第3話 12月10日23時


 俺は自宅に戻ると、仕事部屋のPCを起動させた。

 結局、明日、美佐を動画で見た場所まで連れて行くことになったのだ。

 フリーランサーの俺は、あるていど仕事の時間に融通が利く。

 しかし、コメントで指摘されていた場所から山中に入ったとして、そう簡単に見つかるのかは疑問であった。

 見つかる……。何を見つけると言うのか?

 俺は自分への問い掛けから連想されるイメージにゾワリとした。

 史郎が消息不明になってから、すでに一年が経っているのだ。


 『バイク旅・テント生活』を検索し、ホーム画面を開く。

 最後の動画を再生した。

 息を切らしながら逃げている史郎と思しき撮影者。

 気分が悪くなるほど画面が揺れている。

 再生回数稼ぎのやらせとは思えない。この動画を最後に、史郎は消息不明となったのだ。

 スロー再生にしてみた。

 史郎は何かから逃げている。その何かが映っていないかと考えたのだ。

 映像がゆっくりと進む。

 ……!

 停止ボタンを押した。

 史郎が後ろを向いたとき、やや離れた場所にある樹々にライトの光が走った。その樹の枝の上に人影らしきものが見える。

 明確には映っていない。錯覚かも知れない。

 けど俺には、白い服を着た女性が、太い枝の上に立ち、こちらに顔を向けているように見える。


 深夜の森の中、そんなことがあり得るのか……。

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