第8話
その3日後、俺はまた君に会っていた。
いつもの様に行為が終わった後、俺は赤沼の事伝えようと出て行こうとする君を引き止めた。
「どうしたの?何かあったの…?」
心配そうに君の瞳が俺を見つめている。
「あのさ?赤沼知ってるよな?」
「…あ…加藤君と同じクラスの…?」
「そう。そいつがさ、菜月とシたいって。俺より金は出せるらしいから。そいつと会ってきたら?」
「―――…っ」
「……どうしたの?」
君は視線を下に落としたままこっちを向こうとしない。
「ねえ」
身体に触れようと、手を伸ばしたら君はその手を払いのけ、俺を睨みつけ出来た。
大きなその瞳からボロボロと涙が流れていく。
「な、なんだよ……」
予想外の反応をみせた君を見て、俺は戸惑いを隠せない。
それと同時に苛立ちを感じた。
残念な顔の俺なんかより、赤沼みたいなイケメン相手の方が君だって嬉しいでしょ?金だって俺より出せるっていってんだ。
俺は君の為に好意で紹介するって言ってんのに。そんな反応されてもムカツクんですけど。
だけど、俺は無表情で訊いた。
「どうする?」
「絶対に嫌よ…」
――バンッ!!
蚊の鳴く様な声でそう言うと君は大きな音をたてて、ホテルを飛び出した。
「…あ~あ。…お釣はいらないんだ」
俺は閉まったドアを見ながら小さく呟いた。
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