、頭の中で声がしたんだ。」
「声?」
「そう。『選べ』って。だけど、何を選べばいいのか、わからなかった。」
俺はその言葉に背筋がゾッとしたよ。
選べって何をだよ。
異世界の呪印術が、こんな形で影響を及ぼすなんて、普通にあり得ない話だろ。
「模様の形、覚えてるか?」
俺が尋ねると、彼は紙とペンを取って震える手で模様を描き始めた。
描かれた形を見た瞬間、俺は息を呑んだ。
間違いない――異世界で見た高位術式だ。
「ありがとう。しっかり休んでくれ。」
そう言って俺は病室を後にした。
病院を出ると、夜の空気が冷たく感じた。
ハルが不安そうに言う。
「零、これ、やっぱりただ事じゃないよね。」
「ああ、絶対に普通の事件じゃない。」
でも、これを誰が仕掛けた?
どうやって地球でこんなことを可能にした?
考えれば考えるほど、答えが見えないまま不安だけが募る。
なあ、君ならどうする?
自分の知ってる「あり得ないこと」が目の前で起きてるのを放っとけるか?
俺?
ビビりながらも、結局首を突っ込むしかないんだよな。
「これ、どうなるんだろうな。」
夜道を歩きながら呟いた俺の言葉に、ハルは何も言わなかった。
でも、その静けさが逆に心に引っかかったんだ。
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