第2話

季節は木々が青々とした葉をつけ、蝉が様々な場所で鳴き始めた頃、僕や詩音が担当となった飲食担当は本番が近付きつつある日に向け、焼きそばを試作するために休みの日に予定の合った数人が学校の調理室に集まっていた。

「よし...とりあえず焼きそばの試作するか。色んなメーカーのソース買ってきたから片っ端から試して良かったやつにしよう。」

「何か私に手伝える事ある?」

「じゃあ...悠月さんには人参お願いしても良いかな。」

「うん、任せて。切り方は短冊切りで良い?」

「悠月さんの切りやすい切り方でいいよ。今回試作だから見た目は重視してないし。とりあえず薄めに切ってくれれば。」

「わかった。じゃあ私の感覚で切っちゃうね。」

「こっちはキャベツ切っておくね。」

「ありがとう、助かる」

そんなこんなで詩音や他の仲間達の協力もあって、下準備は早く済ませることが出来た。

調理担当になったのは僕と詩音の他にも何人か調理班になった奴が居るが、今日集まった中の、友希ゆうきみなとという奴がいるのだが2人は調理室の端で何かコソコソ話しながら企んでいるようで、嫌な予感しかしていなかったが、構っている暇は無いのでテンポ良く試作の焼きそばを作るのだった。

「とりあえず買ってきたソースそれぞれで少しずつ試作出来たな。どれが1番いいか試食するとしますかー...湊ー、友希ー、せめてお前らも試食しろー」

「よっしゃ、出来たー!」

「なんかコソコソしてやってんなとは思ってたけど、何作ってんだよ。」

「へへっ、見ろ!指フランクフルトだ!!」

「マジで作りやがった....」

「わぁ!すごい!本物の指みたい!!」

「だろ〜!爪部分と指の関節部分にこだわってるんだ!」

「おま...本気でこれ売る気か...にしたってこの細工するのめんどくさいだろ...全部にこの細工してたら日が暮れるぞ...?」

「なーに言ってんだよー!前日に皆でやるに決まってるじゃないか!」

その言葉を聞いた僕はまたも頭を抱える事になり、前日の仕込みが大変になるなと想像するのは容易だったのだ。

その後は皆で焼きそばの食べ比べをし、どのソースを使用するかを決め、販売の値段と量を話し合った。

「当日上手くいくといいね。」

「値段も相応の価格にしたと思うし、インパクトのある物も加わったからまぁ...いけるとは思うけど...」

「やっぱり調理班のリーダーとしては不安?」

「まあね...学園祭ってイベント自体僕たちにとっては初めてでどんな感じかも分からないからね...」

「私も頑張るから、楽しくやろうね!」

「ありがとう悠月さん。」

彼女のその言葉に少し救われたような気がした。


学園祭前日。学校は既にお祭りムードも醸し出しており、そこらじゅうで明日の学園祭に向けて飾り付けや準備が行われていた。さすがに大学の学園祭はすごいなと考えながら調理室に向かい、翌日の為の下準備を調理班の皆で分担しながら大量の野菜を刻み、保存袋にしまっていった。その仕事が終わると指フランクというイカれた物の細工も調理班の皆で協力して終わらせたのだ。

その後は当日の動きの説明と焼きそばの作る手順の紙を皆に渡した。

「...当日の動きの説明は以上となります。不明点がなければこれで解散とします。明日の学園祭楽しみながら頑張りましょう!」

「「おー!!」」

不安な気持ちは抱えながらも、明日の学園祭への期待は自分の中で徐々に高まっていっているのを感じていた。

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君と僕のあしあと 日咲 @hiyori0401

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