第7話

校舎裏で疲れた体を壁に預けてうたた寝をしていた俺は、どうやらそのまま夢を見ているらしい。


それも、自分にとって最悪な夢を。


内容は、モモと長谷川が本格的に付き合い始めたと聞いて、無様にも俺はモモにその事を聞きに行った時の事だ。


『そういえばさ、モモ……なんだか最近、長谷川と仲いいらしいじゃん?』

『うん』

『……好きなのか?そいつの事』

『……うん』



この時のモモの表情は、本当に思い人を恋い慕う女の子なのだという事を強く証明しているのをよく覚えている。


それを俺は、目の前の現実を受け入れられずに、モモにひどい事を言ったんだ


『……どうしてだよ』


やめろ


『え?』

『どうして、あんな奴の事なんか好きなんだよ!なんで、俺じゃないんだ!俺の方がアイツよりもずっと、ずっとお前の事がすきだったのに!』


そんな事をいったって、お前が後悔するだけだ。


しばらく、間があった。


『なんで……どうして、そんな事を言うの?』


言いたいことを考えなしに、地面を向きながら吐き出した俺は、モモの震える声にはっとさせられた。


顔を上げて見たモモは、傷ついた表情をして、泣いていた。


『あっ…その、ちが』


何を言い繕おうが、後の祭りだ。

口に出して伝えてしまえば、もう後には戻れない。


『私の事を好きでいてくれて、ありがとう。でもごめんね、いー君…ううん、池水君の気持ちには答えられない。だって私は、どうしようもないくらい長谷川くんの事が好きなんだもん』


この時、俺たちの関係性には、明確な軋轢が入ってしまった。


それから俺たちは徐々に疎遠になっていき、学校でも話さなくなっていった。

やがて高校を卒業してからは、連絡も途絶えた。


なんて最悪な夢だ。

だけど、決して忘れてはならない後悔だ。


取り返しのつかない過ちを、俺は一度してしまっている。


このことを、もう一度胸に刻み込むんだ。

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