第6話
残る最後はクラス代表リレー。何故か代表の男が捻挫をするというありきたりなハプニングがあり、何故か俺が選ばれた。
想定外のイベントだが俺はもうモモが怪我をするようなイベントは過ぎ去ったので、すでに悠々としていた。
列に並んで自分が走る番まで待つ。
「緊張するね、池水君!」
さすが主人公といったところか、仲間をその眩しい太陽のような笑顔で他人の緊張を無意識にほぐそうとしてくる。
「そういうお前はアンカー走るのに結構大丈夫そうだな」
「あはは、まあね。」
一瞬なぜお前がここにいるなんて考えていたが、お前そう言えば案外足早かったもんな長谷川。
そこまで考えていたら、バンっと音がなりスタートの合図を知らせる。
「始まったね」
6人で走るが俺と長谷川は最後の方で走るのでみんなが半周で俺らだけ一周はしらなければ
いけない。
めんどくさい事極まりないが、一周走るなら距離の微調整もしやすいのでまあコレもアリか
と自分に言い聞かせて順番を待つ。
それにしても…久々にこんな高揚感やら緊張感を味わうのは初めてかもしれない。
手のひらに汗が滲んでいるのがわかる。呼吸を意識しすぎている感覚がある
この感覚は少しばかり怖気付いているのもあるんだが、今は懐かしさも相待って妙に心地いい。
次からつぎにバトンが渡され、いよいよ俺の番が次にくる。今んところの俺たちの順位は…一位、二位とせって三ぐらいか。
一位と接戦になるぐらいの順位で二位についてあとは長谷川にバトンを渡そう。
そんなことを考えていたらなんと前を走る同じクラスの女子がこけて俺らの順位が最下位になってしまった。
慌ててバトンを拾い走り直そうとする
「あーあ、ビリかぁ…一位なくなっちゃったね」
ふと自分のクラスのテントの方からそんな落胆したような声がした。
そんな声が聞こえてしまったのか走りながらクラスメイトである女の子は泣きそうになっている。
………………
そんな顔を見て俺は、
「…おい、長谷川」
「ん?どうしたの」
「少し本気で走るから、お前アンカーだから絶対一位とれよ」
わざと感情を殺した抑揚のない声で長谷川に語りかける。
息をのむ気配を感じながらも少し戸惑った様子で長谷川は返事に答える。
「…わかった」
ついに俺にバトンが渡る。
走る前、刹那の一瞬バトンを渡してくれた子に語りかける。
「大丈夫、ありがとう」
泣きそうになりながらもバトンを一生懸命つないでくれた子は少し驚きながらこちらをみる。
俺は一気に地面を足を蹴り、加速する。能力を振るスロットルで回し、足、腕などの筋力を高める。
そして俺は思考を加速させ、事前に確認していた陸上の世界選手のビデオの記憶を引っ張り出し、分析。
自分に最適なフォームを再現する。
技術は十分、思考は澄み渡っていて明瞭。あとは加速するだけ。
圧倒的にあった差をあっという間に詰めて5位、4位、3位と段々に上り詰める。
世界がゆっくりに見えて、集中が深くなっているのを感じる。これがゾーンっていう奴なんだろうか。
いよいよ直線が終わり最後のコーナーを曲がる。
そこで俺は二位を追い越し、一位と差を詰めて、最後の直線で一位と勝負する。
…確か今一位のやつのアンカーって全国大会の陸上大会で好成績を収めた奴なんだっけ。
思考は刹那、そんなことを考えたどりついた結論。
ーーーーーーここで距離を離すーーーーーー
俺はさらに足を加速させ、一位を追い抜いて遂にトップで走る。
目の前には驚いた顔をしながらもバトンを待っている長谷川。
少ししてやったりの気持ちでいながらもしっかり二位と大差をつけてバトンを渡す。
「抜かれんなよ」
そんな言葉を発しては長谷川は答える
「もちろん」
個人リレーのあのおどおど感はどこえやら、頼もしい雰囲気を纏いながらアイツは颯爽とかけていく。
かっこいいなぁ。アイツは。
自分の役目を終えたので邪魔にならないところでそのままへたり込む。
馬鹿だな俺、こんな力を見せびらかすような真似。いくら目の前に泣きそうな女子がいたからってなぁ。
自分の衝動的とも言える行動にふりかえって冷静になり少し後悔する。
そんな自分の世界に入っていると歓声が聞こえてくる。どうやら誰かがゴールしたらしい。
振り返ってどこが一位を取ったのか確認していくとどうやら俺たちのクラスが勝ったらしい。まじかアイツ。勝ちやがった。
まさか本当に一位を取るとは半分本気で思っていなかったため驚愕する。
これが主人公補正というやつなのだろうか。
とうの主人公様は全力を出し切ったあとなのかへたり込んでいる。
そのあとクラスのやつら大体四人くらいが接戦だったや凄かったなどねぎらいの言葉をかけながら長谷川の周りに集まっていた。
俺はそのままその場を離れ人気が無い涼しい場所に移動する。
さすがに能力をフル活用したので体力をごっそり持ってかれて疲れたので休まる場所に行きたい…。
向こう側で賑やかな声が聞こえてくるのを背に、静かで冷んやりする場所とのギャップで謎の気持ちよさを感じ
ながら一人空を見上げながらそのまま壁に寄りかかり座り込んだ。
…今回の目標はモモに怪我をさせないこと、それだけだったのに謎にでしゃばっちゃったな。
……あれ?ビリになるのだけ避けて、結局先頭走らなくて良かったんじゃね?だって相手に陸上全国経験者いるんだし、二番か三番押さえて走れば良かったじゃん…。
冷静じゃなかった自分の愚かさを呪いながら、やってしまったものは仕方がないと切り替えようとする。
ま、今更嘆いてもしょうがない、とりあえず疲れた。。。
俺は体育座りのまま仮眠を取ることにした。
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