第7話 12月11日16時


 俺は背負ってきた美佐を山小屋のベッドの上に下ろした。

 美佐は朦朧としたまま、意識を取り戻していない。


 美佐が気を失ったとき、俺はスマホで外部に助けを求めようとした。ところが圏外となっていたのだ。

 林道を歩く途中、何度か電波をチェックしていたのだが、間の悪いことに、この位置には届いていない。

 美佐をその場に横たわらせ、アンテナの立つ場所を求めて、俺は周囲を歩き回った。

 そのとき偶然、この山小屋を見つけたのである。


 一息ついて、小屋の中を見回す。

 不自然な山小屋であった。

 鍵の無いドアを開けると、正面にベッドがある。いや、ベッドと言っていいのか、薄い毛布が一枚敷かれただけの木製の台である。

 左右の壁には、はめ殺しの窓。

 そして、ベッドの上、正面の壁には神棚があった。

 備品は小さな薪ストーブがひとつ。

 ここは本当に山小屋なのだろうか……。


 そろそろ暗くなり始める時刻である。

 俺は迷っていた。

 朦朧としたままの美佐を残し、一人で助けを呼びに戻るべきなのか、それとも……。


 

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